17 / 107
第一章
実際に、見て貰うことにしました【3】
しおりを挟む
主人公視点/ラウル視点
※
闇魔法を使って、小さな体だけだと不可能な剣を持った私に、アントワーヌ様とビアンカ様以外、クロエ様や神兵の皆さんからどよめきが起こる。
「このように、私が闇属性の魔法を使っているのは『重いものを持つ』為です。魔法は攻撃や防御だけではなく、こんな風にもっと色んな使い道があると思います……楽をすると言うより、出来ることを増やすことを目的としています」
「……君が、考えたのか?」
「はい、そうです。他の魔法でも……畑に水を撒いたり、部屋の換気をしたり。炎なら、光の代わりに暗いところを照らしたり、部屋を温かくするのにも使えると思います」
「……炎だぞ? 危険だ」
そう言うと、ラウルさんは自分の手から燃え上がる炎の球を出した。そんな場合じゃないのだけど、つい心の中の厨二がときめいてしまう。
(ファイヤーボール! 確かに、それをそのまま人や物にぶつけるなら、大火事で大惨事だけど)
でも、と私は前世の漫画で読んだ言葉を続けた。
「剣のように、魔法も道具だと考えて下さい。私達人間の使い方で攻撃することにも、攻撃を受け止める為にも……そして私の闇魔法のように補助として、杖のようにも使えます。つまり、人の心の在り方次第なんです」
「心の、在り方……」
そんな私の言葉をくり返すと、それに応えるようにラウルさんの炎の球が小さい、それこそロウソクの灯りくらいの大きさの炎に分かれた。
(ラウルさん、ありがとう! 強面だけど、何て素直で良い人なの!?)
これなら、希少な光魔法がなくても照明に使える。あと、薪に頼らなくても燃料として魔法の炎が使えるのではないだろうか?
夢が広がるのに、私がワクワクしていると――不意に、炎を消したラウルさんが私の前で跪いた。そして、慌てて降ろして貰った私の前で金色の頭を下げた。
「……我らに、新たな道を与えてくれたこと、感謝する」
「あ、あの」
「「「感謝する」」」
次の瞬間、ラウルさんだけじゃなく他の神兵の皆さんも跪き、それぞれ私に頭を下げてきた。
困ってクロエ様を見ると、何故だか笑顔で返された。
「ああ、気にしないで? すごく喜んでいるだけだから」
「え」
「……貴族や騎士以外、そして光属性以外の魔法は危険視されるのよ。神兵も、全員ではないけれど『魔法を使える場合』他に選択肢がなくて……でも、あなたの考え方だと魔法を使えても『ただの』修道士や修道女にもなれるってことよね?」
その言葉に、アントワーヌ様達や私は『貴族』だからこそ、その選択肢は除外されていたのだと今更ながらに気づいた。
そして、自分の常識知らずが良い方向に転がったことに内心、ホッと胸を撫で下ろした。
※
怖くない、と彼女は言った。
そう、初めて会った時も――そして今、この瞬間も。
その言葉を肯定するように、彼女の琥珀色の瞳はラウルから逸らされることはない。澄んだ眼差しで、真っ直ぐ彼を見つめてくる。
(自分は、神の剣『にしか』なれない人間なのに)
孤児であり、光属性以外の――炎属性の自分が、神に仕えるには神兵になるしかなかった。それはそれで、信仰の一つの形だと頭では理解していたが。
(そうしないと、自分は危険なんだ)
そう諦めと共に思っていたことを、無垢な幼女の眼差しが打ち砕いた。使い手次第だと、自分達は武器以外にもなれるのだと教えてくれた。
(神兵は、神とこの修道院を守る存在)
そんな己を今更、覆すつもりはないけれど。
(……この清らかな魂も、俺は守ろう)
小さな体で、己の存在まるごとを受け入れてくれた幼女に、ラウルは躊躇無く跪いた。
※
闇魔法を使って、小さな体だけだと不可能な剣を持った私に、アントワーヌ様とビアンカ様以外、クロエ様や神兵の皆さんからどよめきが起こる。
