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発覚
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無人島に残っていたのは、アルバ達とアスセーナだけで。
流石に教師達はエンシェントドラゴンの出現については把握していたが、魔王関係ということもあり生徒達には明かしていない。その場に居合わせた遊星達も、口外しないよう口止めされた。表向きは『アルバが皇女を倒して優勝』となっている。
それでも流石に皇女に仕え、皇室魔法使いの息子であるリブロは魔法学園にいながらも異変に気づいたようだが――他ならぬアスセーナが、彼の追求を制した。そして、他の生徒達同様に真相を告げられないことに、クリスと共に傷ついた表情を浮かべた。
その為、アスセーナが皇宮に向かうのも『皇宮から呼び出しを受けて』『友人(この場合はアルバ)も連れてくるように言われた』からである。
平民も通う為、魔法学園は皇宮や貴族街ではなく、平民街にある。歩けない距離ではないが、まさか皇女であるアスセーナを徒歩で皇宮に行かせることはなく。結果として、アルバも一緒に馬車で皇宮に向かうことになった。
……それもまた『口実』だと気づいたのは、二人きりになった馬車の中でアスセーナが口を開いたからだった。
「アルバ。あなたは『全帝』ですね?」
質問の形こそ取っているが、それは確信で。『全帝』もまた、全属性の使い手と知られている。顔や名前などは明かしていないが、結びついても仕方ない。
「はい……と言えば、満足ですか?」
「ずるい答えですね」
ああ、でも、とそこで一旦、言葉を区切り。花がこぼれるように微笑むと、アスセーナは世間話のように言葉を続けた。
「そこで否定してしまうと、彼……遊星にも、疑惑の目が向きますものね」
※
「……何故、そこで遊星の名前が?」
「動じない辺り、憎らしいですね……どちらも、すぐにあなたが魔法を使っているのでほかの者達は気づいていないようですが。土属性の魔法と光属性の魔法を、彼は無詠唱で使っていました」
「…………」
死神が現れた時と、エンシェントドラゴンがブレスを放った時のことか。
表情は変えないまま、けれど黙ったアルバにアスセーナが笑みを深める。そしてその唇で、彼女は思いがけない言葉を紡いだ。
「私達としては、どちらでも良いのですよ。二人いるのなら、少なくとも一人はこの世界に生まれている……勇者様の願いが通じたのだと、解っただけで」
「……それは、どういう」
「かつて異世界から訪れた勇者様は、再び魔王が現れると知っていました……それ故にこの世界に残り、その血と魂を残すことを選ばれました。異世界からの召還ではなく、ティエーラで生まれ育った者が魔王と立ち向かえるようにと」
「っ!?」
幼い時に浮かんだ疑問。それから己の力について語られて息を呑んだアルバに、アスセーナは笑みを消しそのすみれ色の瞳で彼を見据えた。
流石に教師達はエンシェントドラゴンの出現については把握していたが、魔王関係ということもあり生徒達には明かしていない。その場に居合わせた遊星達も、口外しないよう口止めされた。表向きは『アルバが皇女を倒して優勝』となっている。
それでも流石に皇女に仕え、皇室魔法使いの息子であるリブロは魔法学園にいながらも異変に気づいたようだが――他ならぬアスセーナが、彼の追求を制した。そして、他の生徒達同様に真相を告げられないことに、クリスと共に傷ついた表情を浮かべた。
その為、アスセーナが皇宮に向かうのも『皇宮から呼び出しを受けて』『友人(この場合はアルバ)も連れてくるように言われた』からである。
平民も通う為、魔法学園は皇宮や貴族街ではなく、平民街にある。歩けない距離ではないが、まさか皇女であるアスセーナを徒歩で皇宮に行かせることはなく。結果として、アルバも一緒に馬車で皇宮に向かうことになった。
……それもまた『口実』だと気づいたのは、二人きりになった馬車の中でアスセーナが口を開いたからだった。
「アルバ。あなたは『全帝』ですね?」
質問の形こそ取っているが、それは確信で。『全帝』もまた、全属性の使い手と知られている。顔や名前などは明かしていないが、結びついても仕方ない。
「はい……と言えば、満足ですか?」
「ずるい答えですね」
ああ、でも、とそこで一旦、言葉を区切り。花がこぼれるように微笑むと、アスセーナは世間話のように言葉を続けた。
「そこで否定してしまうと、彼……遊星にも、疑惑の目が向きますものね」
※
「……何故、そこで遊星の名前が?」
「動じない辺り、憎らしいですね……どちらも、すぐにあなたが魔法を使っているのでほかの者達は気づいていないようですが。土属性の魔法と光属性の魔法を、彼は無詠唱で使っていました」
「…………」
死神が現れた時と、エンシェントドラゴンがブレスを放った時のことか。
表情は変えないまま、けれど黙ったアルバにアスセーナが笑みを深める。そしてその唇で、彼女は思いがけない言葉を紡いだ。
「私達としては、どちらでも良いのですよ。二人いるのなら、少なくとも一人はこの世界に生まれている……勇者様の願いが通じたのだと、解っただけで」
「……それは、どういう」
「かつて異世界から訪れた勇者様は、再び魔王が現れると知っていました……それ故にこの世界に残り、その血と魂を残すことを選ばれました。異世界からの召還ではなく、ティエーラで生まれ育った者が魔王と立ち向かえるようにと」
「っ!?」
幼い時に浮かんだ疑問。それから己の力について語られて息を呑んだアルバに、アスセーナは笑みを消しそのすみれ色の瞳で彼を見据えた。
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