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転校初日と、食堂イベント2
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「今日は、転校生を紹介する」
「えっ、可愛い? 格好良い?」
「さあな……よし、転校生。入って来い」
俺が脳内でツッコミを入れまくっている間に、お約束なハードル上げは終了していた。まだ見ぬ同級生諸君、君達の関心はやっぱり顔なんだね。
やれやれ、と思ったところで――俺は、真白が何かを考えるように俯いたことに気がついた。
(……出るのか? お約束のアレが)
俺と真白が教室に入った途端、教室の中がざわめいた。
「何、アレ。キモい」
「根暗と平凡かよ。つまんねー」
「最低ー」
口々にそう言ってる同級生達は、Sクラスなだけあって顔『は』良かった。
まあ、金持ちだからな。国王とか、戦国武将とかに美形が多いのと同じ理由だけど、どんな美女とも結婚出来るから。美形遺伝子入れまくりって訳。
「北見真白、よろしく……は、しなくていいぞ。見た目だけで判断とか、冗談じゃない」
「なっ……!?」
「酷いっ」
「ふざけるなよ、毬藻!」
真白の男前発言に、教室中が怒声を上げる中。
「谷です、よろしくお願いします」
俺は、自己紹介(苗字だけ)を済ませた。どうせ、一茶と奏水以外は聞いてないしな。
俺と真白の席は、窓際の列の後ろに二つ用意されていた。
同級生達が出す足(真白を転ばせようとして)は全部、当人に容赦なく踏まれ。痛みに悶える面々の横を、俺は無言で歩いていった。
「ご褒美、ありがとうございます!」
「一茶、ニヤけ過ぎ……改めて、今日からよろしくね」
俺の隣は一茶、そして真白の隣は奏水で。二人が俺達に声をかけてきた途端、またブーイングが起こった。
「嘘、柏原様と杜様が声をかけるなんて!」
「何て、身の程知らずなの!?」
「お二人が穢れる!」
……俺達は、病原菌か何かか? 真白は気にしてないみたいだし、俺も(予想はしてたんで)気にならないけど、初日からコレだと大抵の奴は心が折れると思う。岡田さんや理事長がフォローを申し出るのも、納得だ。
と言うか、人気があるって聞いてたけど様付けされてるってことはこいつら、親衛隊持ちか?
「うん、チワワちゃん達可愛いからね。可愛いはジャスティス!」
目線で一茶に問いかけると、爽やか笑顔でそう答えられた。はいはい、腐男子腐男子。
あ、チワワって言うのは親衛隊――美形ファンクラブに多くいるタイプのこと。小さくて可愛いからそう言われるらしいけど、小型犬ってキャンキャン煩いから。そう言う意味でも、納得だよな。
「ゴメンね、真白。谷君」
一方、ツッコミにキレはあるけど奏水はまともだった。
「気にすんなよ、奏水! なっ、谷っ」
「ああ」
「SHRは、以上」
謝ってくる奏水に元気良く真白が答え、俺に同意を求めてくる。
それに頷いた途端、またブーイングが起こるかと思ったけど――それを制するみたいに担任が言い、チャイムが鳴ったんで不発に終わった。
教室を出て行く担任を見て、俺はふとあることに気づく。
(……そう言えば)
俺達を呼んだ時、担任は真白を名前呼びしなかった。ホストだけど、多少は空気読むのかね。
そこで考えるのを止めると、俺は教科書を取り出した――テストは(騙し討ちで)受けたけど、授業は久々だ。金持ち学校の授業って、どんな感じなんだろうな。
結果として、授業はどれも解りやすかった。そして、個性派は担任だけかと思ったら、皆平均以上の容姿とキャラを持っていた。
(あれだな。学校って言うより、塾の講師?)