「このように、私が闇属性の魔法を使っているのは『重いものを持つ』為です。魔法は攻撃や防御だけではなく、こんな風にもっと色んな使い道があると思います……楽をすると言うより、出来ることを増やすことを目的としています」
「……君が、考えたのか?」
「はい、そうです。他の魔法でも……畑に水を撒いたり、部屋の換気をしたり。炎なら、光の代わりに暗いところを照らしたり、部屋を温かくするのにも使えると思います」
「……炎だぞ? 危険だ」
そう言うと、ラウルさんは自分の手から燃え上がる炎の球を出した。そんな場合じゃないのだけど、つい心の中の厨二がときめいてしまう。
(ファイヤーボール! 確かに、それをそのまま人や物にぶつけるなら、大火事で大惨事だけど)
でも、と私は前世の漫画で読んだ言葉を続けた。
「剣のように、魔法も道具だと考えて下さい。私達人間の使い方で攻撃することにも、攻撃を受け止める為にも……そして私の闇魔法のように補助として、杖のようにも使えます。つまり、人の心の在り方次第なんです」
「心の、在り方……」
そんな私の言葉をくり返すと、それに応えるようにラウルさんの炎の球が小さい、それこそロウソクの灯りくらいの大きさの炎に分かれた。
(ラウルさん、ありがとう! 強面だけど、何て素直で良い人なの!?)
これなら、希少な光魔法がなくても照明に使える。あと、薪に頼らなくても燃料として魔法の炎が使えるのではないだろうか?
夢が広がるのに、私がワクワクしていると――不意に、炎を消したラウルさんが私の前で跪いた。そして、慌てて降ろして貰った私の前で金色の頭を下げた。
「……我らに、新たな道を与えてくれたこと、感謝する」
「あ、あの」
「「「感謝する」」」
次の瞬間、ラウルさんだけじゃなく他の神兵の皆さんも跪き、それぞれ私に頭を下げてきた。
困ってクロエ様を見ると、何故だか笑顔で返された。
「ああ、気にしないで? すごく喜んでいるだけだから」
「え」
「……貴族や騎士以外、そして光属性以外の魔法は危険視されるのよ。神兵も、全員ではないけれど『魔法を使える場合』他に選択肢がなくて……でも、あなたの考え方だと魔法を使えても『ただの』修道士や修道女にもなれるってことよね?」
その言葉に、アントワーヌ様達や私は『貴族』だからこそ、その選択肢は除外されていたのだと今更ながらに気づいた。
そして、自分の常識知らずが良い方向に転がったことに内心、ホッと胸を撫で下ろした。
※
怖くない、と彼女は言った。
そう、初めて会った時も――そして今、この瞬間も。
その言葉を肯定するように、彼女の琥珀色の瞳はラウルから逸らされることはない。澄んだ眼差しで、真っ直ぐ彼を見つめてくる。
(自分は、神の剣『にしか』なれない人間なのに)
孤児であり、光属性以外の――炎属性の自分が、神に仕えるには神兵になるしかなかった。それはそれで、信仰の一つの形だと頭では理解していたが。
(そうしないと、自分は危険なんだ)
そう諦めと共に思っていたことを、無垢な幼女の眼差しが打ち砕いた。使い手次第だと、自分達は武器以外にもなれるのだと教えてくれた。
(神兵は、神とこの修道院を守る存在)
そんな己を今更、覆すつもりはないけれど。
(……この清らかな魂も、俺は守ろう)
小さな体で、己の存在まるごとを受け入れてくれた幼女に、ラウルは躊躇無く跪いた。
0
お気に入りに追加
967
あなたにおすすめの小説
見ず知らずの(たぶん)乙女ゲーに(おそらく)悪役令嬢として転生したので(とりあえず)破滅回避をめざします!
すな子
恋愛
ステラフィッサ王国公爵家令嬢ルクレツィア・ガラッシアが、前世の記憶を思い出したのは5歳のとき。
現代ニホンの枯れ果てたアラサーOLから、異世界の高位貴族の令嬢として天使の容貌を持って生まれ変わった自分は、昨今流行りの(?)「乙女ゲーム」の「悪役令嬢」に「転生」したのだと確信したものの、前世であれほどプレイした乙女ゲームのどんな設定にも、今の自分もその環境も、思い当たるものがなにひとつない!
