悪女と呼ばれた聖女が、聖女と呼ばれた悪女になるまで

渡里あずま

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 入学式の新入生代表は、リカルドだった。前回同様、新入生代表の挨拶をそつなくこなしているのを見て、アデライトは思った。

(私には、当たりがきつかったけれど……基本、外面は良いし、勉強も出来るのよね)

 それ故、帝王学は入学する頃にはほぼ終わっていたが、王立学園に入学してまもなく生徒会に入ることになり、毎日でこそないが放課後は忙しそうだった。
 仕事は出来るが、だからと言って疲れない訳ではない――そんな日々の癒しが、サブリナで。クラス委員長になった彼女は、リカルドの手伝いという名目で放課後、よく行動を共にしていた。そして、そんな彼らを横目にアデライトは妃教育の為にと一人で帰宅していた。
 朝や先程の様子を見る限り、サブリナは一回目以上にリカルドにべったりである。だからこの後、クラスの自己紹介後のクラス委員決めでは、リカルドの傍にいる為に立候補するだろう。あの調子では、他の生徒からの推薦はなさそうだからだ。

(……とは言え、今回はどうかしら?)

 そんなことをアデライトが考えているうちに、リカルドの挨拶が終わった。最後、こちらを見て微笑まれた気がするが気づかなかったことにする。
 そして戻った教室での席は、リカルドとサブリナが一番後ろの席の真ん中で、アデライトは前から二列目の窓際の席だった。
 担任と同級生達も戻り、顔見知りでこそあるがそれぞれ自己紹介を終える。そしてクラス委員長を決めることになった時、アデライトの予想通りにサブリナが手を挙げた。

「先生! 私がっ」
「……サブリナ嬢、それはちょっと」
「え?」

 意気揚々と立候補したが、担任教師が困った顔になって言うのにサブリナが戸惑う。そんな彼女を窘めたのは、隣の席のリカルドだった。

「サブリナ、君には妃教育があるだろう?」
「それは……でも、リカルド様ぁ……」
「私の婚約者としては、何よりも最優先するべきだ」
「……でもぉ」
「それに、クラス委員長にはベレス侯爵令嬢を推薦したい」
「リカルド様!?」

 不満げなサブリナに構わず、アデライトを推薦したリカルドに、サブリナが悲鳴のような声を上げる。
 一方、推薦されたアデライトは驚いて軽く目を見張った。もっとも、驚きの理由は『いきなり、王子直々に指名された』からではない。

(サブリナが不機嫌になるのは、解っているでしょうに……ああ、でも一回目も私に対して酷かったから。婚約者に対しては基本、雑に扱うのかしら?)

 実は、一回目の時もリカルドは婚約者のアデライトではなく、サブリナをクラス委員長に指名して傍に置いている。
 それでもアデライトと違い、パーティーに付き合ったりしていたので、愛情はあると思っていた。それ故、サブリナが妃教育を理由に反対されるとは思ったが、リカルドに堂々と指名されるかは賭けだった。初恋の女性ミレーヌの面影の力、恐るべしである。

(あの聖女像には、帰りにもお礼の祈りを捧げなければ)

 アデライトがそんなことを考えているうちに、リカルドは同級生達に話しかけていた。
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