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第二章

攻略対象が、思わぬことに

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 本日、私は出勤日である。
 そして私が昼休み、小部屋にいると殿下ユリウス達が保健室へと来た。けれど何故か、いつもならいるエマがいない。

「エマは?」
「今日は、席を外して貰っている……その、今回、説明しに来たことについてはちゃんと話しているが、今からする話を姉上と一緒に聞いて貰うのは少々、気まずくてな」
「……かしこまりました」

 殿下ユリウスの言葉に何を話す気なのかと思ったが、エマも知ってはいて殿下ユリウスを止めていないようなので、まずは話を聞くことにした。そしてしばらくの沈黙の後、口を開いたのは殿下ユリウスだった。

「……一年の男子生徒達がこれ以上、アリア嬢に女生徒達を独占させられないと言い出した」
「独占……」

 元々、女生徒達の信頼を失ったのは男子生徒達の行動のせいだと思うが、そこを指摘しては話が進まない。だからあいづちで留めると、今度はケインが口を開いた。

「まあ、敵わない僻みだと解っているのですが……だからと言って、我慢しろと抑えつけるのも限界で。そうしたら、殿下に思いがけない申し出をしてきて……あ! 正確には側近の僕らにで、殿下は横で聞いていただけですか!」
「え、ええ……それで、どのような?」
「……その、僕達に女生徒達に優しくして、彼女達からの信頼度や好感度を上げるようにと……僕は当然、断りました」
「さようで、ございますか……」

 何と言うか、「子供だなぁ」とか「攻略対象が女生徒の好感度を上げるの?」など、色々と思うところはある。そして、殿下ユリウスが言い難いと言った理由も、ケインも断ったとは言えムキになっている理由も理解した。
 した、のだが――婚約者のいる殿下ユリウスと、ケインがやらないとなると。

「エドガー様、が……その……女生徒の方々に……親切に?」
「ああ。女の子達に挨拶したり、優しくするように……でも、変に馴れ馴れしくはするなってさ。まあ、女性はそもそも守るべきだから当然だけど!」

 言葉を選びつつ尋ねた私にそう言って、何故か胸を張る脳筋エドガーを見て――流石に攻略対象なだけあってイケメンだし、下心なく接して信頼されるという意味では確かに適任だと思った。
 とは言えよく解っていないようなので、私はつい心配になり言葉を続けた。

「……くれぐれも、無理はなさらないで下さいね?」
「ありがとな、聖女!」

 私の言葉に、脳筋エドガーはニカッと笑ってお礼を言った。
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