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雑用係です、パシリの方が良いですか?3
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全員参加は、体育祭も例外ではなく。体育祭の打ち合わせの為に、俺はFクラスへと向かった。
……これは、俺が手伝ってて良かったかもな。まあ、生徒会の面々なら強面不良だからってビビらないだろうけど。
「「「クイーン!」」」
「いらっしゃい、今、お菓子用意しますからっ」
「……お構いなく」
Fクラスに行ったら、途端に温かく迎えられた。
それをやんわりと辞退し、体育祭について聞く為に刃金さんを探すと……あれっ?
「刃金さんは?」
「今日は休み。あ、体育祭のことなら俺に聞いて?」
「えっ……どこか、具合でも?」
だとしたら、お見舞いに行かないと。そう思って尋ねた俺に、内藤さんがヒラヒラと笑って手を振る。
「違う違う、ちょっと野暮用……もっとも本当に病気でも、クイーンが心配してたって聞いたら気合いで治すだろうけどね」
そう言って、ポンポンと頭を撫でてくる内藤さんに、俺はふと引っかかった。
(……何か、ごまかされた?)
実は、やっぱり体調を崩してるとか――あるいは怪我とか、それとも『野暮用』が嘘なのか?
「あー、クイーン落ち着いて! キングは元気だし、危ないことにも関わってないからっ」
考え込んだ俺に、内藤さんが慌てたように言ってきた。となると、その用事が『秘密』なのか。
(まあ、俺に関係あることなら教えてくれるだろうし)
そうじゃなければ、そもそも聞いちゃいけないだろう。そう結論づけた俺に、内藤さんが不意に尋ねてきた。
「クイーンって、生徒会に入るの?」
「……そう見えます?」
「んー、あと願望もあるかな?」
選挙の話はまだオフレコなんで、質問返しでごまかそうとしたら思いがけないことを言われた。
(願望ってことは、俺に生徒会に入って欲しいってことだよな?)
そうなると、目的は何だろう? 俺が生徒会に入って、内藤さんが得をするとしたら……あ。
「内藤さん、刃金さんのこと好きなんですか?」
生徒会役員になったら、忙しくてFクラスに来られなくなるかもしれない。もし俺が邪魔なら、物理的に遠ざけられる。そして俺が邪魔な理由は、って遡っての発想だった。
(内藤さん受け? いや、でも下克上も需要ありそうだよな)
「……ブハッ!」
そんなことを考えてた俺の前で内藤さんは噴き出し、次いでその場にしゃがみ込んでの大爆笑で応えた。
仕方ないので、俺もその前でしゃがんで笑い終わるのを待ってると――しばらくして、目尻に浮かんだ涙を拭いながら内藤さんが口を開いた。
「キングと俺が卒業しちゃったら、Fクラスクイーンの後ろ盾としては弱くなるだろ?」
「……はぁ」
「だとしたら、生徒会に入って貰った方が安全だし……逆にクイーンが生徒会入りしたら、こいつらに目かけて貰えるし」
「そういう見方も、あるんですね」
正直、頭っから認めて貰えないと思ってたんで、俺が生徒会入りするメリットを聞かされて素直に感心した。そんな俺の頭を、内藤さんがポンポンと撫でてくる。
「生徒会とかキングほどじゃないけど、俺らもクイーンの味方だからね?」
「「「勿論っス!!」」」
「……ありがとう、ございます」
不良ではあるけど、うん、内藤さんもFクラスの皆も良い人だ。
しみじみとそう思い、嬉しかったんでお礼を言ったら、途端に内藤さんに抱きしめられた。あれ、どうしてこうなった?
「あー、癒される……キング、良いなー」
「「「落ち着いて下さい、ナイト!」」」
「大丈夫、今の気軽にツッコミ入れられるポジションで満足してるから」
周りの悲鳴みたいな声に、内藤さんがあっさりと答えた。
「そうですね。(これ以上増えても面倒なんで)内藤さんはそのままでいて下さい」
そして俺がそう言うと、内藤さんは笑いながらクシャクシャと俺の頭を撫で回した。
※
文化祭同様、走りっ放しだったけど何とか無事に体育祭は開催された。
王道学園らしく応援合戦(コスプレ・女装あり)とか、障害物競走(コスプレ・女装あり)とか、借り物競争(告白あり)があった。一茶が大喜びで写真を撮りまくっていたので、まあ、成功だったんだろう。
「出灰? 他人事みたいに言ってるけど、出灰の写真も撮ったからね?」
「……俺はただ、運ばれただけだ」
「やっぱり、真白は期待を裏切らないね! 借り物競争で『好きな人』って札を引く強運っぷりもだけど、真っ直に出灰のところに来てお姫様抱っこしたもんね♪」
嬉々として語る一茶を殴りたくなった俺は、悪くないと思う。まあ、おかげで真白は借り物競争で一位になったし、俺の代わりに奏水が一茶を叱ってくれたんで良しとしよう、うん。
そして、振り替え休日の後――白月学園高等部初の『生徒会役員選挙』を行うことが、正式に公布された。
……これは、俺が手伝ってて良かったかもな。まあ、生徒会の面々なら強面不良だからってビビらないだろうけど。
「「「クイーン!」」」
「いらっしゃい、今、お菓子用意しますからっ」
「……お構いなく」
Fクラスに行ったら、途端に温かく迎えられた。
それをやんわりと辞退し、体育祭について聞く為に刃金さんを探すと……あれっ?
