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呼方
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こうしてアデライトは次の日から新入生歓迎会の手伝いと、領地から薔薇を取り寄せる準備を平行して行った。
まずは副会長が、それから生徒会長や他の生徒会役員がアデライトに雑用だけではなく、書類仕事も任せるようになった。そしてアデライトに手伝いではなく、正式に生徒会に入るように勧めてきた。
「クラス委員の仕事もありますし……ですが、今回のように人手が足りない時は殿下に伝えて下さい。私でよければ、手伝わせて頂きますね」
アデライトがそう答えるとリカルドは嬉しそうな顔をし、他の生徒会役員達はそんな彼を羨ましそうに眺めた。アデライトとしては、女生徒達から不用意な嫉妬を買いたくないのでリカルドを防波堤に使っただけだが、男性陣はそうは思わなかった。アデライトがリカルドを頼り、彼の言うことなら聞くと勘違いしてくれたようだ。
「だったら、来年はどうですか? クラス委員は、他の……それこそ、立候補したっていうサブリナ様に任せれば」
「……生憎、サブリナは妃教育で忙しい。べレス嬢の言う通り、何かあれば私から彼女に頼もう」
「申し訳ありません……そして殿下、ありがとうございます」
同じ一年の、別クラスの役員が(下位貴族やそれこそ平民でも、成績や人格等優れていれば役員入りする)諦めきれないようで言い募ったが、リカルドが断った。そんな彼らにお詫びとお礼を伝えると、不意に生徒会長が口を挟んできた。
「べレス嬢の意見は、尊重するが……ならばせめて呼び方は、改めてくれないか? 生徒会室ではリカルドを含めて、我々は名前で呼び合っているだろう? べレス嬢も、我々を家名ではなく名前で呼んでくれないか?」
「ですが……」
「君は単なる手伝いだというが、明日の新入生歓迎会が無事開催出来るのは、君のおかげでもある。仲間だと思っている君と、もう少し距離を縮めたいのだがどうだろうか?」
……巻き戻り、生徒会の仕事をして気づいたことがある。
それは労い一つなかった生徒会役員達も、こうしてやりとりしてみると決して悪人ではないということだ。おそらくだが一回目の時、リカルドはアデライトに代替え案を手伝わせていることを、そもそも伝えていなかったのだろう。
(とは言え、彼らは当日、花を飾る手配をした時も……サブリナが、私の手の甲に爪を立てた時も。あと、私と父が斬首される時も何もしなかった)
悪人でもないが、善人でもない。だから巻き戻った今でも、彼らも復讐対象であり、出来る限り利用するつもりだ。
「かしこまりました……それなら、私のことも名前で呼んで下さいね?」
「っ! ああ、アデライト嬢!」
「アデライト嬢、今後もよろしく頼む」
「今日までありがとうございます、アデライト嬢」
それ故、控えめに微笑みながらアデライトが頷くと、まずリカルドが――次いで生徒会長や副会長など、他の生徒会役員が口々にアデライトの名前を呼んでくるのに、内心で嗤いながらも微笑み続けた。
※
……そして、その夜。
眠っていたアデライトは、目を覚ました。
喉が乾いたので、用意しておいた水差しに手を伸ばす。そんな彼女に、宙を浮いていたノヴァーリスが声をかけた。
「暑さで、氷が溶け出している……明日、いや、もう今日か……楽しみだね」
「ええ」
その言葉に頷いて、アデライトは少し温くなった水を飲み干した。
※
「生徒会室では」という名前を呼ぶ条件を省きました。
まずは副会長が、それから生徒会長や他の生徒会役員がアデライトに雑用だけではなく、書類仕事も任せるようになった。そしてアデライトに手伝いではなく、正式に生徒会に入るように勧めてきた。
「クラス委員の仕事もありますし……ですが、今回のように人手が足りない時は殿下に伝えて下さい。私でよければ、手伝わせて頂きますね」
アデライトがそう答えるとリカルドは嬉しそうな顔をし、他の生徒会役員達はそんな彼を羨ましそうに眺めた。アデライトとしては、女生徒達から不用意な嫉妬を買いたくないのでリカルドを防波堤に使っただけだが、男性陣はそうは思わなかった。アデライトがリカルドを頼り、彼の言うことなら聞くと勘違いしてくれたようだ。
「だったら、来年はどうですか? クラス委員は、他の……それこそ、立候補したっていうサブリナ様に任せれば」
「……生憎、サブリナは妃教育で忙しい。べレス嬢の言う通り、何かあれば私から彼女に頼もう」
「申し訳ありません……そして殿下、ありがとうございます」
同じ一年の、別クラスの役員が(下位貴族やそれこそ平民でも、成績や人格等優れていれば役員入りする)諦めきれないようで言い募ったが、リカルドが断った。そんな彼らにお詫びとお礼を伝えると、不意に生徒会長が口を挟んできた。
「べレス嬢の意見は、尊重するが……ならばせめて呼び方は、改めてくれないか? 生徒会室ではリカルドを含めて、我々は名前で呼び合っているだろう? べレス嬢も、我々を家名ではなく名前で呼んでくれないか?」
「ですが……」
「君は単なる手伝いだというが、明日の新入生歓迎会が無事開催出来るのは、君のおかげでもある。仲間だと思っている君と、もう少し距離を縮めたいのだがどうだろうか?」
……巻き戻り、生徒会の仕事をして気づいたことがある。
それは労い一つなかった生徒会役員達も、こうしてやりとりしてみると決して悪人ではないということだ。おそらくだが一回目の時、リカルドはアデライトに代替え案を手伝わせていることを、そもそも伝えていなかったのだろう。
(とは言え、彼らは当日、花を飾る手配をした時も……サブリナが、私の手の甲に爪を立てた時も。あと、私と父が斬首される時も何もしなかった)
悪人でもないが、善人でもない。だから巻き戻った今でも、彼らも復讐対象であり、出来る限り利用するつもりだ。
「かしこまりました……それなら、私のことも名前で呼んで下さいね?」
「っ! ああ、アデライト嬢!」
「アデライト嬢、今後もよろしく頼む」
「今日までありがとうございます、アデライト嬢」
それ故、控えめに微笑みながらアデライトが頷くと、まずリカルドが――次いで生徒会長や副会長など、他の生徒会役員が口々にアデライトの名前を呼んでくるのに、内心で嗤いながらも微笑み続けた。
※
……そして、その夜。
眠っていたアデライトは、目を覚ました。
喉が乾いたので、用意しておいた水差しに手を伸ばす。そんな彼女に、宙を浮いていたノヴァーリスが声をかけた。
「暑さで、氷が溶け出している……明日、いや、もう今日か……楽しみだね」
「ええ」
その言葉に頷いて、アデライトは少し温くなった水を飲み干した。
※
「生徒会室では」という名前を呼ぶ条件を省きました。
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