53 / 73
リバース!2
勝っても負けても2
しおりを挟む
「そこのお嬢ちゃん! オレにはちゃんと、亮って名前が……っ」
「あ、そう言う情報は別にいらない」
「酷っ!」
「これ以上、無駄口を叩くと物理的に黙らせるぞ」
相手に名乗られると、こっちも名乗らなくちゃいけないからな。そう思って俺が制すると、漫才のようなやり取りに焦れたのか目を据わらせた椿が口を挟んできた。
まあ、話は聞けていないけど最悪、ポモナに聞くのもありか――そんな俺の考えが顔に出たのか、骸骨野郎が慌てたように口を開く。
「春頃、あんたにちょっかいかけてきたお嬢ちゃんがいただろ? 彼女のスポンサーと俺の『ご主人サマ』は、同じだ」
「……って、ことは」
「そ、目的はあんたのその魔法って訳……とは言え、オレらは別に異世界とやらに興味はないけどな」
「えっ?」
あっさりと言う、骸骨野郎――亮の顔を、俺は思わず見返した。
(どうしてだ? 確かに異世界への入り口は閉じたし、そもそも異世界に行くのにリスクはあるが)
それでも、黒城達がテルス人を連れて来ていたんだから全く不可能って訳じゃない。
それこそ、どこまで知っているか解らないが、ポモナに新しい入り口を開けさせるって方法もあるにはあるんだ。
目の前にこうして超能力者がいるから、あえてリスクは侵さないって考え方かもしれないが――それならそれで、俺からは手を引いて貰えないだろうか?
「……随分と、よく喋るな」
そんなことを考えていると、椿が低い声でそう言った。元々、無愛想ではあるがここまで不信感丸出しなのも珍しい。
(って、そうか。こいつが、本当のことを言ってるとも限らないんだよな)
全くのデタラメだとすれば、簡単に白状したのも頷ける。そう思ったのが顔に出たのか、亮は疑問を振り払うように両手を上げた。
「嘘じゃないって! 元々、勝っても負けてもオレは話すことになってたしっ」
「何だと?」
「だから、オレは案内役なんだって! 勝ったらあんたらを連れてって話したし、負けてもこうして話してあんたらに来て貰うつもりだったのっ」
「……どこにだ?」
いつの間にか、亮は俺とじゃなく椿と話していた。そして、尋ねた椿にニヤリと笑うと。
「『施設』だよ。昔、あんたがいて、オレらが『作られた』場所だ」
亮はそう言って、立ち上がると――最初に会った時同様、笑いながら走り去った。
「どう言うことだ?」
……追いかけなかったのは、今の話からするとまず椿に話を聞くべきだと思ったからで。
椿も、同感だったんだろう。一つ息をつくと昔、俺と会う前にいた『施設』の話を聞かせてくれた。
「あ、そう言う情報は別にいらない」
「酷っ!」
「これ以上、無駄口を叩くと物理的に黙らせるぞ」
相手に名乗られると、こっちも名乗らなくちゃいけないからな。そう思って俺が制すると、漫才のようなやり取りに焦れたのか目を据わらせた椿が口を挟んできた。
まあ、話は聞けていないけど最悪、ポモナに聞くのもありか――そんな俺の考えが顔に出たのか、骸骨野郎が慌てたように口を開く。
「春頃、あんたにちょっかいかけてきたお嬢ちゃんがいただろ? 彼女のスポンサーと俺の『ご主人サマ』は、同じだ」
「……って、ことは」
「そ、目的はあんたのその魔法って訳……とは言え、オレらは別に異世界とやらに興味はないけどな」
「えっ?」
あっさりと言う、骸骨野郎――亮の顔を、俺は思わず見返した。
(どうしてだ? 確かに異世界への入り口は閉じたし、そもそも異世界に行くのにリスクはあるが)
それでも、黒城達がテルス人を連れて来ていたんだから全く不可能って訳じゃない。
それこそ、どこまで知っているか解らないが、ポモナに新しい入り口を開けさせるって方法もあるにはあるんだ。
目の前にこうして超能力者がいるから、あえてリスクは侵さないって考え方かもしれないが――それならそれで、俺からは手を引いて貰えないだろうか?
「……随分と、よく喋るな」
そんなことを考えていると、椿が低い声でそう言った。元々、無愛想ではあるがここまで不信感丸出しなのも珍しい。
(って、そうか。こいつが、本当のことを言ってるとも限らないんだよな)
全くのデタラメだとすれば、簡単に白状したのも頷ける。そう思ったのが顔に出たのか、亮は疑問を振り払うように両手を上げた。
「嘘じゃないって! 元々、勝っても負けてもオレは話すことになってたしっ」
「何だと?」
「だから、オレは案内役なんだって! 勝ったらあんたらを連れてって話したし、負けてもこうして話してあんたらに来て貰うつもりだったのっ」
「……どこにだ?」
いつの間にか、亮は俺とじゃなく椿と話していた。そして、尋ねた椿にニヤリと笑うと。
「『施設』だよ。昔、あんたがいて、オレらが『作られた』場所だ」
亮はそう言って、立ち上がると――最初に会った時同様、笑いながら走り去った。
「どう言うことだ?」
……追いかけなかったのは、今の話からするとまず椿に話を聞くべきだと思ったからで。
椿も、同感だったんだろう。一つ息をつくと昔、俺と会う前にいた『施設』の話を聞かせてくれた。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる