灰かぶり君

渡里あずま

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遭遇と画策と予想外と4

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 二人がいなくなった途端、また教室中に罵声が飛びかったけど。

「ここの生徒会の決め方って……」
「王道の『抱きたい・抱かれたいランキング』上位者だよ。人気ないと、生徒はついて行かないからね」
「……だからって」

 それ以上は、口には出さなかった。ちなみに『抱きたい・抱かれたいランキング』とは、文字通りのランキングだ。男同士は差し引いても、そう言うのは芸能人だけにして欲しい。
 おかげで、あんな空気の読めない馬鹿が副会長だよ。恋で盲目状態ってことで読者は許すかもしれないけど、生徒としちゃたまったモンじゃない。
(行事とかはほぼ、生徒会がしきってんだろ……学校崩壊、まんざらフィクションじゃないな)

「真白には、悪いことしちゃったけどね……まさか、あんな表情かおするなんて」
「……一茶?」
「菊の花見た時、何かホッとした感じだったんだよね。もしかして、今までは直接手出しもされなかったのかなって」
「よく見てたな」
「腐男子には、観察眼必須だからね」

 ドヤ顔で言う一茶にイラッとしたが、反論は出来ない。そして見逃した俺は、腐男子失格なんだろう(そもそも、腐ってないけど)
 ……ただし、物書きの俺には代わりに妄想、いや、想像力がある。
(だから、同じように距離を置かれてる生徒会の奴らを、ほっとけないんだろうな……けどなぁ。あんまり同じすぎたら、逆に恋に進展しなくないか? 真白、別にナルシストじゃなさそうだし)
 そんな訳で、菊の花瓶を片づけ(担任まで騒いだら面倒だし)午前中の授業が終わるまで、俺はどうすれば真白が恋に落ちてくれるかを考えていた。
 仮にも友達に対してって思うかもしれないけど、元々がキャラのモデルなんで。流石に本人には言わないけど、罪悪感は全くない。
(真白の為には、変装やめた方がいいんだけど……見た目で距離を置かれてたなら、素顔がバレる前にアクション起こした方が好感度高いよな。ただ、キスされても真白、意識してないみたいだし……ベタだけど、告白か? たとえば俺様会長だと、どう言うんだろ?)
 そんな風に、各キャラクターの台詞を、頭の中でシミュレーションする――とは言え、俺は生徒会の連中をほとんど知らない(流石に、名前は一茶に聞いたが)んで、本当に妄想でしかないんだけどな?



 親衛隊が誘いやすいように、昼はしばらく食堂に行かないことにした。心配する一茶と奏水を見送った。そして教室で、朝にコンビニで買ったコロッケパンを食べていた。
 ……そんな俺に対して、クラスメイト達は文字通り距離を置いている。うん、思いっきり遠巻きだねぼっちだね。
(雰囲気悪いなぁ……とは言え、下手に出歩くと薮蛇になりそうだし)
 生徒会の癒しスポット(王道学園で多いのは、温室や中庭)に迷い込むのは論外だけど、ただ歩いているだけでも油断ならない。昨日の安来さんの例もある。
 そして、早く親衛隊が来ればいいなと思いつつ、牛乳を飲んでいたら。

「谷って奴、いる?」

 名前を呼ばれたのに、待ち人(親衛隊)かと顔を上げて――俺は、首を傾げた。
 髪を青く染めた声の主は、美形ではあるけどイケメンで。一茶の言うチワワ(小さくて女顔)って感じじゃなかった。
 王道学園物によると、親衛隊の中には制裁要員(荒事担当)もいるけど、呼び出しは警戒されない為かチワワが来るらしい。
(親衛隊隊長とかだと、イケメンの場合もあるみたいだけど……でも、初回の呼び出しでそんな大物くるか?)

「お前が、谷?」
「……はい」

 俺が不思議がっている間に、周りの視線から特定されたらしい。机の前までやって来た青頭に、俺は仕方なく返事をした。
 そんな俺に、イケメンはにっこり笑って思いがけないことを言った。

「ウチのキングがお呼びなんで、来てくれる?」
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