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第一章
前世の私
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……私立のお嬢様学校だったせいか、いじめらたり仲間外れにされることはなかった。
でも、私は前世で自分から周りに話しかけなかったから仲の良い友達も、もちろん恋人もいなかった。でも家もあったし、両親もいたからのんびりぼんやり過ごしていた。
そんな私は、就職活動で初めての挫折を知ることになる。
エスカレーター校でのほほんとしていた私は、自分をアピールして合格を勝ち取ることが出来ず――十数社受けても断られた私は、未経験者も可という言葉に飛びついて、コールセンターの電話オペレーターの面接を受けた。そこで私は、後の女上司から思いがけないことを言われることになる。
「……あなた、人見知り?」
「え、あ……はい」
「でも、電話だと直接、顔を合わせることはないから。あとここのセンターは、可能な限りお客様に寄り添うから……まずはそうやって、きちんと話を聞いてくれれば大丈夫」
面接で話をするんじゃなく、聞くことを評価されたのは初めてだった。
そして電話越しとは言え、お客様対応をするようになって、緊張のあまり家でへたり込み。親に心配されながらも、次第にお客様から「ありがとう」とお礼を言われるようになった。
更に派遣社員からのスタートだったが、一年経ったら派遣先で直接雇用されることになり――少ないけど友達も出来たし、後輩のサポートを任せられるようにもなった。驚いたが、面談の時の女上司(研修担当者なので面接も担当したという訳だ)に言われたことで決断した。
「あなたは、お客様の話をしっかり聞いて、要望をくみ取ってくれるから……後輩にも、その大切さを教えてあげてほしいの」
見ていてくれて、評価して貰えたことが嬉しかった。自分の居場所を手に入れたと感じた。
だから、頑張って後輩達に自分が教わったことを伝えようとしたが――その半年後、健康診断で引っかかり。検査をしたら病気が見つかって、入院。そして退院出来ず、そのまま死んでしまったのだ。
※
私の前世を見た現世の私は先程までのような怒りではなく、困惑した表情でその場に立ち尽くした。そんな彼女に、私は口を開いた。
「あなたの六年に比べれば地味で、平々凡々かもしれないけど……それでも、私なりに頑張ってたの。最後は病気で寝たきりになって、何も出来なくなったけどね」
「…………」
「それでも、あなたよりは年上だから言うわね? 嫌なことを言って父親に印象付けるのが、あなたの思いつく精一杯だったかもしれないけど……そもそも、構ってくれない相手は見限って、離れていいの。大変だし向き不向きはあるけど、環境を変えることで居場所が見つかることもあるの」
「でも……」
「あとせっかく生まれ変わって、動けるようになったんだもの。親や職場の皆には恩返し出来なかったけど、今度こそ頑張って働いて、またありがとうって言われたい」
「……言われないわ。私のことを好きになってくれる人なんて、誰もいない」
「いるわよ!」
「えっ……?」
再び俯いた現世の私に、気づけは私は叫んでいた。そして驚き、硬直する相手に更に言い募った。
「だって、私は知ってる! イザベルは、何にも悪くないっ。私が、保証するっ」
強いて言えば、子供なのに大人に助けを求めなかったのはまずかったと思うけど――本来なら、周りの大人の誰かが気づくべきだ。それなのに、逆に聞こえるように悪口や恨み言を言われたら、萎縮も絶望もするだろう。
そして私は、そんな現世の私のことが不憫で、放っておけなくなった。
でも、私は前世で自分から周りに話しかけなかったから仲の良い友達も、もちろん恋人もいなかった。でも家もあったし、両親もいたからのんびりぼんやり過ごしていた。
そんな私は、就職活動で初めての挫折を知ることになる。
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「……あなた、人見知り?」
「え、あ……はい」
「でも、電話だと直接、顔を合わせることはないから。あとここのセンターは、可能な限りお客様に寄り添うから……まずはそうやって、きちんと話を聞いてくれれば大丈夫」
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そして電話越しとは言え、お客様対応をするようになって、緊張のあまり家でへたり込み。親に心配されながらも、次第にお客様から「ありがとう」とお礼を言われるようになった。
更に派遣社員からのスタートだったが、一年経ったら派遣先で直接雇用されることになり――少ないけど友達も出来たし、後輩のサポートを任せられるようにもなった。驚いたが、面談の時の女上司(研修担当者なので面接も担当したという訳だ)に言われたことで決断した。
「あなたは、お客様の話をしっかり聞いて、要望をくみ取ってくれるから……後輩にも、その大切さを教えてあげてほしいの」
見ていてくれて、評価して貰えたことが嬉しかった。自分の居場所を手に入れたと感じた。
だから、頑張って後輩達に自分が教わったことを伝えようとしたが――その半年後、健康診断で引っかかり。検査をしたら病気が見つかって、入院。そして退院出来ず、そのまま死んでしまったのだ。
※
私の前世を見た現世の私は先程までのような怒りではなく、困惑した表情でその場に立ち尽くした。そんな彼女に、私は口を開いた。
「あなたの六年に比べれば地味で、平々凡々かもしれないけど……それでも、私なりに頑張ってたの。最後は病気で寝たきりになって、何も出来なくなったけどね」
「…………」
「それでも、あなたよりは年上だから言うわね? 嫌なことを言って父親に印象付けるのが、あなたの思いつく精一杯だったかもしれないけど……そもそも、構ってくれない相手は見限って、離れていいの。大変だし向き不向きはあるけど、環境を変えることで居場所が見つかることもあるの」
「でも……」
「あとせっかく生まれ変わって、動けるようになったんだもの。親や職場の皆には恩返し出来なかったけど、今度こそ頑張って働いて、またありがとうって言われたい」
「……言われないわ。私のことを好きになってくれる人なんて、誰もいない」
「いるわよ!」
「えっ……?」
再び俯いた現世の私に、気づけは私は叫んでいた。そして驚き、硬直する相手に更に言い募った。
「だって、私は知ってる! イザベルは、何にも悪くないっ。私が、保証するっ」
強いて言えば、子供なのに大人に助けを求めなかったのはまずかったと思うけど――本来なら、周りの大人の誰かが気づくべきだ。それなのに、逆に聞こえるように悪口や恨み言を言われたら、萎縮も絶望もするだろう。
そして私は、そんな現世の私のことが不憫で、放っておけなくなった。
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