人気があれば生徒が集まり、生徒が集まると金が集まるって図式だ。成程なと思ってると、一茶が嬉々として言った。
「いざ行かん、王道学園の食堂へ!」
「一茶っ……あの、大丈夫?」
食堂イベント(食堂で王道君が生徒会と遭遇し、落とす)を期待する一茶に対して、奏水は心配そうに尋ねてくる。確かに、こうして話してるだけでもクラス中の視線が刺さってくるからな。
「気にすんなよ! オレ達、友達だろ?」
モジャモジャ頭と瓶底眼鏡でも隠しきれない、満面の笑顔で真白が言った。どこまでも清々しいな。
(何で、変装してるんだろ?)
少ししか見てないけど、変態とは初対面って感じだった。だから、正体を隠す為じゃなさそうだ。
(桃香さんの見立てと、あと王道ストーリー的には美少年の筈)
日本人離れした色彩でも、この美形至上主義(一茶が腐を隠してないのが証拠だ)の学校だと問題なさそうだけど――そう思いながらも、真白の言葉に頷いて見せる。
「……ありがとう」
そんな俺達、と言うより真白に対して、奏水は嬉しそうに笑って礼を言った――その瞬間をスマホで撮った一茶は、つくづく萌えに忠実だな。
「ちょっと、一茶! 何、堂々と盗撮してるの!?」
「人聞きの悪い……これは、俺の心のアルバムに残す為の」
「心じゃなくて、スマホだよね!?」
当然、怒った(まあ、照れ隠しだろうけど)奏水に消すように言われているのをBGМに、俺達は食堂へと向かった。
※
食堂は、校舎一階――に繋がってはいるけど、別棟になるらしい。そして一茶曰く、食堂と言う名のレストランらしい。うん、どこまでも王道だ。
「はい、奏水……真白と谷君は、耳栓使う?」
「えっ、何で?」
入口らしきドア、その前に立ったところで一茶が耳栓を渡してきた。
慣れた様子で、受け取った耳栓をつける奏水に対し、真白は首を傾げてる。
教室で、担任に向けられた歓声――あれの全校版って考えると、確かに耳栓は必要だけど。
「俺はいい」
「オ、オレもっ」
最初くらいは体験しておこうと思った俺に、訳が解らないながらも真白が従う。まあ、百聞は一見にしかずだからな。
「じゃあ、行こうか」
そう言って、耳栓をした一茶がドアを開けた。
「「「キャーッ!!」」」
「「「ウォーッ!!」」」
「っ!」
「うわっ!?」
途端に聞こえた声が思った以上にデカくて、俺はたまらず耳を塞いだ。隣では、同様に耳を塞いでる真白が何事かとキョロキョロしている。
「柏原様、今日もカッコ良い!」
「爽やかな笑顔が眩しいっ」
「杜様、マジ可愛い!」
「抱きてぇっ」
それぞれの想いをぶつけてくる生徒達に、一茶は笑顔で奏水は無表情で応えていた。まあ、内容的に奏水の反応は仕方ないよな。
「何、あいつら」
「平凡と根暗のくせに、麗しいお二人と一緒にいるなんて」
「引っ込め! 身の程を弁えなさいよねっ」
そして俺達二人には、主にチワワからと思われる罵声が浴びせられた。
って言うか、声も台詞も解ってても全く男だと思えない。書く時は、いっそ女のつもりで書いた方がいいのかな?
