82 / 107
第二章
攻略対象が、思わぬことに
しおりを挟む
本日、私は出勤日である。
そして私が昼休み、小部屋にいると殿下達が保健室へと来た。けれど何故か、いつもならいるエマがいない。
「エマは?」
「今日は、席を外して貰っている……その、今回、説明しに来たことについてはちゃんと話しているが、今からする話を姉上と一緒に聞いて貰うのは少々、気まずくてな」
「……かしこまりました」
殿下の言葉に何を話す気なのかと思ったが、エマも知ってはいて殿下を止めていないようなので、まずは話を聞くことにした。そしてしばらくの沈黙の後、口を開いたのは殿下だった。
「……一年の男子生徒達がこれ以上、アリア嬢に女生徒達を独占させられないと言い出した」
「独占……」
元々、女生徒達の信頼を失ったのは男子生徒達の行動のせいだと思うが、そこを指摘しては話が進まない。だからあいづちで留めると、今度は猪が口を開いた。
「まあ、敵わない僻みだと解っているのですが……だからと言って、我慢しろと抑えつけるのも限界で。そうしたら、殿下に思いがけない申し出をしてきて……あ! 正確には側近の僕らにで、殿下は横で聞いていただけですか!」
「え、ええ……それで、どのような?」
「……その、僕達に女生徒達に優しくして、彼女達からの信頼度や好感度を上げるようにと……僕は当然、断りました」
「さようで、ございますか……」
何と言うか、「子供だなぁ」とか「攻略対象が女生徒の好感度を上げるの?」など、色々と思うところはある。そして、殿下が言い難いと言った理由も、猪も断ったとは言えムキになっている理由も理解した。
した、のだが――婚約者のいる殿下と、猪がやらないとなると。
「エドガー様、が……その……女生徒の方々に……親切に?」
「ああ。女の子達に挨拶したり、優しくするように……でも、変に馴れ馴れしくはするなってさ。まあ、女性はそもそも守るべきだから当然だけど!」
言葉を選びつつ尋ねた私にそう言って、何故か胸を張る脳筋を見て――流石に攻略対象なだけあってイケメンだし、下心なく接して信頼されるという意味では確かに適任だと思った。
とは言えよく解っていないようなので、私はつい心配になり言葉を続けた。
「……くれぐれも、無理はなさらないで下さいね?」
「ありがとな、聖女!」
私の言葉に、脳筋はニカッと笑ってお礼を言った。
そして私が昼休み、小部屋にいると殿下達が保健室へと来た。けれど何故か、いつもならいるエマがいない。
「エマは?」
「今日は、席を外して貰っている……その、今回、説明しに来たことについてはちゃんと話しているが、今からする話を姉上と一緒に聞いて貰うのは少々、気まずくてな」
「……かしこまりました」
殿下の言葉に何を話す気なのかと思ったが、エマも知ってはいて殿下を止めていないようなので、まずは話を聞くことにした。そしてしばらくの沈黙の後、口を開いたのは殿下だった。
「……一年の男子生徒達がこれ以上、アリア嬢に女生徒達を独占させられないと言い出した」
「独占……」
元々、女生徒達の信頼を失ったのは男子生徒達の行動のせいだと思うが、そこを指摘しては話が進まない。だからあいづちで留めると、今度は猪が口を開いた。
「まあ、敵わない僻みだと解っているのですが……だからと言って、我慢しろと抑えつけるのも限界で。そうしたら、殿下に思いがけない申し出をしてきて……あ! 正確には側近の僕らにで、殿下は横で聞いていただけですか!」
「え、ええ……それで、どのような?」
「……その、僕達に女生徒達に優しくして、彼女達からの信頼度や好感度を上げるようにと……僕は当然、断りました」
「さようで、ございますか……」
何と言うか、「子供だなぁ」とか「攻略対象が女生徒の好感度を上げるの?」など、色々と思うところはある。そして、殿下が言い難いと言った理由も、猪も断ったとは言えムキになっている理由も理解した。
した、のだが――婚約者のいる殿下と、猪がやらないとなると。
「エドガー様、が……その……女生徒の方々に……親切に?」
「ああ。女の子達に挨拶したり、優しくするように……でも、変に馴れ馴れしくはするなってさ。まあ、女性はそもそも守るべきだから当然だけど!」
言葉を選びつつ尋ねた私にそう言って、何故か胸を張る脳筋を見て――流石に攻略対象なだけあってイケメンだし、下心なく接して信頼されるという意味では確かに適任だと思った。
とは言えよく解っていないようなので、私はつい心配になり言葉を続けた。
「……くれぐれも、無理はなさらないで下さいね?」
「ありがとな、聖女!」
私の言葉に、脳筋はニカッと笑ってお礼を言った。
0
お気に入りに追加
967
あなたにおすすめの小説
転生悪役令嬢は婚約破棄で逆ハーに?!
アイリス
恋愛
公爵令嬢ブリジットは、ある日突然王太子に婚約破棄を言い渡された。
その瞬間、ここが前世でプレイした乙女ゲームの世界で、自分が火あぶりになる運命の悪役令嬢だと気付く。
絶対火あぶりは回避します!
そのためには地味に田舎に引きこもって……って、どうして攻略対象が次々に求婚しに来るの?!
巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢ジゼルはある騒動に巻き込まれとばっちりに合いそうな下級生を庇って大怪我を負ってしまう。
学園内での大事件となり、体に傷を負った事で婚約者にも捨てられ、学園にも居場所がなくなった事で悲しみに暮れる…。
「好都合だわ。これでお役御免だわ」
――…はずもなかった。
婚約者は他の女性にお熱で、死にかけた婚約者に一切の関心もなく、学園では派閥争いをしており正直どうでも良かった。
大切なのは兄と伯爵家だった。
何かも失ったジゼルだったが隣国の王太子殿下に何故か好意をもたれてしまい波紋を呼んでしまうのだった。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました
冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。
家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。
過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。
関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。
記憶と共に隠された真実とは———
※小説家になろうでも投稿しています。
そして乙女ゲームは始まらなかった
お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。
一体私は何をしたらいいのでしょうか?
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる