95 / 107
第二章
会話は大事だと思うので
しおりを挟む
……私が、エマに提案したこと。
それは今回、暴走し分裂している一年生達を集めて、話をしたいと言うことだ。
「だったら、まだ新入生歓迎会をされていないので、そこで話をするのはどうでしょう?」
「えっ? 入学してから一か月経つわよね?」
私の出勤は週一回で、今は入学式があった四月ではなく、翌月の五月だ。この世界にはゴールデンウィークのような大型連休はないが普通は学校に慣れた頃、四月の月末頃にやると思う。
「……一年生の不仲のせいで、生徒会の皆様が様子見をされていて」
「ああ……」
闇の壁のせいで顔は見えないが、声だけでエマが恐縮しているのが解る。まあ、確かに今の状況で歓迎会をしても、一年生達の雰囲気が悪くなるだけだろう。
ちなみに乙女ゲームの小説でよく見るが、殿下達、そしてヒロインであるエマも生徒会に所属している。もっとも、今は一年生なので補助と言うか、手伝いのようなものらしいが――そんな訳で、エマは生徒会の動きも把握しているのだろう。
「何かあれば、責任は私が取ります……聖女の私が主催だと示す為、もし歓迎会が決まったら飾る花やお茶菓子は、修道院で用意します」
「えっ、それはありがたいですけど……良いんですか?」
「勿論。あ、でも花はともかく、お菓子は修道院で作るからお貴族様が用意するのより、見劣りするかもだけど……」
「え? バザーで買いますけど焼き菓子、すごく美味しいじゃないですか!?」
「あ、ありがとう」
「いえ! 本当のことですから……ユリウス様達も、気に入ってますよ?」
「脳筋だけじゃないのね……」
寄り添い部屋効果で寄付も増えたので、今の修道院ではクッキーの種類を増やした他、マドレーヌやガレットも作っている。
ちなみにエマも言ってくれているが、焼き菓子を卸している店やバザーでも好評だ。出会った後、脳筋が定期的にクッキーを買っているのは知っていたが、どうやらエマ経由で殿下達も食べていたらしい。まあ、別に好感度アップなどのアイテムではないし、売り上げになるのは素直に嬉しいが。
「まあ、まずは生徒会の許可が下りるかだけどね」
「大丈夫だと……と言うか、むしろ生徒会の皆様も喜ぶかと。とにかくまずユリウス様に伝えて、それから生徒会の皆様にも聞きますね!」
「ええ、お願い」
こうして私の提案は無事、殿下と生徒会の許可が下り――出勤の日に打ち合わせに行った後、例年より遅いが二週間後に新入生歓迎会が開催されることになった。
それは今回、暴走し分裂している一年生達を集めて、話をしたいと言うことだ。
「だったら、まだ新入生歓迎会をされていないので、そこで話をするのはどうでしょう?」
「えっ? 入学してから一か月経つわよね?」
私の出勤は週一回で、今は入学式があった四月ではなく、翌月の五月だ。この世界にはゴールデンウィークのような大型連休はないが普通は学校に慣れた頃、四月の月末頃にやると思う。
「……一年生の不仲のせいで、生徒会の皆様が様子見をされていて」
「ああ……」
闇の壁のせいで顔は見えないが、声だけでエマが恐縮しているのが解る。まあ、確かに今の状況で歓迎会をしても、一年生達の雰囲気が悪くなるだけだろう。
ちなみに乙女ゲームの小説でよく見るが、殿下達、そしてヒロインであるエマも生徒会に所属している。もっとも、今は一年生なので補助と言うか、手伝いのようなものらしいが――そんな訳で、エマは生徒会の動きも把握しているのだろう。
「何かあれば、責任は私が取ります……聖女の私が主催だと示す為、もし歓迎会が決まったら飾る花やお茶菓子は、修道院で用意します」
「えっ、それはありがたいですけど……良いんですか?」
「勿論。あ、でも花はともかく、お菓子は修道院で作るからお貴族様が用意するのより、見劣りするかもだけど……」
「え? バザーで買いますけど焼き菓子、すごく美味しいじゃないですか!?」
「あ、ありがとう」
「いえ! 本当のことですから……ユリウス様達も、気に入ってますよ?」
「脳筋だけじゃないのね……」
寄り添い部屋効果で寄付も増えたので、今の修道院ではクッキーの種類を増やした他、マドレーヌやガレットも作っている。
ちなみにエマも言ってくれているが、焼き菓子を卸している店やバザーでも好評だ。出会った後、脳筋が定期的にクッキーを買っているのは知っていたが、どうやらエマ経由で殿下達も食べていたらしい。まあ、別に好感度アップなどのアイテムではないし、売り上げになるのは素直に嬉しいが。
「まあ、まずは生徒会の許可が下りるかだけどね」
「大丈夫だと……と言うか、むしろ生徒会の皆様も喜ぶかと。とにかくまずユリウス様に伝えて、それから生徒会の皆様にも聞きますね!」
「ええ、お願い」
こうして私の提案は無事、殿下と生徒会の許可が下り――出勤の日に打ち合わせに行った後、例年より遅いが二週間後に新入生歓迎会が開催されることになった。
10
お気に入りに追加
967
あなたにおすすめの小説
見ず知らずの(たぶん)乙女ゲーに(おそらく)悪役令嬢として転生したので(とりあえず)破滅回避をめざします!
