灰かぶり君

渡里あずま

文字の大きさ
上 下
11 / 95

遭遇と画策と予想外と1

しおりを挟む
 真白は、方向音痴だ。数日後に控えてる、新歓(一茶によると、王道学園物らしく『鬼ごっこ』らしい)が不安になるくらい、方向音痴だ。
(外に出てないといいんだけど)
 食堂を出てすぐ、校舎一階に向かう廊下と階段がある。足が早いのは知ってるが、姿が見えないとなると階段を上がったんだろうか?
 そこまで考えて、俺は携帯電話を取り出した。
 そして、真白に電話すると――二コールで出て、ちょっと驚いた。

『もしもし、谷!?』
「真白、今どこにいる?」
『えーと……三階!』
「……早いな。理事長室にでも、行く気だったのか?」
『違う! オレはただ、屋上にでもって……でも、ここだと屋上って無いよな』

 話しながら気づいたのか、電話で顔が見えないのにしょんぼりとしているのが解った。
(確かに、上二階が特別フロアだからな……今までも、何かあると屋上行ってたのかな?)
 煙と何とかは、高いところが好きで――馬鹿な子程可愛いって言葉もある。

「一緒に、教室戻らないか。今、二階行くから」
『……おう! 待ち合わせだなっ』

 途端に、真白の声が嬉しそうに声が弾む。単純だな、と思いつつ電話を切ると――待っていたかのようなタイミングで、声がかけられた。いや、ようにじゃなく待ってたんだろうけど。

「スルーか? おれとは、口もきけないって?」

 黒髪に、金のメッシュ。お坊ちゃま校の生徒とは思えない着崩しぶりと威圧感。そして何より美形っぷりに、廊下にいたのは気づいてたけど俺は無視を決め込んでいた。
 顔だけなら文句無しのSクラスだけど、この感じだと――Fクラス、不良クラスの生徒の可能性が高い。口調とか雰囲気からして、一匹狼って言うよりは不良のリーダー系か?

「いいえ。お手数おかけしたら、申し訳ないと思っただけです。失礼します」
「おれが怖いか?」

 そう言って、一歩踏み出そうとしたけど止められた。ったく、どうせなら真白に絡んで足止めしてくれりゃあ良かったのに。

「怖がるようなこと、されていません」
「何だ。見た目なんて気にしないってか?」
「まさか。見た目は大事ですよ」

 即座に答えたら、軽く目を見張られた。
 だけど、ガン見されたままだから――ちゃんと答えないと、解放してくれないか。仕方ない。
 第一印象は大事だ。それこそ今朝みたいに、悪印象を持たれたら始まるものも始まらない。

「大事ですけど……相手のことなんてある程度、やり取りしないと解りません。だからあなたのことも、会ったばかりなんで判断出来ません」

 だって俺、エスパーとかじゃないし。有名なのかもしれないけど、転校生だからこの人のこと知らないし。
 ……逆に言えば生徒会とか、あと真白。
 見た目じゃないとか、本当の自分を見てくれたとか思うのって――相当、見た目がコンプレックスって言うか、振り回されてるんじゃないのかな? だから、求めてるものが同じだから惹かれたんじゃないかと思う。
 そんな訳で目の前の、見た目について口にしたこの人も真白と仲良くやれるって思ったんだけど。
(っと、真白待ってるよな)

「失礼します」
「……おれは、安来刃金あきはがね。お前は?」
「北見真白」
「それは、さっきの毬藻の名前だよな?」
「……谷出灰、です」

 ちっ、覚えてたか――渋々答えて、一礼する。
 そしてもう会わないことを祈りながら、今度こそ階段を駆け上がった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

王道学園にブラコンが乗り込んでいくぅ!

玉兎
BL
弟と同じ学校になるべく王道学園に編入した男の子のお話。

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

【完結】嘘はBLの始まり

紫紺(紗子)
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。 突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった! 衝撃のBLドラマと現実が同時進行! 俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡ ※番外編を追加しました!(1/3)  4話追加しますのでよろしくお願いします。

処理中です...