メテオライト

渡里あずま

文字の大きさ
上 下
8 / 43

切欠

しおりを挟む
遊星視点2



 前世でそんなことがあった遊星と、初めて友達になってくれたのはフェリスだった。
 褐色の髪と、表情同様にクルクルと動く同じ色の瞳。
 異世界・ティエーラにある特権階級・貴族の息子で、しかも爽やかな感じの美少年(暁やアルバより可愛い感じなので)である。
 その為、声をかけられた時は申し訳ないが「また!?」と思わず身構えてしまった。
 ……もっとも、フェリス一人ではなくその友達であるイグレットとミーネにも声をかけられ、更に彼らに近寄らないようにというプレッシャーを感じなかったので、徐々に緊張を解いたのだが。
 商人の娘で、他国へ行商へ向かう時の護身術感覚で魔法を学びに来たイグレットは、それでも平民というだけで下に見られ。ミーネもまた、獣人というだけで差別されている。結果、貴族なのに二人や平民で田舎者の遊星に話しかけるフェリスも浮いているのだ。

「このせ……帝都は、不思議だね。イグレットは美人で優しいし、ミーネも可愛くて頑張り屋さんなのに」

 アルバに挨拶した後にフェリス達と合流し、遊星はしみじみと呟いた。つい『この世界』と言いそうになったので内心、冷や汗をかく。

「帝都だからって訳じゃないと思うけど……ユーセイの田舎は、随分と平和でのどかなのね」
「……あり、がと」
「ユーセイ! 俺は、誉めてくれないのっ?」

 そんな遊星の焦りには気づかず、紺色の髪と瞳(アニメみたいなカラーリングは流石、異世界だと思う)のイグレットが苦笑し、ミーネが丸い頬を赤く染めながらお礼を言う。
 そしてスルーする形となったフェリスが、負けじとツッコミを入れてきて――見た目は整っているが、フェリスは小説などで出てきた『いじられキャラ』に属するんだろうか?
(『いじられキャラ』だと、もっと女の子大好きな気もするけど……そうなると、アルバは『最強主人公』? まあ、あれだけイケメンで強いんならそうだよなぁ)
 そこで、遊星はいつの間にかアルバのことを考えていたことに気がついた。

「まあ、帝都ここで色々と学ぶと良いわ。私も、ユーセイの無詠唱は勉強させて欲しいけど」
「そ、そう言われると恐縮しちゃうけど」

 イグレットの言葉には、笑って誤魔化すしかない。無詠唱で練習したのは、ティエーラでの呪文詠唱(アルバのようにピンポイントではなく、その前に『炎の精霊よ集え』だの『風よ荒れ狂え』だのがもれなくつく)が、遊星からすると厨二としか思えず悶え死ぬからだ。
(……また、だ)
 また、アルバのことを考えてしまった。
 とは言え、仕方がないとも思うのだ。
 ギルドで鍛えられて、最強の『全帝』だというアルバの実力を痛感した。そして『全帝』としてだけではなく正体を隠し、魔力を抑えていても首席を取り、クラスで一目置かれるアルバを遊星は素直にすごいと思ったのだ。元々の才能もだろうが、神様からチートを貰った遊星とは違い、本人の努力でそれだけの実力を身につけたのだから。
 更に、同性の遊星ですら見惚れてしまう美形である。
 元々が綺麗な顔をしているが、ああして笑うとまた格別だ――そこまで考えて、遊星は内心、ため息をついた。
(そんな相手に嫌われてる俺って、逆にすごいよな。敬語は使わなくていいって言われたけど、アルバは敬語のままだし……うん、嫌われてる。ガッツリ距離置かれてる)
 遊星がアルバに嫌われていることは、周囲には気づかれていない。
 唯一、知っているカリィはギルドでお世話になった時に気づかってくれたが――同じ年ではあるのだが、あのツンツンした態度を見ていると子供の癇癪のようだと思うのだ。
 ……そう思い、距離を取られ続けても挨拶を続けているのはカリィと昔、暁に言われたことがきっかけなのだけれど。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

カランコエの咲く所で

mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。 しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。 次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。 それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。 だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。 そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

雪を溶かすように

春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。 和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。 溺愛・甘々です。 *物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています

処理中です...