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??-①話 夏休みの語らい
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新学期が始まる直前の、八月最終週。
お昼前に学園に登校して生徒会長室へやってきた私は、新学期の仕事を前倒して始めていた。
今日は特に清歌と会う約束はしていないので一緒ではないけれど、学校に行くことは伝えてあるので、きっと清歌なら後で何らかの理由を付けて来るでしょう。
そんな事を考えながら書類に目を通し、マグカップに入っている冷めかけの紅茶を一口啜る。
ガララッ!!
「フッ、黒の邪神・ユースティティア、今此処にぃ……って、誰もいないのだ?」
扉越しの生徒会室に、お転婆な来客があったようだ。
退屈してきていた私はちょっと楽しくなって微笑みながら、引き出しの中からバサッと黒地のマントを翻し、勢いよく生徒会室に続く扉を開け放った。
バァン!!
「私の聖域に紛れ込んだ邪神よ、私の前に跪くか身を滅ぼしなさい!」
「ひっ!? な、なんだ姫奏さんいたんだ……。……ふ~ははは! 遂に姿を現したか女神! まさか我に勝てると思うまい?」
「紅茶飲む?」
「わーい頂きます~!」
「勝ったわね」
「はぅあっ! しまった……!」
突然始まり、あっけなく終わる寸劇。
やって来たのは、黒の邪神・ユースティティアこと櫻井莉那。
風紀委員長も務める一学年下の可愛い後輩。莉那もお嬢様であり、はじめ知り合ったのは学園ではなく社交会。その方面では私達の家同士はライバルという事になるのかも知れないのだけれど、私たちは全くそんな事はない。
彼女の様々な面を観察していると面白いし、お話するにも楽しい。良い友人だと思う。
そんな莉那に、備え付けのティーポットを使って紅茶を淹れてあげる。
「姫奏さんの紅茶、とっても美味しいから好きなんですよ」
「あら? ありがとう。それよりもいいの? 口調が素になってるわよ」
「今は姫奏さんしかいないでしょう? なので問題ありませんよ」
「そう……。よかったわ、少しは落ち着いてきたね」
そんな会話をしながら、莉那を会長室へ通す。学習椅子よりソファに座った方が楽だし、もし誰か来ても話を聞かれる事は無いだろう。
特に聞かれて嫌な思いをする話をするつもりは無いのだけれど、念のためだ。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。姫奏さん」
「今日はどうしたの? 夏休み中に学校に来るなんて」
問いかけると、チラリと窓を背にした私の机に目を向けて苦笑いする。
「姫奏さんと同じで仕事ですよ。星花祭の準備で忙しいんです」
「あら、そうだったの。精が出るわね……」
「姫奏さんこそ。あ、少しお手伝いしましょうか? わたし、終わった物を届けに来たんですよ」
そう言って隣のソファに置いていた鞄から、ファイルに入った書類を取り出して渡してくる。
私はチラリと目を通すとすぐにもとに戻して机に置く。
「あれ、いいんですか……?」
「莉那、普段はあんな風に振る舞ってるけれど、根は真面目でしょう? 莉那なら大丈夫よ」
「姫奏さん……」
「それよりも、少しお話していかない? 仕事が退屈で仕方が無かったの」
その問いかけに、にっこり微笑んで莉那は応じてくれた。
その後、お昼すぎに清歌がやって来るまでお話は続いた。昔ばかしとか、学園のこととか、色々な事を話した。
丁度区切りのいい話のタイミングで清歌が来たので、まだお昼を食べていなかった私達は食堂へ、莉那は家で食べるそうなのでそこでお開きになった。
お昼前に学園に登校して生徒会長室へやってきた私は、新学期の仕事を前倒して始めていた。
今日は特に清歌と会う約束はしていないので一緒ではないけれど、学校に行くことは伝えてあるので、きっと清歌なら後で何らかの理由を付けて来るでしょう。
そんな事を考えながら書類に目を通し、マグカップに入っている冷めかけの紅茶を一口啜る。
ガララッ!!
「フッ、黒の邪神・ユースティティア、今此処にぃ……って、誰もいないのだ?」
扉越しの生徒会室に、お転婆な来客があったようだ。
退屈してきていた私はちょっと楽しくなって微笑みながら、引き出しの中からバサッと黒地のマントを翻し、勢いよく生徒会室に続く扉を開け放った。
バァン!!
「私の聖域に紛れ込んだ邪神よ、私の前に跪くか身を滅ぼしなさい!」
「ひっ!? な、なんだ姫奏さんいたんだ……。……ふ~ははは! 遂に姿を現したか女神! まさか我に勝てると思うまい?」
「紅茶飲む?」
「わーい頂きます~!」
「勝ったわね」
「はぅあっ! しまった……!」
突然始まり、あっけなく終わる寸劇。
やって来たのは、黒の邪神・ユースティティアこと櫻井莉那。
風紀委員長も務める一学年下の可愛い後輩。莉那もお嬢様であり、はじめ知り合ったのは学園ではなく社交会。その方面では私達の家同士はライバルという事になるのかも知れないのだけれど、私たちは全くそんな事はない。
彼女の様々な面を観察していると面白いし、お話するにも楽しい。良い友人だと思う。
そんな莉那に、備え付けのティーポットを使って紅茶を淹れてあげる。
「姫奏さんの紅茶、とっても美味しいから好きなんですよ」
「あら? ありがとう。それよりもいいの? 口調が素になってるわよ」
「今は姫奏さんしかいないでしょう? なので問題ありませんよ」
「そう……。よかったわ、少しは落ち着いてきたね」
そんな会話をしながら、莉那を会長室へ通す。学習椅子よりソファに座った方が楽だし、もし誰か来ても話を聞かれる事は無いだろう。
特に聞かれて嫌な思いをする話をするつもりは無いのだけれど、念のためだ。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。姫奏さん」
「今日はどうしたの? 夏休み中に学校に来るなんて」
問いかけると、チラリと窓を背にした私の机に目を向けて苦笑いする。
「姫奏さんと同じで仕事ですよ。星花祭の準備で忙しいんです」
「あら、そうだったの。精が出るわね……」
「姫奏さんこそ。あ、少しお手伝いしましょうか? わたし、終わった物を届けに来たんですよ」
そう言って隣のソファに置いていた鞄から、ファイルに入った書類を取り出して渡してくる。
私はチラリと目を通すとすぐにもとに戻して机に置く。
「あれ、いいんですか……?」
「莉那、普段はあんな風に振る舞ってるけれど、根は真面目でしょう? 莉那なら大丈夫よ」
「姫奏さん……」
「それよりも、少しお話していかない? 仕事が退屈で仕方が無かったの」
その問いかけに、にっこり微笑んで莉那は応じてくれた。
その後、お昼すぎに清歌がやって来るまでお話は続いた。昔ばかしとか、学園のこととか、色々な事を話した。
丁度区切りのいい話のタイミングで清歌が来たので、まだお昼を食べていなかった私達は食堂へ、莉那は家で食べるそうなのでそこでお開きになった。
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