人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら

渡里あずま

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第二章

言われて、俯瞰で見てみると

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 自分が異世界からの転生者だと、そしてこの世界が乙女ゲームの世界(私は知らないゲームだが)だとラウルに話すかどうか。ラウルに聞いて貰おうと思った時、迷ったのはそのことだった。
 とは言え、下手に誤魔化そうとすると昔のエマ以上に(彼女は素直に告白したが、それでも大分まとまりがなかった)とっ散らかりそうな気がする。だから私は、少し長くなりそうなので馬車を停めて貰った。そして、ラウルさんには本当のことを話すことにした。

「実は私には前世の、こことは違う世界で暮らしていた記憶がありまして」
「…………」

 昔の私のように、驚きの声は上げず。けれど軽く瞳を見開きながらも、ラウルさんはその眼差しで話の続きを促してきた。
 それに小さく頷き返し、私は自分が異世界からの転生者であること。そしてそんな異世界には、この世界について描かれたゲーム――物語があり、自分やエマ、そして殿下ユリウス達や現在、騒ぎの中心になっているアリアにはそれぞれ役割があったのだと。

「……あった? 過去形か?」
「ええ。ユリウス様とエマが婚約したことで、私が悪役になることはなくなりましたし。攻略対象の方々も当然、エマと付き合うことはなくなりました」
「成程……」
「ラウルさん?」
「その支援者の令嬢も、自由に行動しているのか?」
「えっ……その、言葉は悪いですが役割がなくなったので、自由に……」

 そこまで言ったところで、私はあることに気づいて言葉を切った。
 最初、アリアもまた自分やエマのように前世の記憶により、ゲームキャラとは違った、あるいは変わったと思っていた。
 だけどこうして振り返ってみると、男装こそしているがアリアの女生徒達への接し方は、エマから聞いていたサポートキャラと変わらない。優しく、親身に寄り添って――思えば男装も、恋のライバルにならない為と考えれば辻褄が合う。

「……いえ、彼女は……もしかしたら今も、役割を果たそうとしているのかも……」
「だとしたら、その令嬢は聖女様達が役割を演じていないことを理解しているんだろうか?」
「え? それは…………あ」

 前世の記憶があり、全く違う行動をしているので理解している筈だ。そう反論しようとしたが、そこでふと私は引っかかった。

(確かに、乙女ゲームとは違う行動だけど……ネット小説だと、私みたいに前世の人格が憑依してゲームとは違う行動を取って……攻略対象と、くっついたりするわね。そんなつもりはなかったけど、ネット小説あるあるではあるわ)
(くっつく?)
(イザベルは気にしないで)

 私の言葉を、不思議そうにくり返す現世の私イザベルを内心、慌てて制すると――ラウルさんにと言うより、自分に聞かせるように呟いた。

「誤解されたって、怒ってたけど……誤解されても仕方なかった……かも」
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