人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら

渡里あずま

文字の大きさ
上 下
91 / 112
第二章

単なると言うのも何だが

しおりを挟む
 当の乙女ゲームを知らない私からすると、この世界は単なる異世界でしかない。
 だからこそ、前世の記憶が甦った時に修道院に行くことを選択した。結果として役割から逃げることになったが、自分が(と言うかイザベルが)悪役令嬢だから逃げた訳ではない。
 ……ないのだが、エマと違って現世の私イザベルと接点がなかったアリアからすれば、転生者である私は悪役令嬢としてのバットエンドを回避し、第二の人生を謳歌しているように見えたかもしれない。

(確かにイザベルの幸せの為に行動してるから、好きなように生きてるのは間違いないけど……でも)

 そこまで考えて、私はため息と共に呟きを落とした。

「の……エドガー様とか、他の攻略対象と物語のような恋愛関係になるつもりはなくて」
「そうなのか?」
「え? 疑問形? まさかと思いますが、ラウルさんから見てもそんな風に見えてました?」
「……アルスはともかく、ご子息二人は聖女様と同じ年で、交流もあるから」
「そうですか……ラウルさんでそうなら、ますます誤解されても仕方ない……」
「年は離れているが、アルスも聖女様とは交流があるし」
「えぇ? 現世ではそうですけど、前世から考えるとアルス様も年下なので……と言いますか、そもそもそれぞれ第一印象に問題がありますから。改善したのは良かったですけど、知り合い……まではいかなくても、友人としか思えません」
「…………」
「ラウルさん?」

 ずっと傍で見守ってくれたラウルさんにまで、暴風雨アルス達と恋愛関係になるかもしれないと思われていたことがショックだった。だからついつい力説してしまったが、そこで私はラウルさんが黙ってしまったことに気がついた。

(いけない……仮にも聖女って呼ばれてるのに、愚痴ったりして呆れられたかも……いや、もしかして嫌われた?)

 そこまで考えたところで、先程以上にショックを受け――そんな自分にあれっ、と引っかかったが、その前にラウルさんがいきなり頭を下げてきた。

「申し訳ない」
「……えっ?」
「アルスがそうなら、俺のことも頼りなく感じたと思う。それなのに、そんな俺に今まで黙っていたことを打ち明けてくれて……寛大なお心に、感謝しかない」

 迂闊だが、言われて暴風雨アルスとラウルさんが同じ年だったと思い出した。そして確かに、子供の頃は年下と言う意識はあったが――逆に頼りたいと思ったから話したのに、そんな相手に気を使わせた挙句に謝らせてしまうなんて!
 だからこそ私はこれ以上、誤解されないように本音を打ち明けた。

「違います! 逆に、私こそ中身は年上なのに悩んでばかりで……情けないから、嫌われたと思いました。こんな奴に、謝らないで下さい」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《メインストーリー》掃除屋ダストンと騎士団長《完結》

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説ダブルで100位以内に入れました。 ありがとうございます! 王都には腕利きの掃除屋がいる。 掃除屋ダストン。彼女の手にかかれば、ごみ屋敷も新築のように輝きを取り戻す。 そんな掃除屋と、縁ができた騎士団長の話。 ※ヒロインは30代、パートナーは40代です。 沢山の♥、100位以内ありがとうございます!お礼になればと、おまけを山ほどかいております!メインストーリー完結しました!今後は不定期におまけが増えますので、連載中になってます。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】 乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。 ※他サイトでも投稿中

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

処理中です...