「刃金さんは?」
「今日は休み。あ、体育祭のことなら俺に聞いて?」
「えっ……どこか、具合でも?」
だとしたら、お見舞いに行かないと。そう思って尋ねた俺に、内藤さんがヒラヒラと笑って手を振る。
「違う違う、ちょっと野暮用……もっとも本当に病気でも、クイーンが心配してたって聞いたら気合いで治すだろうけどね」
そう言って、ポンポンと頭を撫でてくる内藤さんに、俺はふと引っかかった。
(……何か、ごまかされた?)
実は、やっぱり体調を崩してるとか――あるいは怪我とか、それとも『野暮用』が嘘なのか?
「あー、クイーン落ち着いて! キングは元気だし、危ないことにも関わってないからっ」
考え込んだ俺に、内藤さんが慌てたように言ってきた。となると、その用事が『秘密』なのか。
(まあ、俺に関係あることなら教えてくれるだろうし)
そうじゃなければ、そもそも聞いちゃいけないだろう。そう結論づけた俺に、内藤さんが不意に尋ねてきた。
「クイーンって、生徒会に入るの?」
「……そう見えます?」
「んー、あと願望もあるかな?」
選挙の話はまだオフレコなんで、質問返しでごまかそうとしたら思いがけないことを言われた。
(願望ってことは、俺に生徒会に入って欲しいってことだよな?)
そうなると、目的は何だろう? 俺が生徒会に入って、内藤さんが得をするとしたら……あ。
「内藤さん、刃金さんのこと好きなんですか?」
生徒会役員になったら、忙しくてFクラスに来られなくなるかもしれない。もし俺が邪魔なら、物理的に遠ざけられる。そして俺が邪魔な理由は、って遡っての発想だった。
(内藤さん受け? いや、でも下克上も需要ありそうだよな)
「……ブハッ!」
そんなことを考えてた俺の前で内藤さんは噴き出し、次いでその場にしゃがみ込んでの大爆笑で応えた。
仕方ないので、俺もその前でしゃがんで笑い終わるのを待ってると――しばらくして、目尻に浮かんだ涙を拭いながら内藤さんが口を開いた。
「キングと俺が卒業しちゃったら、Fクラスクイーンの後ろ盾としては弱くなるだろ?」
「……はぁ」
「だとしたら、生徒会に入って貰った方が安全だし……逆にクイーンが生徒会入りしたら、こいつらに目かけて貰えるし」
「そういう見方も、あるんですね」
正直、頭っから認めて貰えないと思ってたんで、俺が生徒会入りするメリットを聞かされて素直に感心した。そんな俺の頭を、内藤さんがポンポンと撫でてくる。
「生徒会とかキングほどじゃないけど、俺らもクイーンの味方だからね?」
「「「勿論っス!!」」」
「……ありがとう、ございます」
不良ではあるけど、うん、内藤さんもFクラスの皆も良い人だ。
しみじみとそう思い、嬉しかったんでお礼を言ったら、途端に内藤さんに抱きしめられた。あれ、どうしてこうなった?
「あー、癒される……キング、良いなー」
「「「落ち着いて下さい、ナイト!」」」
「大丈夫、今の気軽にツッコミ入れられるポジションで満足してるから」
周りの悲鳴みたいな声に、内藤さんがあっさりと答えた。
「そうですね。(これ以上増えても面倒なんで)内藤さんはそのままでいて下さい」
そして俺がそう言うと、内藤さんは笑いながらクシャクシャと俺の頭を撫で回した。
※
文化祭同様、走りっ放しだったけど何とか無事に体育祭は開催された。
王道学園らしく応援合戦(コスプレ・女装あり)とか、障害物競走(コスプレ・女装あり)とか、借り物競争(告白あり)があった。一茶が大喜びで写真を撮りまくっていたので、まあ、成功だったんだろう。
「出灰? 他人事みたいに言ってるけど、出灰の写真も撮ったからね?」
「……俺はただ、運ばれただけだ」
「やっぱり、真白は期待を裏切らないね! 借り物競争で『好きな人』って札を引く強運っぷりもだけど、真っ直に出灰のところに来てお姫様抱っこしたもんね♪」
嬉々として語る一茶を殴りたくなった俺は、悪くないと思う。まあ、おかげで真白は借り物競争で一位になったし、俺の代わりに奏水が一茶を叱ってくれたんで良しとしよう、うん。
そして、振り替え休日の後――白月学園高等部初の『生徒会役員選挙』を行うことが、正式に公布された。
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