すな子
恋愛
ステラフィッサ王国公爵家令嬢ルクレツィア・ガラッシアが、前世の記憶を思い出したのは5歳のとき。
現代ニホンの枯れ果てたアラサーOLから、異世界の高位貴族の令嬢として天使の容貌を持って生まれ変わった自分は、昨今流行りの(?)「乙女ゲーム」の「悪役令嬢」に「転生」したのだと確信したものの、前世であれほどプレイした乙女ゲームのどんな設定にも、今の自分もその環境も、思い当たるものがなにひとつない!
それでもいつか訪れるはずの「破滅」を「回避」するために、前世の記憶を総動員、乙女ゲームや転生悪役令嬢がざまぁする物語からあらゆる事態を想定し、今世は幸せに生きようと奮闘するお話。
───エンディミオン様、あなたいったい、どこのどなたなんですの?
********
できるだけストレスフリーに読めるようご都合展開を陽気に突き進んでおりますので予めご了承くださいませ。
また、【閑話】には死ネタが含まれますので、苦手な方はご注意ください。
☆「小説家になろう」様にも常羽名義で投稿しております。
偽物令嬢〜前世で大好きな兄に殺されました。そんな悪役令嬢は静かで平和な未来をお望みです〜
浅大藍未
恋愛
国で唯一の公女、シオン・グレンジャーは国で最も有名な悪女。悪の化身とまで呼ばれるシオンは詳細のない闇魔法の使い手。
わかっているのは相手を意のままに操り、心を黒く染めるということだけ。
そんなシオンは家族から疎外され使用人からは陰湿な嫌がらせを受ける。
何を言ったところで「闇魔法で操られた」「公爵様の気を引こうとしている」などと信じてもらえず、それならば誰にも心を開かないと決めた。
誰も信用はしない。自分だけの世界で生きる。
ワガママで自己中。家のお金を使い宝石やドレスを買い漁る。
それがーーーー。
転生して二度目の人生を歩む私の存在。
優秀で自慢の兄に殺された私は乙女ゲーム『公女はあきらめない』の嫌われ者の悪役令嬢、シオン・グレンジャーになっていた。
「え、待って。ここでも死ぬしかないの……?」
攻略対象者はシオンを嫌う兄二人と婚約者。
ほぼ無理ゲーなんですけど。
シオンの断罪は一年後の卒業式。
それまでに生き残る方法を考えなければいけないのに、よりによって関わりを持ちたくない兄と暮らすなんて最悪!!
前世の記憶もあり兄には不快感しかない。
しかもヒロインが長男であるクローラーを攻略したら私は殺される。
次男のラエルなら国外追放。
婚約者のヘリオンなら幽閉。
どれも一巻の終わりじゃん!!
私はヒロインの邪魔はしない。
一年後には自分から出ていくから、それまでは旅立つ準備をさせて。
貴方達の幸せは致しません!!
悪役令嬢に転生した私が目指すのは平凡で静かな人生。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
残り一日で破滅フラグ全部へし折ります ざまぁRTA記録24Hr.
福留しゅん
恋愛
ヒロインに婚約者の王太子の心を奪われて嫉妬のあまりにいじめという名の悪意を振り撒きまくった公爵令嬢は突然ここが乙女ゲー『どきエデ』の世界だと思い出す。既にヒロインは全攻略対象者を虜にした逆ハーレムルート突入中で大団円まであと少し。婚約破棄まで残り二十四時間、『どきエデ』だったらとっくに詰みの状態じゃないですかやだも~! だったら残り一日で全部の破滅フラグへし折って逃げ切ってやる! あわよくば脳内ピンク色のヒロインと王太子に最大級のざまぁを……!
※Season 1,2:書籍版のみ公開中、Interlude 1:完結済(Season 1読了が前提)
悪役令嬢ですが、どうやらずっと好きだったみたいです
朝顔
恋愛
リナリアは前世の記憶を思い出して、頭を悩ませた。
この世界が自分の遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気がついたのだ。
そして、自分はどうやら主人公をいじめて、嫉妬に狂って殺そうとまでする悪役令嬢に転生してしまった。
せっかく生まれ変わった人生で断罪されるなんて絶対嫌。
どうにかして攻略対象である王子から逃げたいけど、なぜだか懐つかれてしまって……。
悪役令嬢の王道?の話を書いてみたくてチャレンジしました。
ざまぁはなく、溺愛甘々なお話です。
なろうにも同時投稿
婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる