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第一章
色々と考えた結果
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本日は二話更新します。
※
(落ち着いて、私。私は、悪役令嬢からフェードアウト出来てる……今まで通り、距離を保って何とか逃げ切るだけ)
(カナさん、頑張って!)
(……ありがとね、イザベル)
自分に言い聞かせていると、あまりの動揺ぶりに現世の私がエールを送ってきた。それにお礼を言って、私は口を開いた。
「それで、ご用件は?」
普段は相手から言葉が出るのを待つが、今回の場合はエドガーのようにただ会いに来たようなので、こちらから話を振ってみた。そんな私に、ユリウスが話しかけてくる。
「……ケインが、済まないことをした」
「えっ?」
「悪い奴じゃないんだが、だからと言って許されることではない。いや、それを言うとアルスやエドガーもだが……修道院に押しかけて、迷惑をかけてしまい申し訳なかった」
「いえ……」
「まあ、同じことをしている私が言っても、説得力はないか」
「…………」
禿同、あるいはおまゆう(激しく同意とお前が言うなのネットスラング)としか思えないが、変に反応して会話を膨らませたくないので無言で応える。そんな私に、ユリウスは言葉を続けた。
「謝罪は勿論だが、私は君に聞きたかった……君を追い出した異母妹を、恨んでいるか?」
……その問いかけに思ったのは「エマから、彼のトラウマを聞いておいて良かった」だった。
うっかり恨んでいないなどと言うと、好感度が上がってしまう気がする。そう、乙女ゲームの世界なだけに。
しかし、だからと言って恨んでいると言うのも気が引ける。嘘などつきたくないし、万が一、強制力があるとしたら何を言っても同じだろうし――どうしよう、色々考えて面倒臭くなっている。
(あ、そうか)
そこでふ、とあることを思いついて私は言った。
「恨む以前のお話です」
「何?」
「エマ達母子のことを知ったのは、昨年のことです。顔合わせをして、その後はすぐ修道院に来ましたので……恨む程、一緒に過ごしておりません」
まあ、もっと言うと前世の記憶が蘇り、現世と二人三脚状態になったからというのもあるが、話がややこしくなるのでユリウスに言う気はない。ただ理解してほしいのは、ユリウスと異母兄との関係性とは違うのだということだ。
(だから変に重ねたり、お兄様に聞けなかった答えは求めないで下さいね?)
そこまで言うと蛇足な気がして、けれど伝わってほしくてついつい祈っていると――壁の向こうから、クスクスと笑い声が聞こえてきた。
「恨む以前、か……エマは、あんなに暑苦しく君を慕っているのに……随分と、温度差が激しいな」
「……恨むかどうかという話では、ありませんでしたか?」
「恨むことも慕うことも、根っこは同じだと私は思う……だが、必ずしもそれだけではないのだな。感謝するぞ、聖女」
「はい」
「エマのことは私が引き受けるから、安心するように」
そして、顔は見えないが笑っていると解る声でそう言うと――しばらくして、ベルを鳴らしてユリウスは寄り添い部屋を後にした。
しばしの沈黙の後、壁を消して完全にユリウスが退席したことを確認すると、私はポツリと呟いた。
「……フラグは、折れたみたいね」
世の中、嫌いか好きかだけではない。だから、と思って第三の選択肢を口にしてみたが、エマの頑張りもあって面白がられただけで終わったようだ。と言うか、さりげなくエマの所有者宣言をされた気がする。
やれやれ、と思いつつ、私は深々とため息をついた。
(偉いんだけど、偉そうだから……今度から、殿下って呼ぼう)
※
(落ち着いて、私。私は、悪役令嬢からフェードアウト出来てる……今まで通り、距離を保って何とか逃げ切るだけ)
(カナさん、頑張って!)
(……ありがとね、イザベル)
自分に言い聞かせていると、あまりの動揺ぶりに現世の私がエールを送ってきた。それにお礼を言って、私は口を開いた。
「それで、ご用件は?」
普段は相手から言葉が出るのを待つが、今回の場合はエドガーのようにただ会いに来たようなので、こちらから話を振ってみた。そんな私に、ユリウスが話しかけてくる。
「……ケインが、済まないことをした」
「えっ?」
「悪い奴じゃないんだが、だからと言って許されることではない。いや、それを言うとアルスやエドガーもだが……修道院に押しかけて、迷惑をかけてしまい申し訳なかった」
「いえ……」
「まあ、同じことをしている私が言っても、説得力はないか」
「…………」
禿同、あるいはおまゆう(激しく同意とお前が言うなのネットスラング)としか思えないが、変に反応して会話を膨らませたくないので無言で応える。そんな私に、ユリウスは言葉を続けた。
「謝罪は勿論だが、私は君に聞きたかった……君を追い出した異母妹を、恨んでいるか?」
……その問いかけに思ったのは「エマから、彼のトラウマを聞いておいて良かった」だった。
うっかり恨んでいないなどと言うと、好感度が上がってしまう気がする。そう、乙女ゲームの世界なだけに。
しかし、だからと言って恨んでいると言うのも気が引ける。嘘などつきたくないし、万が一、強制力があるとしたら何を言っても同じだろうし――どうしよう、色々考えて面倒臭くなっている。
(あ、そうか)
そこでふ、とあることを思いついて私は言った。
「恨む以前のお話です」
「何?」
「エマ達母子のことを知ったのは、昨年のことです。顔合わせをして、その後はすぐ修道院に来ましたので……恨む程、一緒に過ごしておりません」
まあ、もっと言うと前世の記憶が蘇り、現世と二人三脚状態になったからというのもあるが、話がややこしくなるのでユリウスに言う気はない。ただ理解してほしいのは、ユリウスと異母兄との関係性とは違うのだということだ。
(だから変に重ねたり、お兄様に聞けなかった答えは求めないで下さいね?)
そこまで言うと蛇足な気がして、けれど伝わってほしくてついつい祈っていると――壁の向こうから、クスクスと笑い声が聞こえてきた。
「恨む以前、か……エマは、あんなに暑苦しく君を慕っているのに……随分と、温度差が激しいな」
「……恨むかどうかという話では、ありませんでしたか?」
「恨むことも慕うことも、根っこは同じだと私は思う……だが、必ずしもそれだけではないのだな。感謝するぞ、聖女」
「はい」
「エマのことは私が引き受けるから、安心するように」
そして、顔は見えないが笑っていると解る声でそう言うと――しばらくして、ベルを鳴らしてユリウスは寄り添い部屋を後にした。
しばしの沈黙の後、壁を消して完全にユリウスが退席したことを確認すると、私はポツリと呟いた。
「……フラグは、折れたみたいね」
世の中、嫌いか好きかだけではない。だから、と思って第三の選択肢を口にしてみたが、エマの頑張りもあって面白がられただけで終わったようだ。と言うか、さりげなくエマの所有者宣言をされた気がする。
やれやれ、と思いつつ、私は深々とため息をついた。
(偉いんだけど、偉そうだから……今度から、殿下って呼ぼう)
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