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先祖返りの君と普通の僕
荒唐無稽 1
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「まず、高原一郎は作られた人格だ。
ある日、君のいう『その男』に連れ去られた後、機関…この国の魔術師が所属する組織、の事だが…機関の持っている施設で「特殊な措置」を受けた後、朱紅は大陸の魔術師に攫われた」
「『特殊な措置』?」
「特殊な措置とは、優秀な魔石を持つ人間を作るための措置だ。
魔力の強い魔導師は、女は卵子を、男は精子を保存することが義務付けられている。それで受精卵を作り、代理母を雇い、子どもを作る。
実際に私の遺伝子を受け継ぐ者の中には、お前と歳が変わらないものもいる」
「は?」
「私の場合は排卵誘発剤を使い、10代から20代までの間に何度も手術を受けて、すでに100は卵子を凍結させてあるし、あいつが兄だと思っている黄陽は…まあ、それなりに…自分で出来たからな、あいつは。
だが、朱紅はなかなか精通が来なくて、16歳になるまで何も出なかったらしい。
機関は随分と焦ったようで、14歳のころから精通を促すために…まあ、簡単にいうと性的な事を様々に施されてきた」
「…クソみてえな話、だな」
「全くだ。
16歳でようやく精通を迎えた頃にはもう性欲など残っていなかったようで、だから無理矢理に精子を搾り取ることになったんだ。
薬を使えばまだ楽だったろうが、朱紅の体液は魔素が特に濃い。あいつの血液を使った魔素補給剤は最高級品だ。血液に不純物を混ぜると質が下がるかもしれないだろう?
だから…薬無しで、強制的に勃起させて射精に至らせる。その技術者がそのお前の言う『男』だ」
「…ただのレイプ野郎じゃなかったってことか」
「そうだ、それを仕事としている専門の人間だ」
何なんだそれ。
無茶苦茶な話じゃないか…。
「機関の朱紅に対する執着も仕方の無い部分がある。なんたって『世界一の魔力保持者』だからな」
「…世界一!?」
「そうだ、あいつの体内には3つも魔石がある。そのどれもが1つあればそこそこの魔導師になれるほどの大きさだ。はっきり言えば突然変異の化物だ。精通が遅れたのもそれが原因だろうと言われている。人の姿をした魔獣なんじゃないかという研究者もいたくらいだ…朱紅があれほど本を読むのは、人間を研究して擬態するためじゃないかってな」
「…そんな訳、ねえ。あんな優しい人が」
「だがあながち間違ってもいないと思えることもある。
朱紅は、かつて食べ物を消化するのにも魔力を使っていた。栄養補給という生命維持に関わることを魔力に頼って生活していたんだ。
あいつの食生活を知っているだろう、簡単に消化できるものばかり食べている…あれはその名残だ。
なるべく魔力を温存させるために、機関は彼から食事の楽しみを取り上げ、消化にエネルギーを使わないものを食べるように指導した。
それだけではない、必要な処置だといって、彼は…我々「多禍原」家の者は、人間なら当然持ちたいと願う「生きる楽しみ」を奪われてきた。
国民の税金で生活している以上、全てを国民の為に捧げろと毎日言い聞かせられてな。
我々には少なくない給料が出ていると言うが、金額も知らないし使い道も無い…特に我々は、現状に不満を抱かないよう厳重な管理の元で生活してきた。
外の生活を知る手段は本だけだ。
魔獣狩りで街に出たときに拾ったのを大事に回し読みして、私達は外の世界に憧れた。
そして大災害の時、黄陽が機関に約束させた。
3人で300体倒す代わりに、私達を外に出せと。
だが黄陽は死に、約束は宙に浮いた」
ある日、君のいう『その男』に連れ去られた後、機関…この国の魔術師が所属する組織、の事だが…機関の持っている施設で「特殊な措置」を受けた後、朱紅は大陸の魔術師に攫われた」
「『特殊な措置』?」
「特殊な措置とは、優秀な魔石を持つ人間を作るための措置だ。
魔力の強い魔導師は、女は卵子を、男は精子を保存することが義務付けられている。それで受精卵を作り、代理母を雇い、子どもを作る。
実際に私の遺伝子を受け継ぐ者の中には、お前と歳が変わらないものもいる」
「は?」
「私の場合は排卵誘発剤を使い、10代から20代までの間に何度も手術を受けて、すでに100は卵子を凍結させてあるし、あいつが兄だと思っている黄陽は…まあ、それなりに…自分で出来たからな、あいつは。
だが、朱紅はなかなか精通が来なくて、16歳になるまで何も出なかったらしい。
機関は随分と焦ったようで、14歳のころから精通を促すために…まあ、簡単にいうと性的な事を様々に施されてきた」
「…クソみてえな話、だな」
「全くだ。
16歳でようやく精通を迎えた頃にはもう性欲など残っていなかったようで、だから無理矢理に精子を搾り取ることになったんだ。
薬を使えばまだ楽だったろうが、朱紅の体液は魔素が特に濃い。あいつの血液を使った魔素補給剤は最高級品だ。血液に不純物を混ぜると質が下がるかもしれないだろう?
だから…薬無しで、強制的に勃起させて射精に至らせる。その技術者がそのお前の言う『男』だ」
「…ただのレイプ野郎じゃなかったってことか」
「そうだ、それを仕事としている専門の人間だ」
何なんだそれ。
無茶苦茶な話じゃないか…。
「機関の朱紅に対する執着も仕方の無い部分がある。なんたって『世界一の魔力保持者』だからな」
「…世界一!?」
「そうだ、あいつの体内には3つも魔石がある。そのどれもが1つあればそこそこの魔導師になれるほどの大きさだ。はっきり言えば突然変異の化物だ。精通が遅れたのもそれが原因だろうと言われている。人の姿をした魔獣なんじゃないかという研究者もいたくらいだ…朱紅があれほど本を読むのは、人間を研究して擬態するためじゃないかってな」
「…そんな訳、ねえ。あんな優しい人が」
「だがあながち間違ってもいないと思えることもある。
朱紅は、かつて食べ物を消化するのにも魔力を使っていた。栄養補給という生命維持に関わることを魔力に頼って生活していたんだ。
あいつの食生活を知っているだろう、簡単に消化できるものばかり食べている…あれはその名残だ。
なるべく魔力を温存させるために、機関は彼から食事の楽しみを取り上げ、消化にエネルギーを使わないものを食べるように指導した。
それだけではない、必要な処置だといって、彼は…我々「多禍原」家の者は、人間なら当然持ちたいと願う「生きる楽しみ」を奪われてきた。
国民の税金で生活している以上、全てを国民の為に捧げろと毎日言い聞かせられてな。
我々には少なくない給料が出ていると言うが、金額も知らないし使い道も無い…特に我々は、現状に不満を抱かないよう厳重な管理の元で生活してきた。
外の生活を知る手段は本だけだ。
魔獣狩りで街に出たときに拾ったのを大事に回し読みして、私達は外の世界に憧れた。
そして大災害の時、黄陽が機関に約束させた。
3人で300体倒す代わりに、私達を外に出せと。
だが黄陽は死に、約束は宙に浮いた」
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