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第一章
どうしよう、ツッコミどころが多すぎる
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家畜の世話は、冬の間も交代でしていた。
とは言え、やはり外の暖かさや陽射しなどは冬と違う。春になったのだとしみじみ思いながら、私は闇魔法で作った人形を操りつつフォークを使って家畜小屋の清掃をしていた。
(そう言えば、前にこうして掃除をしてたら、暴風雨が……あ)
(カナさん?)
(いや、何かこういうの、フラグになるかなって)
(フラグ?)
現世の私の問いかけに、前世の私は答えた。当然、前世の考え方なので、現世の私は意味が解らず、不思議そうに首を傾げる。
(まあ、でも暴風雨は……アポなしはあるけど、怒鳴り込んでくることはないし。そんな暴風雨を経由することになってるから、他の二人がいきなり来ることはないし……ありがたいことに、猪経由で断ってから王太子も来てないし)
なんて考えながら、私は古い敷料(布団やトイレ代わりに敷いている藁など)を掃除し、新しいものを補充した。そんなわたしに、不意に背後から声がかけられる。
「イザ……お姉さまっ」
修道院にいる幼女は、自分だけだ。それなのに聞こえた幼い女の子の声と内容に驚き、闇の魔法人形に抱えられたまま振り返ると去年、一度会っただけの異母妹がいた。波打つ髪は光の加減でピンクに見える、ストロベリーブロンド。大きな瞳は、澄んだ青――確か、名前は。
「……エマ?」
「っ!?」
ローラから聞いた名前(現世父から聞いたかもしれないが、前世の記憶が甦ったショックと、現世の私を庇うのでいっぱいいっぱいだったので覚えていない)を口にする。
それに、ハッと息を呑んだかと思うと――エマは祈るように両手を組み、いきなりその場にしゃがみ込んだ。まだ家畜小屋に入っていないが、外は外である。エマが着ているドレスの裾が気になり、私は慌てて魔法人形に降ろして貰って駆け寄った。
そんな私の耳に届いたのは、すごく早口なエマの呟きだった。
「やだ、イザベル様に名前、呼んで貰っちゃった……いや、エマなんだけど。でも、ゲームでもわたしがエマだったから、ありだし。てか、シスター姿の幼女、可愛すぎか! 何か、ゆるキャラみたいなのに抱っこされてるし……しかも編み込みとか、レアスチルゲットだぜ! って落ち着け、わたし。今日は、フラグを折りに来たんだからっ」
「…………」
どうしよう、ツッコミどころが多すぎる。
けれど、これだけは言わなければならない。そう心の中で結論付けて、私は口を開いた。
「ドレスが汚れたら大変だから、あちらで話しましょうか?」
とは言え、やはり外の暖かさや陽射しなどは冬と違う。春になったのだとしみじみ思いながら、私は闇魔法で作った人形を操りつつフォークを使って家畜小屋の清掃をしていた。
(そう言えば、前にこうして掃除をしてたら、暴風雨が……あ)
(カナさん?)
(いや、何かこういうの、フラグになるかなって)
(フラグ?)
現世の私の問いかけに、前世の私は答えた。当然、前世の考え方なので、現世の私は意味が解らず、不思議そうに首を傾げる。
(まあ、でも暴風雨は……アポなしはあるけど、怒鳴り込んでくることはないし。そんな暴風雨を経由することになってるから、他の二人がいきなり来ることはないし……ありがたいことに、猪経由で断ってから王太子も来てないし)
なんて考えながら、私は古い敷料(布団やトイレ代わりに敷いている藁など)を掃除し、新しいものを補充した。そんなわたしに、不意に背後から声がかけられる。
「イザ……お姉さまっ」
修道院にいる幼女は、自分だけだ。それなのに聞こえた幼い女の子の声と内容に驚き、闇の魔法人形に抱えられたまま振り返ると去年、一度会っただけの異母妹がいた。波打つ髪は光の加減でピンクに見える、ストロベリーブロンド。大きな瞳は、澄んだ青――確か、名前は。
「……エマ?」
「っ!?」
ローラから聞いた名前(現世父から聞いたかもしれないが、前世の記憶が甦ったショックと、現世の私を庇うのでいっぱいいっぱいだったので覚えていない)を口にする。
それに、ハッと息を呑んだかと思うと――エマは祈るように両手を組み、いきなりその場にしゃがみ込んだ。まだ家畜小屋に入っていないが、外は外である。エマが着ているドレスの裾が気になり、私は慌てて魔法人形に降ろして貰って駆け寄った。
そんな私の耳に届いたのは、すごく早口なエマの呟きだった。
「やだ、イザベル様に名前、呼んで貰っちゃった……いや、エマなんだけど。でも、ゲームでもわたしがエマだったから、ありだし。てか、シスター姿の幼女、可愛すぎか! 何か、ゆるキャラみたいなのに抱っこされてるし……しかも編み込みとか、レアスチルゲットだぜ! って落ち着け、わたし。今日は、フラグを折りに来たんだからっ」
「…………」
どうしよう、ツッコミどころが多すぎる。
けれど、これだけは言わなければならない。そう心の中で結論付けて、私は口を開いた。
「ドレスが汚れたら大変だから、あちらで話しましょうか?」
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