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リバース!2
魔法少女に必要なもの
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「……復讐じゃ、ありません」
「うん」
「ただ、悔しかっただけです」
「そっか」
淡々と言葉を紡ぐ永愛の顔を覗き込みながら、骸骨野郎があいづちを打つ。
俺からすれば悔しいのは理由で、やっぱり骸骨野郎の代わりに仕返ししようとしたと思うんだが――それを俺が言っちまうと、薮蛇になりそうなんで黙っていることにした。
けれど、そんな俺の気遣いを椿があっさり一蹴してしまう。
「おい、左衛。お前の手駒は、これで全部か?」
「……これ?」
「ちょっと、椿?」
椿の言葉に永愛の目が据わり、明珠の眉が不快げに寄せられる。
せっかく、上手くまとまると思ったんだが――とは言え、問いかけられた左衛はと言うと相変わらず笑顔のままだ。
「ああ、実験して解ったんだけど超能力の発現って、十八歳以上だとほぼ失敗するんだ。逆に子供、あと女性だと成功する……法則性が解れば、これ以上の実験は必要ないからね」
「なるほどな」
「って、ンなはっきり『ガキ並の馬鹿』を見る目で見なくても!?」
頷いた椿に、骸骨野郎がツッコミを入れる。
けれど、それを完全にスルーした状態で椿は言葉を続けた。
「それで、この『施設』は成り立つのか?」
「今回の実験自体、祖父の代から引き継いだものだけれど……今では、実験の副産物だった微弱電流の方が収入源になっているからね。この『施設』はむしろ、当主の道楽なんだ」
「ほう」
「それに、スポンサーが欲している『力』はそれこそ手駒としてだからね。自分が、異能を使いたい訳じゃない。黒城は、そこを少し間違えてしまったけれど……亮が『唯一』の成功例として働いてくれているから、問題ないよ」
笑顔で語られる裏話に、聞いていて背筋が寒くなった。
明珠や永愛の存在は上手く隠されているみたいだが、これ以上はこの話題を掘り下げない方がいいのでは――そう思っていたら、椿が思いがけないことを言った。
「気が変わった」
「えっ?」
「ああ、こいつを渡すつもりはない。ただ、その骸骨男やガキと闘って、こいつの魔法の使い方にも幅が出来た」
そこでニッと口の端を上げて、椿は言葉を続けた。
「魔法少女のレベルアップには、新たな『敵』が必要だ。お前にも、悪い話ではないだろう?」
「確かに、こっちも今のままだと亮の一人勝ちだからね」
世間話をするように、二人が笑顔で話を進める。
……えっ? それってもしかして、俺の魔法訓練にこいつらとのバトルが追加されるってことか?
「決まりだ。さしずめ、貴様は『火だるま男』というところか。これからよろしくな」
「ちょっ、それ、適当じゃね!?」
「私も、今度は負けませんから」
笑顔で上から発言を放つ椿と、少々、ズレたツッコミを入れる骸骨野郎。そして、その骸骨野郎の腕にしがみついて、永愛が俺へと宣戦布告してくる。
「楽しそう……あたしも、椿の学校に転校しようかなー」
「明珠には、セーラー服よりブレザーが似合いますよ」
「エヘヘ、そう?」
ガックリと肩を落とす俺の後ろでは、馬鹿ップルが馬鹿な会話を交わしていた。
※
『敵』の出現は、月に二回~三回ほど。いつ来るかとどちら(骸骨野郎と永愛)が来るかは、解ると訓練にならないので明かさない。ただ(骸骨野郎はともかく)俺達は学生なので、お互いの学校の試験の時は控えることになった。
……そして、俺と椿に会った安曇は「目的は果たしたから」と元の学校に戻った。
明らかに不自然なそれは、けれど周囲からは「椿に目をつけられたから」と納得されて――詮索されないのは良いが、俺としては幼なじみへの認識と将来が少々、心配になった。
「うん」
「ただ、悔しかっただけです」
「そっか」
淡々と言葉を紡ぐ永愛の顔を覗き込みながら、骸骨野郎があいづちを打つ。
俺からすれば悔しいのは理由で、やっぱり骸骨野郎の代わりに仕返ししようとしたと思うんだが――それを俺が言っちまうと、薮蛇になりそうなんで黙っていることにした。
けれど、そんな俺の気遣いを椿があっさり一蹴してしまう。
「おい、左衛。お前の手駒は、これで全部か?」
「……これ?」
「ちょっと、椿?」
椿の言葉に永愛の目が据わり、明珠の眉が不快げに寄せられる。
せっかく、上手くまとまると思ったんだが――とは言え、問いかけられた左衛はと言うと相変わらず笑顔のままだ。
「ああ、実験して解ったんだけど超能力の発現って、十八歳以上だとほぼ失敗するんだ。逆に子供、あと女性だと成功する……法則性が解れば、これ以上の実験は必要ないからね」
「なるほどな」
「って、ンなはっきり『ガキ並の馬鹿』を見る目で見なくても!?」
頷いた椿に、骸骨野郎がツッコミを入れる。
けれど、それを完全にスルーした状態で椿は言葉を続けた。
「それで、この『施設』は成り立つのか?」
「今回の実験自体、祖父の代から引き継いだものだけれど……今では、実験の副産物だった微弱電流の方が収入源になっているからね。この『施設』はむしろ、当主の道楽なんだ」
「ほう」
「それに、スポンサーが欲している『力』はそれこそ手駒としてだからね。自分が、異能を使いたい訳じゃない。黒城は、そこを少し間違えてしまったけれど……亮が『唯一』の成功例として働いてくれているから、問題ないよ」
笑顔で語られる裏話に、聞いていて背筋が寒くなった。
明珠や永愛の存在は上手く隠されているみたいだが、これ以上はこの話題を掘り下げない方がいいのでは――そう思っていたら、椿が思いがけないことを言った。
「気が変わった」
「えっ?」
「ああ、こいつを渡すつもりはない。ただ、その骸骨男やガキと闘って、こいつの魔法の使い方にも幅が出来た」
そこでニッと口の端を上げて、椿は言葉を続けた。
「魔法少女のレベルアップには、新たな『敵』が必要だ。お前にも、悪い話ではないだろう?」
「確かに、こっちも今のままだと亮の一人勝ちだからね」
世間話をするように、二人が笑顔で話を進める。
……えっ? それってもしかして、俺の魔法訓練にこいつらとのバトルが追加されるってことか?
「決まりだ。さしずめ、貴様は『火だるま男』というところか。これからよろしくな」
「ちょっ、それ、適当じゃね!?」
「私も、今度は負けませんから」
笑顔で上から発言を放つ椿と、少々、ズレたツッコミを入れる骸骨野郎。そして、その骸骨野郎の腕にしがみついて、永愛が俺へと宣戦布告してくる。
「楽しそう……あたしも、椿の学校に転校しようかなー」
「明珠には、セーラー服よりブレザーが似合いますよ」
「エヘヘ、そう?」
ガックリと肩を落とす俺の後ろでは、馬鹿ップルが馬鹿な会話を交わしていた。
※
『敵』の出現は、月に二回~三回ほど。いつ来るかとどちら(骸骨野郎と永愛)が来るかは、解ると訓練にならないので明かさない。ただ(骸骨野郎はともかく)俺達は学生なので、お互いの学校の試験の時は控えることになった。
……そして、俺と椿に会った安曇は「目的は果たしたから」と元の学校に戻った。
明らかに不自然なそれは、けれど周囲からは「椿に目をつけられたから」と納得されて――詮索されないのは良いが、俺としては幼なじみへの認識と将来が少々、心配になった。
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