灰かぶり君

渡里あずま

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好きな人に自分の好きなものを2

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 うん、一茶が肩入れする理由がよく解った。そう思ってチョコレートに手を伸ばしたら、何でだかチワワ達がアタフタし出した。

「すすす、好きって何言ってるの!?」
「紅河様に対する心構えを、教えただけで……そっ、そりゃああんたのこと嫌いじゃないけど!」
「「「もう、信じられないっ」」」

 ……えっ、何が?
 叱られる意味が解らず、首を傾げてると――隊長が、深々とため息をついた。

「まあ、この子達も浮かれてるけど……あんたも、誑しすぎ。こっちは、優しくされるの慣れてないんだから」
「えっ?」
「「「……えっ?」」」

 誑すとか優しくって、何のことだ?
 疑問の声を上げた俺に、チワワ達もまた声を上げた。そしてしばしの沈黙の後、可愛い顔を揃ってキッと上げる。

「隊長、こいつ危険です!」
「見た目、無害な平凡なのにっ」
「「「こんなんじゃ、いつ変なのに目つけられて襲われるか!!」」」

 そう言って、ビシッと俺を指さしてくるチワワ達――えっと、何か心配されてる? でも、今の話の流れでどうしてこうなるんだ?

「あの、喧嘩吹っかけられたりとかは、大丈夫だと思いますけど……Fクラスに、知り合いがいるんで」

 刃金さん達に頼っちゃいけないと思うが、チワワ達を安心させる為に言った。

「それはそれで、危険でしょう!? あんなゴリラ達っ」
「それに、あんたみたいに呑気にしてたら不良以外にも簡単に捕まって、人気のない教室に連れ込まれるわ!」

 だけど、チワワ達は安心するどころかますます必死に訴えてきた――えっと、白月ここはどれだけ無法地帯なんだ? 金持ちのくせに、平凡庶民の財布まで奪うのか?

「……仕方ないわね」

 チワワ達と俺を見比べて、隊長がため息混じりに呟く。

「一番良いのは、親衛隊に入ることなんでしょうけど……それだと、あんたまで陰口叩かれるだろうし」
「あの」
「仕方ないから、僕達があんたの親衛隊に『も』なってあげる」
「……はい?」

 真顔で思いがけないことを言われたのに、俺は疑問の声を上げた。そんな俺に、隊長が説明してくれる。

「まあ、公式には出来ないから厳密に言えば『ファンクラブ』だけど……あんたのこと見守って、困ってたら助けてあげるから」
「紅河様のついでにっ、なんだからね!」
「感謝しなさいよっ」
「それだと、皆さんも巻き込んじゃうじゃないですか……駄目です、危ないですよ?」
「「「っ!?」」」

 俺とそんなに変わらなかったり、下手すると小さいチワワ達に何かあったら大変だ。そう思って断った俺に、チワワ達が尋ねてくる。

「「「……心配、してくれるの?」」」
「えっ? ええ、勿論」

 当たり前なのでそう答えると、チワワ達が真っ赤になる。
 それから互いに目配せをすると、グッと拳を握って言った。

「「「まずは、自分の心配しなさいよね!」」」
「……はい」

 だからここ、どれだけデンジャラスゾーンなんだ? まあ、俺が危ない目に合わなきゃ大丈夫だよな。
(気持ちだけはありがたく受け取ろう)
 キッパリと言い切るチワワ達に、俺は反論するのをやめて頷いた。
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