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第一章

修道院と魔法

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 修道院の朝は、早い。
 五時に起床。それから七時の朝食までは祈りと聖歌を神に捧げる。そして昼食を挟んで午前、午後と各仕事場で作業した後、夕食と晩の祈りを行なう。
 休日はないので最初、どこで令嬢教育を受けるのかと思った私だったが――晩の祈りの前に、くつろぎのひとときと呼ばれる時間がある。修道士・修道女達はここで余暇を楽しむそうだ。

「流石に、毎日という訳にはいかないが……まずは週に二回、二日おきくらいで教えようと思う」
「まあ、明日は勘弁してあげるわね。鐘が鳴るから、寝てられないと思うけどぉ……しっかり、早起きしなさいよ?」
「はい、ありがとうございます」

 修道院に来て、アントワーヌ様とビアンカ様にそう言われたけど――幸い、おまじないが効いたのか五時ちょうど、鐘が鳴る直前に目が覚めた。そして鐘の音と共に起き上がる。

「……寝起きの良い子だね」
「え、若さ? 若さなの?」

 私からすれば、お二人も鐘が鳴ってまもなく起き出したので十分、すごいと思うけど――先に起きたことは事実なので、私は笑って誤魔化すことにした。



 礼拝堂での神への祈りと黙祷は、座っていれば何とかなったので座って出来た。 
 心配だった、午前と午後の労働も――薬草畑の水やりや、摘み取り。あと、針仕事も何とかなった。
 大変だったのは、水汲みや家畜の世話だ。水を入れてしまうと桶を持ち上げられないし、敷いていて汚れた藁をかくフォークを持つのも難しい。
 修行としての労働なので、出来ることをすれば良い。そう言われはしたが、私としては前世の記憶の中で気になることがあったので、この機会に尋ねることにした。

「……魔法を使っては、駄目でしょうか?」

 この世界の人は――平民では珍しいが貴族は大抵、魔法が使える。そんな訳で、現世の私イザベルも魔法を使える。
 知った時は「ファンタジーだ」と思い、次いで自分の属性が『闇属性』だと知った時は「悪役かな?」と思った。しかし、屋敷にいる間に侍女のローラに聞くと少し違った。
 確かに光属性には癒しや浄化効果もあり、前世の私が物語で読んだような聖なるイメージがある。希少属性ということもあり、教会や王族に求められるという辺りが、ますます聖人や聖女な感じがする。
 けれど、それ以外の属性は――闇も含めて、使役するものだ。だから、現世の私もその気になれば影で物を運んだり、それこそ踏み台のように自分を持ち上げるように使える。これなら、労働の幅が広がるだろう。

(あ、でもそれこそ修行だから、魔法を使うとズルみたいになるのかな?)

 あと、平民では使えない者も多いので禁止されているかもしれない。そう思って、アントワーヌ様達に尋ねると――逆に、不思議そうに見返された。

「魔法を使う? 何か、嫌がらせをされたのかい?」
「そういう、短絡的な子でもなさそうだけど……あ、もしかして神兵とかになりたいの?」
「……えっ?」

 聞き返された内容の意味が解らず、私は思わず首を傾げた。
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