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第二章

サポートキャラの私の推しは

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アリア視点



「アリア様」
「これから、お昼ですか?」
「よろしければ、私達と一緒に食べませんか? お弁当を用意したんです」
「私は、お菓子を用意しました」
「逆にいいの? 嬉しいな、ありがとう」

 入学してから二週間くらい経ったが、今日も私は同級生の女生徒達に囲まれていた。
 どうせ慕うなら同性の私ではなく、他の男子生徒にとは思うが――サポートキャラとしては、相手の気持ちを無視したり軽く見て、こちらの都合を押し付けることは出来ない。一応、初めに付き合えないことは伝えているし、それでも良いと言われれば私はこれ以上、断れない。そんな訳で、私の昼休みはこうして、同級生の女生徒達と過ごすようになっていた。

(差し入れのお弁当やお菓子は、美味しいし……複雑だけど、これも男性陣が不甲斐ないからよね。問題の男子生徒達は論外だけど、もっと骨のある男はいないのかしら)

 そんなことを考えながら、学食(私の感覚だとレストランだが)に向かっていると――逆方向へと歩いていく、王太子一行を見かけてドキッとした。
 ……正確には、王太子・ユリウスについて歩いている、騎士団長の息子・エドガーの赤い髪を見かけてである。

(はぁ……っ、格好良い……! ちょっと寝癖があるのも、また可愛い!)

 声に出すのは堪えたが、内心で私は叫んで見悶えた。
 実は私の前世の推しは彼、エドガーだった。テンプレな熱血脳筋キャラなので、キャラ人気は腹黒王太子やツンデレ眼鏡、そしてクーデレ教師に負けてしまっていたが、私にはそんな不憫なところすら愛おしかった。それ故、ゲームをクリアした後もゲットしたスチルは何度も何度も眺めたし、社会人に許される範囲でグッズも買った(前世は隠れオタクだった)。更に、二次創作を読み漁るだけでは飽き足らず、自分でも夢小説を書いたりした。
 ……そんな推しキャラであるエドガーが向かっている方向には、保健室がある。今日は確か週に一度、イザベルが講師として来る日だ。
 そして今回の騒ぎの時、彼らはイザベルを庇って問題の男子生徒達を撃退したと聞いている。

(ネット小説みたいに、エディ君も悪役令嬢……じゃないけど、イザベル様に夢中なのかしら)

 私の中身はアラサー、いや、前世を思い出した後の年齢も足すとアラフォーである。
 いくら推しキャラと言っても、エドガーとどうこうなるつもりはない。ただ同じ学校で、時折、今みたいに見かけることが出来れば満足だ。
 ……そう、思っていた。
 けれど、もしもイザベルと付き合ったりと考えると――モヤッとする辺り、我ながら女々しいと言うか面倒臭くて、私は自己嫌悪に陥るのだった。
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