それでもいつか訪れるはずの「破滅」を「回避」するために、前世の記憶を総動員、乙女ゲームや転生悪役令嬢がざまぁする物語からあらゆる事態を想定し、今世は幸せに生きようと奮闘するお話。
───エンディミオン様、あなたいったい、どこのどなたなんですの?
********
できるだけストレスフリーに読めるようご都合展開を陽気に突き進んでおりますので予めご了承くださいませ。
また、【閑話】には死ネタが含まれますので、苦手な方はご注意ください。
☆「小説家になろう」様にも常羽名義で投稿しております。
偽物令嬢〜前世で大好きな兄に殺されました。そんな悪役令嬢は静かで平和な未来をお望みです〜
浅大藍未
恋愛
国で唯一の公女、シオン・グレンジャーは国で最も有名な悪女。悪の化身とまで呼ばれるシオンは詳細のない闇魔法の使い手。
わかっているのは相手を意のままに操り、心を黒く染めるということだけ。
そんなシオンは家族から疎外され使用人からは陰湿な嫌がらせを受ける。
何を言ったところで「闇魔法で操られた」「公爵様の気を引こうとしている」などと信じてもらえず、それならば誰にも心を開かないと決めた。
誰も信用はしない。自分だけの世界で生きる。
ワガママで自己中。家のお金を使い宝石やドレスを買い漁る。
それがーーーー。
転生して二度目の人生を歩む私の存在。
優秀で自慢の兄に殺された私は乙女ゲーム『公女はあきらめない』の嫌われ者の悪役令嬢、シオン・グレンジャーになっていた。
「え、待って。ここでも死ぬしかないの……?」
攻略対象者はシオンを嫌う兄二人と婚約者。
ほぼ無理ゲーなんですけど。
シオンの断罪は一年後の卒業式。
それまでに生き残る方法を考えなければいけないのに、よりによって関わりを持ちたくない兄と暮らすなんて最悪!!
前世の記憶もあり兄には不快感しかない。
しかもヒロインが長男であるクローラーを攻略したら私は殺される。
次男のラエルなら国外追放。
婚約者のヘリオンなら幽閉。
どれも一巻の終わりじゃん!!
私はヒロインの邪魔はしない。
一年後には自分から出ていくから、それまでは旅立つ準備をさせて。
貴方達の幸せは致しません!!
悪役令嬢に転生した私が目指すのは平凡で静かな人生。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
断罪シーンを自分の夢だと思った悪役令嬢はヒロインに成り代わるべく画策する。
メカ喜楽直人
恋愛
さっきまでやってた18禁乙女ゲームの断罪シーンを夢に見てるっぽい?
「アルテシア・シンクレア公爵令嬢、私はお前との婚約を破棄する。このまま修道院に向かい、これまで自分がやってきた行いを深く考え、その罪を贖う一生を終えるがいい!」
冷たい床に顔を押し付けられた屈辱と、両肩を押さえつけられた痛み。
そして、ちらりと顔を上げれば金髪碧眼のザ王子様なキンキラ衣装を身に着けたイケメンが、聞き覚えのある名前を呼んで、婚約破棄を告げているところだった。
自分が夢の中で悪役令嬢になっていることに気が付いた私は、逆ハーに成功したらしい愛され系ヒロインに対抗して自分がヒロインポジを奪い取るべく行動を開始した。
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
婚約破棄を突きつけているのは王子なのに、どうして泣いていらっしゃるのですか?
霜月零
恋愛
「ユーリット・フォングラハン伯爵令嬢。あなたとの婚約は破棄するっ」
煌びやかなパーティ会場で突如として王子は婚約者であるユーリットに婚約破棄を突きつける。
……けれど王子は自身が婚約破棄を突きつけたというのに、堪えきれずに泣き出した。
※他サイトにも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる