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リバース!1
譲れないもの1
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最初は黒城がくり出してくる魔法を避けてたが、すぐに俺の動きは封じられた。
「ギャッ!」
「ぐぁっ!」
俺が避けた魔法で、黒城の仲間達がやられてくからだ――って、少しは遠慮しろよっ!
そう思って睨みつけた俺に、黒城が小首を傾げる。
「まだ、他のことを考える余裕があるの?」
そう言うと、黒城はスッと手を上げた。
「炎の牙」
そして、呪文を唱えるとうねる炎の魔法を放ち、天井を破壊しやがった!
「……何しやがるっ」
一瞬のことだった。他の連中――白衣の男達だけじゃなく、椿や義父さんも崩れ落ちてきた瓦礫に生き埋めになっちまった。
「問題ないわ。この研究の為に、お金を惜しまない人間はごまんといるもの」
「建物のことじゃねぇよ! お前の仲間も……椿も義父さんもっ」
「だって、こうすればあなた、本気になるでしょう?」
そう言って口の端を上げる黒城に、俺はグッと拳を握った。
(……こうなったのは、俺のせいかよ)
俺の為に動いてくれた椿や、せっかく会えた義父さんを失ってしまったのも。せっかく力があるのに、躊躇した俺のせい……だとしたら。
「……戦えば、気が済むのかよ」
悲しいけど、悔しいけど、泣いてる暇はない。目の前のこいつを野放しにしたら、地球もテルスも滅茶苦茶にされちまう。
だから、俺は黒城を睨みつけて握った拳を突き出した。
そうして、風の魔法をくり出したが――それは、無造作に手を振った黒城によってあっさり払われちまった。
「何よ、こんなもの? それとも、自分の力をキチンと使いこなせないの?」
つまらなそうに言って、黒城が赤い唇を尖らせる。
「風の刃」
「……くっ!」
そしてお返しとばかりに、俺に風の魔法をくり出してきて――同等、あるいはそれ以上じゃなければ無効化される筈のそれは、俺の頬や腕、腕や足を切り裂いた!
(何だよ……馬鹿宮藤に偉そうなこと言っといて、俺も同じじゃないか)
切られたところが、痛い。
だが、何より椿達の仇を討つことどころか、まるで勝てない自分がイタい。
「安心して。命までは、奪わないから……死んだら、魔力を奪えないもの」
そう言って笑う黒城の前で、俺は痛みより無力感からたまらず膝をついた。
「豊かな世界。夢のような場所……ようやく、手に入るのね」
うっとりと呟く黒城の声。それを聞くしかない俺の視界の隅に、あるものが映る。
(MS……さっき、椿が飲まされそうになったのか?)
飲めば今以上の魔力が手に入ることは、目の前の黒城が証明している。
(あれを飲めば力が手に入る?)
切り裂かれ、ジクジクと痛む腕を伸ばしたら――あっけないくらい簡単に、床に転がっていたMSを掴むことが出来た。
MSを飲もうとしている俺を、黒城は止めなかった。もう俺なんてどうでも良いのか、MSを飲んで更に強くなった力が欲しいのか。
……そんな俺を止めたのは突然、背後で起こった轟音だった。
「やっと出られたな」
「随分と偉そうだな、坊主」
振り向いた先、天井からの瓦礫を下から弾き飛ばして出てきた影。
椿と魔法を使った義父さん、それから同じく無事だった白衣の連中を見て俺は思わず固まった。それは、黒城も同様で――その隙を突いて、義父さんが呪文を唱える。
「雷の矢」
刹那、閃光が走りお返しとばかりに天井を崩して、黒城を生き埋めにした。
(やった……)
突然の展開に、MSを手にしたまま呆然とする俺にズカズカと椿が近づいてくる。
そして、右手を上げたかと思うと――いきなり、俺の脳天に手刀を叩き込んできた!
「ギャッ!」
「ぐぁっ!」
俺が避けた魔法で、黒城の仲間達がやられてくからだ――って、少しは遠慮しろよっ!
そう思って睨みつけた俺に、黒城が小首を傾げる。
「まだ、他のことを考える余裕があるの?」
そう言うと、黒城はスッと手を上げた。
「炎の牙」
そして、呪文を唱えるとうねる炎の魔法を放ち、天井を破壊しやがった!
「……何しやがるっ」
一瞬のことだった。他の連中――白衣の男達だけじゃなく、椿や義父さんも崩れ落ちてきた瓦礫に生き埋めになっちまった。
「問題ないわ。この研究の為に、お金を惜しまない人間はごまんといるもの」
「建物のことじゃねぇよ! お前の仲間も……椿も義父さんもっ」
「だって、こうすればあなた、本気になるでしょう?」
そう言って口の端を上げる黒城に、俺はグッと拳を握った。
(……こうなったのは、俺のせいかよ)
俺の為に動いてくれた椿や、せっかく会えた義父さんを失ってしまったのも。せっかく力があるのに、躊躇した俺のせい……だとしたら。
「……戦えば、気が済むのかよ」
悲しいけど、悔しいけど、泣いてる暇はない。目の前のこいつを野放しにしたら、地球もテルスも滅茶苦茶にされちまう。
だから、俺は黒城を睨みつけて握った拳を突き出した。
そうして、風の魔法をくり出したが――それは、無造作に手を振った黒城によってあっさり払われちまった。
「何よ、こんなもの? それとも、自分の力をキチンと使いこなせないの?」
つまらなそうに言って、黒城が赤い唇を尖らせる。
「風の刃」
「……くっ!」
そしてお返しとばかりに、俺に風の魔法をくり出してきて――同等、あるいはそれ以上じゃなければ無効化される筈のそれは、俺の頬や腕、腕や足を切り裂いた!
(何だよ……馬鹿宮藤に偉そうなこと言っといて、俺も同じじゃないか)
切られたところが、痛い。
だが、何より椿達の仇を討つことどころか、まるで勝てない自分がイタい。
「安心して。命までは、奪わないから……死んだら、魔力を奪えないもの」
そう言って笑う黒城の前で、俺は痛みより無力感からたまらず膝をついた。
「豊かな世界。夢のような場所……ようやく、手に入るのね」
うっとりと呟く黒城の声。それを聞くしかない俺の視界の隅に、あるものが映る。
(MS……さっき、椿が飲まされそうになったのか?)
飲めば今以上の魔力が手に入ることは、目の前の黒城が証明している。
(あれを飲めば力が手に入る?)
切り裂かれ、ジクジクと痛む腕を伸ばしたら――あっけないくらい簡単に、床に転がっていたMSを掴むことが出来た。
MSを飲もうとしている俺を、黒城は止めなかった。もう俺なんてどうでも良いのか、MSを飲んで更に強くなった力が欲しいのか。
……そんな俺を止めたのは突然、背後で起こった轟音だった。
「やっと出られたな」
「随分と偉そうだな、坊主」
振り向いた先、天井からの瓦礫を下から弾き飛ばして出てきた影。
椿と魔法を使った義父さん、それから同じく無事だった白衣の連中を見て俺は思わず固まった。それは、黒城も同様で――その隙を突いて、義父さんが呪文を唱える。
「雷の矢」
刹那、閃光が走りお返しとばかりに天井を崩して、黒城を生き埋めにした。
(やった……)
突然の展開に、MSを手にしたまま呆然とする俺にズカズカと椿が近づいてくる。
そして、右手を上げたかと思うと――いきなり、俺の脳天に手刀を叩き込んできた!
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