そこまで考えて、俺はチラッと真白を見た。
今朝と違って静かなのは、反論すると余計に煩くなるからかな。うん、その真っ直さと(敬語は下手だけど)馬鹿じゃない辺り、本当に理想の主人公キャラだ。
「なぁ、食券とか買わねぇの?」
結局、真白が口を開いたのは一茶達と同じテーブルについた時だった。離れろって言われても、本人達からでなきゃ従う義理はない。
「これこそ、王道のタッチパネル! 各席にあるこの機械で注文して、カードをかざして清算すれば、ウェイターさんが運んで来てくれるのさっ」
「何で一茶が言うと、合ってても胡散臭く聞こえるのかな」
「酷っ」
嬉々として機械を掲げる一茶に、奏水がツッコミを入れた。うん、通常運行に戻って何より。
「えっ、可愛い? 格好良い?」
「さあな……よし、転校生。入って来い」
俺が脳内でツッコミを入れまくっている間に、お約束なハードル上げは終了していた。まだ見ぬ同級生諸君、君達の関心はやっぱり顔なんだね。
やれやれ、と思ったところで――俺は、真白が何かを考えるように俯いたことに気がついた。
(……出るのか? お約束のアレが)
俺と真白が教室に入った途端、教室の中がざわめいた。
「何、アレ。キモい」
「根暗と平凡かよ。つまんねー」
「最低ー」
口々にそう言ってる同級生達は、Sクラスなだけあって顔『は』良かった。
まあ、金持ちだからな。国王とか、戦国武将とかに美形が多いのと同じ理由だけど、どんな美女とも結婚出来るから。美形遺伝子入れまくりって訳。
「北見真白、よろしく……は、しなくていいぞ。見た目だけで判断とか、冗談じゃない」
「なっ……!?」
「酷いっ」
「ふざけるなよ、毬藻!」
真白の男前発言に、教室中が怒声を上げる中。
「谷です、よろしくお願いします」
俺は、自己紹介(苗字だけ)を済ませた。どうせ、一茶と奏水以外は聞いてないしな。
俺と真白の席は、窓際の列の後ろに二つ用意されていた。
同級生達が出す足(真白を転ばせようとして)は全部、当人に容赦なく踏まれ。痛みに悶える面々の横を、俺は無言で歩いていった。
「ご褒美、ありがとうございます!」
「一茶、ニヤけ過ぎ……改めて、今日からよろしくね」
俺の隣は一茶、そして真白の隣は奏水で。二人が俺達に声をかけてきた途端、またブーイングが起こった。
「嘘、柏原様と杜様が声をかけるなんて!」
「何て、身の程知らずなの!?」
「お二人が穢れる!」
……俺達は、病原菌か何かか? 真白は気にしてないみたいだし、俺も(予想はしてたんで)気にならないけど、初日からコレだと大抵の奴は心が折れると思う。岡田さんや理事長がフォローを申し出るのも、納得だ。
と言うか、人気があるって聞いてたけど様付けされてるってことはこいつら、親衛隊持ちか?
「うん、チワワちゃん達可愛いからね。可愛いはジャスティス!」
目線で一茶に問いかけると、爽やか笑顔でそう答えられた。はいはい、腐男子腐男子。
あ、チワワって言うのは親衛隊――美形ファンクラブに多くいるタイプのこと。小さくて可愛いからそう言われるらしいけど、小型犬ってキャンキャン煩いから。そう言う意味でも、納得だよな。
「ゴメンね、真白。谷君」
一方、ツッコミにキレはあるけど奏水はまともだった。
「気にすんなよ、奏水! なっ、谷っ」
「ああ」
「SHRは、以上」
謝ってくる奏水に元気良く真白が答え、俺に同意を求めてくる。
それに頷いた途端、またブーイングが起こるかと思ったけど――それを制するみたいに担任が言い、チャイムが鳴ったんで不発に終わった。
教室を出て行く担任を見て、俺はふとあることに気づく。
(……そう言えば)
俺達を呼んだ時、担任は真白を名前呼びしなかった。ホストだけど、多少は空気読むのかね。
そこで考えるのを止めると、俺は教科書を取り出した――テストは(騙し討ちで)受けたけど、授業は久々だ。金持ち学校の授業って、どんな感じなんだろうな。
結果として、授業はどれも解りやすかった。そして、個性派は担任だけかと思ったら、皆平均以上の容姿とキャラを持っていた。
(あれだな。学校って言うより、塾の講師?)
