上 下
18 / 32

お披露目会です

しおりを挟む
 オリヴィアはケフィア粒を作る為、信頼を得ようといわゆる料理チートを行った。
 図書館やインターネットで、ケフィアのことを勉強しているうちにオリヴィア、いや唯は他の乳製品についても知っていた。更に双子の妹である愛や両親が食べたがったので、スイーツやパンも作っていた。
 その結果、シャンティクリームとロールケーキを提案出来た訳だが、最初はヴァイスのことを知っている家族はともかく、他の者達に聖獣から教えて貰ったとして広めて良いのか。それこそ、ヨナスの考えたレシピにすれば良いのではないかとオリヴィアが言うと、当のヨナスに涙ながらに猛反対された。

「とんでもない! あのクリームと焼き菓子は、俺なんかには到底、思いつきません! それを、俺のレシピと偽るなんて……聖獣様とお嬢様が許しても、それこそ女神様が許しませんっ。天罰が下ります!」
「そ、そう……?」
「そうですっ」

 ヨナスの主張に困って家族を見ると、ヨナスに同意するようにうんうんと頷かれた。こうなると一般常識を知らないオリヴィアには反論出来ない。更に彼女の目的である『奉納の儀』開催を考えれば聖獣、つまり女神のお墨付きということにすればますます実現しやすくなるだろう。
 そう結論付けたオリヴィアとヴァイスを、両親は昼間にガーデンパーティーを開いて登場させた。本来、オリヴィアは人前に出る年齢ではないので冒頭だけの参加だが母に抱かれ、用意された椅子に腰かけると膝に乗ってきたヴァイスに手を添えて口を開いた。

「はじめまして、オリヴィアです。よろしくおねがいいたします」
「まあ」
「何て可愛らしい」

 たくさんの大人に緊張するが、三歳児なので忖度はせず、にっこり笑って挨拶をした。反応を見る限り、好印象だったようで内心、胸を撫で下ろす。
 一方、ヴァイスも貴族相手なのでいつもの調子ではなく、聖獣らしい口調で言った。

「しばし、辺境伯領ここで厄介になる。令嬢からは『ヴァイス』の名を授かり、今後は女神の知恵を与えることとする」
「おぉ……」
「聖獣様が、令嬢と辺境伯領にご加護を」

 普段のヴァイスを知らない面々は澄まして話す白豹と、その喉とオリヴィアの手首に刻まれた花のような模様を見て、一同は驚いた。
 そしてネジェクリームを巻いたロールケーキを出すと「素晴らしい、これが女神の知恵」や「クリームもケーキも、こんなに滑らかでふんわりだなんて」などと感嘆の声を上げた。

「オリヴィア」
「ヴァイス」

 かなり大事になった気はするが、ひとまず喜んで貰えたようなので――オリヴィアは、膝に乗せたヴァイスの尻尾にこっそり手を当て、ハイタッチもどきをした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

その断罪、三ヶ月後じゃダメですか?

荒瀬ヤヒロ
恋愛
ダメですか。 突然覚えのない罪をなすりつけられたアレクサンドルは兄と弟ともに深い溜め息を吐く。 「あと、三ヶ月だったのに…」 *「小説家になろう」にも掲載しています。

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

気がついたら異世界に転生していた。

みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。 気がついたら異世界に転生していた。 普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・ 冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。 戦闘もありますが少しだけです。

うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?

プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。 小説家になろうでも公開している短編集です。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

処理中です...