灰かぶり君

渡里あずま

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どれも正解、数学じゃないですからね2

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 意味が解らず首を傾げると、双子庶務がクルクルと場所を入れ替わった。

「「どっちが、どっちでしょう!」」
「……やりませんよ」
「「何で!?」」

 いや、ここコンビニだし。真白にもう、見分けて貰ってるし、そもそも解らないし――それに、何よりも。

「本当は、別に見分けて欲しくないんじゃないですか?」
「「っ!?」」

 いや、だって本気で見分けて欲しいなら髪型変えたり、目印つけたりするだろう?
 だからそう言って、立ち去ろうとしたんだけど……両側から腕を掴まれて、動けなくなった。

「「真白には、言わないで!」」
「……言いませんよ」

 言っても真白は気にしないと思うけど、まあ、断る理由はない。

「前も言ったけど、それって別に決めつけなくていいんじゃないですか?」
「「……えっ?」」
「数学じゃないんですから。今までは違ってても、口止めするってことは見分けて貰って嬉しかったってことでしょう? 真白に会えて、良かったですね」

 ここぞとばかりに言ってみる。あとは、最終的には真白『に』見分けて貰うのが嬉しいになるといいな。
 そう思いながら言うと、双子は大きな目を更に見開いて――何故だか、ますます俺の腕にしがみついてきた。

「あの……俺、おやつの材料買いたいんですけど」
「「僕達も、おやつ食べたい!」」
「…………は?」
「「紫苑がプリン用意してたけど僕達、違うのが食べたくて……だから、ちょうど良いよねっ」」

(……えっ、と)

「口に合わなくても、知りませんよ?」
「「うんっ」」

 けなしてた手作りなんだけど、と思いつつも、真白に会いたいんならまあ、良いか。そう結論づけると、俺はやっと離れてくれた双子庶務にホッとして、バナナを取りに行った。

「……驚いたね?」
「うん。真白とは違う」
「「あいつ、ビックリ箱みたいでワクワクする」」

 だから、二人がそんな会話を交わしてたなんて知らなかったんだ。



「空青、海青! どうしたんだ?」
「「おやつ食べに来た!」」
「谷君は本当、一級フラグ建築士だね!」
「一茶……うん、でも否定出来ないかな?」

 両腕に双子庶務を連れて帰ってきた俺に、真白達が口々に言う。

「今、準備する」

 基本、生徒会メンバーには敬語使ってるけど、ここ俺の部屋だし。双子庶務とは同じ年だから、ちょっとくらい良いよな?
 そう思ったけど、目を真ん丸くされた。失敗したかな、と思いつつ俺はキッチンへと向かった。
(ホットケーキミックスと卵と牛乳、砂糖……計って、バナナ切って、一本は潰して……と)
 簡単な作業だけど、いや、むしろだからこそ頭が真っ白になる。そして混ぜ合わせたそれらを、俺はバターを塗ってもう一本のバナナを並べた炊飯器へと投入した。

「「何それっ!?」」
「……炊飯器、知らないんですか?」
「「じゃなくて! ケーキ、作るんだよね!?」」
「作ってますよ? あとは、炊飯器がやってくれます……三十分くらいかかるんで、ジュースでも飲みますか?」

 どうやらこう言うレシピには馴染みがないらしく、双子庶務はマジマジと炊飯器を見た。
 そんな二人に声をかけると、何故かほっぺたを膨らませてしまう。

「いや、時間かかりますから」
「……そうじゃなくて」
「何で、さっきみたいに話さないの?」

 あれ、この二人、それぞれ喋れるんだ?
 当然のことにまず驚き、次いで言われた内容に首を傾げる。

「すみません、タメ口なんて庶務様方に失礼でしたよね」
「「それもっ!」」
「……も?」
「「もう……解ってるのに、解ってないよね? 面白いけど、ムカつくっ!」」

 ますます訳が解らず、おうむ返しになった俺を庶務双子が揃って指差す。と、ブレザーのポケットから青いヘアピンを取り出して、それぞれの頭につけた。

「僕が空青」
「僕が海青」
「「解ったら名前で呼んでよ。あと、敬語も禁止!」」

 左右逆につけたヘアピンを指差し、主張してくる双子庶務――空青と海青に、俺は眩暈を覚えた。断っておくが、寝不足が原因じゃない。
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