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リバース!2
気持ち、交差1
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俺達は路地裏から、近くの小さな児童公園へと移動した。そして俺を挟んで三人でベンチに腰かけ、椿の話を聞いた。
……椿の父親が、婿養子だと言うことは知っていた。
だがその実家がなかなかの名家で、その伝手で亮――いや、やっぱり骸骨野郎で良いか――が話していた『施設』にいたことと、そこで安曇と知り合ったことは初めて聞いた。
椿が『施設』に行ったきっかけは、神童と称されるくらいのずば抜けた頭脳だったらしい。
そんな風に、優秀な人材を集めていた『施設』で、さっきの骸骨野郎みたいな超能力者が作られている。それなら以前、椿が話した『本当にあった怖い話(超能力の発現方法)』は事実で、あの骸骨野郎もそうやって『作られた』ってことなんだろう。
あと、椿の話を聞いて気になったことがある。
「お前は、超能力者じゃないのか?」
昔から心を読まれているような言動があったが、もしかして『ような』ではなく本当に読まれていたんだろうか?
そう思って尋ねた俺に、椿が何故か眉をしかめた。えっ、何だよその反応。
「その可能性があるのに、直球でぶつかってくるか」
「えっ? だって俺も、魔法使えるし」
まあ、心を読まれるのは抵抗出来ないが――そもそも、ポモナにも読まれているから仕方ないと思えるし。物理的な能力(骸骨野郎みたいに炎を使ったり、まだ会っていない超能力者みたいに水を使ったり)には魔法で対抗出来る。
そう思って言うと、椿はやれやれと言うようにため息をついた。
「……なるほどな。違う。俺のは、あくまでも相手を観察した結果だ。超能力で心が読めるなら、そもそもさっきの馬鹿に『施設』のことは話させていない」
「何でだ?」
「お前を『施設』に連れて行く気がないからだ。左衛とは、俺が話をつける」
「ちょっ、何でそうなるんだよ……一人でなんて、行かせられるか。お前が超能力者じゃないなら、尚更だ」
キッパリと言い切られたのに、俺は焦った。魔法が使える俺でも手こずったのに、魔法も超能力も使えない椿が単身で乗り込むなんて無謀としか思えない。
だが、そんな俺をキッと睨んで椿が口を開く。
「お前こそ、さっきの話を聞いていたのか? 左衛の狙いは、お前の魔法だ。それなのに、お前がノコノコ乗り込んでどうする」
「それは……だけど、危ないのはお前も」
「……アンリさん。椿さんの話にも、一理あると思いますよ?」
椿の言い分は解ったが、だからと言って納得なんて出来ない。
そう思った俺を止めたのは、今まで黙って成り行きを見守ってくれていたポモナだった。
「アンリさんは、椿さんも危ないって言いますけど……椿さんは、相手の方々が欲しがっている『力』は持っていません。話し合いをするのなら、確かに椿さんが適任です」
……椿の父親が、婿養子だと言うことは知っていた。
だがその実家がなかなかの名家で、その伝手で亮――いや、やっぱり骸骨野郎で良いか――が話していた『施設』にいたことと、そこで安曇と知り合ったことは初めて聞いた。
椿が『施設』に行ったきっかけは、神童と称されるくらいのずば抜けた頭脳だったらしい。
そんな風に、優秀な人材を集めていた『施設』で、さっきの骸骨野郎みたいな超能力者が作られている。それなら以前、椿が話した『本当にあった怖い話(超能力の発現方法)』は事実で、あの骸骨野郎もそうやって『作られた』ってことなんだろう。
あと、椿の話を聞いて気になったことがある。
「お前は、超能力者じゃないのか?」
昔から心を読まれているような言動があったが、もしかして『ような』ではなく本当に読まれていたんだろうか?
そう思って尋ねた俺に、椿が何故か眉をしかめた。えっ、何だよその反応。
「その可能性があるのに、直球でぶつかってくるか」
「えっ? だって俺も、魔法使えるし」
まあ、心を読まれるのは抵抗出来ないが――そもそも、ポモナにも読まれているから仕方ないと思えるし。物理的な能力(骸骨野郎みたいに炎を使ったり、まだ会っていない超能力者みたいに水を使ったり)には魔法で対抗出来る。
そう思って言うと、椿はやれやれと言うようにため息をついた。
「……なるほどな。違う。俺のは、あくまでも相手を観察した結果だ。超能力で心が読めるなら、そもそもさっきの馬鹿に『施設』のことは話させていない」
「何でだ?」
「お前を『施設』に連れて行く気がないからだ。左衛とは、俺が話をつける」
「ちょっ、何でそうなるんだよ……一人でなんて、行かせられるか。お前が超能力者じゃないなら、尚更だ」
キッパリと言い切られたのに、俺は焦った。魔法が使える俺でも手こずったのに、魔法も超能力も使えない椿が単身で乗り込むなんて無謀としか思えない。
だが、そんな俺をキッと睨んで椿が口を開く。
「お前こそ、さっきの話を聞いていたのか? 左衛の狙いは、お前の魔法だ。それなのに、お前がノコノコ乗り込んでどうする」
「それは……だけど、危ないのはお前も」
「……アンリさん。椿さんの話にも、一理あると思いますよ?」
椿の言い分は解ったが、だからと言って納得なんて出来ない。
そう思った俺を止めたのは、今まで黙って成り行きを見守ってくれていたポモナだった。
「アンリさんは、椿さんも危ないって言いますけど……椿さんは、相手の方々が欲しがっている『力』は持っていません。話し合いをするのなら、確かに椿さんが適任です」
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