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茶番
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王都から領地までは、馬車で二日ほどかかる。
とは言え、それは徹夜で馬車を走らせての距離ではない。獣や盗賊に遭遇しないよう宿や、親しい貴族の館に泊まりながら移動する。
そんな訳でアデライトも、リカルドが手配した貴族の館で一泊してから領地へと向かった。流石に『まだ』婚約者ではないので部屋は別だったが、食事などは共にした。継続して、リカルドに外堀を埋められていると思ったがエルマがいない為、着替えなど侍女の手を借りられるのはありがたかったので黙認した。
そして、翌日。
日が傾きかけた頃、アデライト達は父・ウィリアムのいる領主邸に到着した。先触れを送っていたので、リカルドが来たこと自体は問われなかったが――一休みし、話は夕食の後にという父の申し出をリカルドは却下した。
その為、ウィリアムは応接室にリカルドとアデライトを招いた。それから最低限の挨拶を済ませた後、リカルドが口を開いた。
「……国費横領の罪で、サブリナとの婚約を破棄した。アデライトに、婚約……いや、結婚を申し込みたい。それから新しい婚約者として、すぐにアデライト嬢を王宮に連れていきたい」
「殿下、それは……」
「淑女としては完璧だと、母上も認めている。しかし、王太子妃としての教育は必要で……通常は在学中に妃教育を終えるので、今の状況は異例なのだ。だから、一日でも早く妃教育を始めてほしい」
神妙な顔つきこそしているが、随分と無茶なことを押し付けてくる。
アデライトが誘導したとは言え、そもそも婚約破棄したのはリカルドだ。それなのに卒業して領地に戻ってきたアデライトを再び、しかも今度は嫁ぐことになるので領地には戻さないと言っているのである。
「……アデライト? お前は、どうしたい?」
ウィリアムからの問いかけに、アデライトは父からの愛情を感じた。
王族からの申し出は基本、断れない。それなのに、父はアデライトの意思を聞いてくれた。そしてもし、アデライトが拒めば、その意思も尊重してくれると信じられる。それは一回目と違い、巻き戻ってから王立学園に入学するまで、父と過ごしたからこそだった。
(ありがとう、お父様……ごめんなさい)
だからこそ、アデライトは心の中で父・ウィリアムに謝った。
それから父とリカルド、更に宙に浮いているノヴァーリスの視線が向けられているのを感じながら、アデライトは口を開いた。
「私は……殿下の申し出に、お応えしたいと思います」
税金を払わないように、そして王都の面々に復讐する為に、アデライトは王太子妃に――そして、ゆくゆくは王妃になる必要がある。
「アデライト嬢……」
「……解った。殿下、娘をよろしくお願いします」
「フフッ……アハハ……!」
随分と偉そうに言った割には、アデライトが了承したことが嬉しかったらしい。
リカルドが、感激したような声で名前を呼んだ。
アデライトの望みを知り、ウィリアムは娘の婚姻を認めた。
そして嘘をつかない、けれど恋ではないアデライトの言葉に、ノヴァーリスは声を上げて笑った。
とは言え、それは徹夜で馬車を走らせての距離ではない。獣や盗賊に遭遇しないよう宿や、親しい貴族の館に泊まりながら移動する。
そんな訳でアデライトも、リカルドが手配した貴族の館で一泊してから領地へと向かった。流石に『まだ』婚約者ではないので部屋は別だったが、食事などは共にした。継続して、リカルドに外堀を埋められていると思ったがエルマがいない為、着替えなど侍女の手を借りられるのはありがたかったので黙認した。
そして、翌日。
日が傾きかけた頃、アデライト達は父・ウィリアムのいる領主邸に到着した。先触れを送っていたので、リカルドが来たこと自体は問われなかったが――一休みし、話は夕食の後にという父の申し出をリカルドは却下した。
その為、ウィリアムは応接室にリカルドとアデライトを招いた。それから最低限の挨拶を済ませた後、リカルドが口を開いた。
「……国費横領の罪で、サブリナとの婚約を破棄した。アデライトに、婚約……いや、結婚を申し込みたい。それから新しい婚約者として、すぐにアデライト嬢を王宮に連れていきたい」
「殿下、それは……」
「淑女としては完璧だと、母上も認めている。しかし、王太子妃としての教育は必要で……通常は在学中に妃教育を終えるので、今の状況は異例なのだ。だから、一日でも早く妃教育を始めてほしい」
神妙な顔つきこそしているが、随分と無茶なことを押し付けてくる。
アデライトが誘導したとは言え、そもそも婚約破棄したのはリカルドだ。それなのに卒業して領地に戻ってきたアデライトを再び、しかも今度は嫁ぐことになるので領地には戻さないと言っているのである。
「……アデライト? お前は、どうしたい?」
ウィリアムからの問いかけに、アデライトは父からの愛情を感じた。
王族からの申し出は基本、断れない。それなのに、父はアデライトの意思を聞いてくれた。そしてもし、アデライトが拒めば、その意思も尊重してくれると信じられる。それは一回目と違い、巻き戻ってから王立学園に入学するまで、父と過ごしたからこそだった。
(ありがとう、お父様……ごめんなさい)
だからこそ、アデライトは心の中で父・ウィリアムに謝った。
それから父とリカルド、更に宙に浮いているノヴァーリスの視線が向けられているのを感じながら、アデライトは口を開いた。
「私は……殿下の申し出に、お応えしたいと思います」
税金を払わないように、そして王都の面々に復讐する為に、アデライトは王太子妃に――そして、ゆくゆくは王妃になる必要がある。
「アデライト嬢……」
「……解った。殿下、娘をよろしくお願いします」
「フフッ……アハハ……!」
随分と偉そうに言った割には、アデライトが了承したことが嬉しかったらしい。
リカルドが、感激したような声で名前を呼んだ。
アデライトの望みを知り、ウィリアムは娘の婚姻を認めた。
そして嘘をつかない、けれど恋ではないアデライトの言葉に、ノヴァーリスは声を上げて笑った。
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