人気があれば生徒が集まり、生徒が集まると金が集まるって図式だ。成程なと思ってると、一茶が嬉々として言った。
「いざ行かん、王道学園の食堂へ!」
「一茶っ……あの、大丈夫?」
食堂イベント(食堂で王道君が生徒会と遭遇し、落とす)を期待する一茶に対して、奏水は心配そうに尋ねてくる。確かに、こうして話してるだけでもクラス中の視線が刺さってくるからな。
「気にすんなよ! オレ達、友達だろ?」
モジャモジャ頭と瓶底眼鏡でも隠しきれない、満面の笑顔で真白が言った。どこまでも清々しいな。
(何で、変装してるんだろ?)
少ししか見てないけど、変態とは初対面って感じだった。だから、正体を隠す為じゃなさそうだ。
(桃香さんの見立てと、あと王道ストーリー的には美少年の筈)
日本人離れした色彩でも、この美形至上主義(一茶が腐を隠してないのが証拠だ)の学校だと問題なさそうだけど――そう思いながらも、真白の言葉に頷いて見せる。
「……ありがとう」
そんな俺達、と言うより真白に対して、奏水は嬉しそうに笑って礼を言った――その瞬間をスマホで撮った一茶は、つくづく萌えに忠実だな。
「ちょっと、一茶! 何、堂々と盗撮してるの!?」
「人聞きの悪い……これは、俺の心のアルバムに残す為の」
「心じゃなくて、スマホだよね!?」
当然、怒った(まあ、照れ隠しだろうけど)奏水に消すように言われているのをBGМに、俺達は食堂へと向かった。
※
食堂は、校舎一階――に繋がってはいるけど、別棟になるらしい。そして一茶曰く、食堂と言う名のレストランらしい。うん、どこまでも王道だ。
「はい、奏水……真白と谷君は、耳栓使う?」
「えっ、何で?」
入口らしきドア、その前に立ったところで一茶が耳栓を渡してきた。
慣れた様子で、受け取った耳栓をつける奏水に対し、真白は首を傾げてる。
教室で、担任に向けられた歓声――あれの全校版って考えると、確かに耳栓は必要だけど。
「俺はいい」
「オ、オレもっ」
最初くらいは体験しておこうと思った俺に、訳が解らないながらも真白が従う。まあ、百聞は一見にしかずだからな。
「じゃあ、行こうか」
そう言って、耳栓をした一茶がドアを開けた。
「「「キャーッ!!」」」
「「「ウォーッ!!」」」
「っ!」
「うわっ!?」
途端に聞こえた声が思った以上にデカくて、俺はたまらず耳を塞いだ。隣では、同様に耳を塞いでる真白が何事かとキョロキョロしている。
「柏原様、今日もカッコ良い!」
「爽やかな笑顔が眩しいっ」
「杜様、マジ可愛い!」
「抱きてぇっ」
それぞれの想いをぶつけてくる生徒達に、一茶は笑顔で奏水は無表情で応えていた。まあ、内容的に奏水の反応は仕方ないよな。
「何、あいつら」
「平凡と根暗のくせに、麗しいお二人と一緒にいるなんて」
「引っ込め! 身の程を弁えなさいよねっ」
そして俺達二人には、主にチワワからと思われる罵声が浴びせられた。
って言うか、声も台詞も解ってても全く男だと思えない。書く時は、いっそ女のつもりで書いた方がいいのかな?
そこまで考えて、俺はチラッと真白を見た。
今朝と違って静かなのは、反論すると余計に煩くなるからかな。うん、その真っ直さと(敬語は下手だけど)馬鹿じゃない辺り、本当に理想の主人公キャラだ。
「なぁ、食券とか買わねぇの?」
結局、真白が口を開いたのは一茶達と同じテーブルについた時だった。離れろって言われても、本人達からでなきゃ従う義理はない。
「これこそ、王道のタッチパネル! 各席にあるこの機械で注文して、カードをかざして清算すれば、ウェイターさんが運んで来てくれるのさっ」
「何で一茶が言うと、合ってても胡散臭く聞こえるのかな」
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