先祖返りの君と普通の僕

紫蘇

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先祖返りの君と普通の僕

突然の来訪者

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今日も高原先生は通常運転。
朝から校庭を走って、樫原君が持って来てくれるサンドイッチを食べ、職員室で野球部の子からおにぎりを受け取り、授業の準備をして、朝会の後、教室へ行く。

変わったことと言えば、サンドイッチを持ってくるのが樫原君に固定されたことと、樫原君の顔が妙にすっきりしていることだ。

ついに諦めがついたのだろうか…と少し寂しい気持ちになりながら、切り捨てた自分が抱いていい感情ではないな、と打ち消す。

今日一日が終われば、明日は休みだ。
どこの部の試合もない土日は久々だった。

***

野球部の練習が終わって、学校に戻った。
他の部は、まだ練習をしている。
今日も先祖返りの子たちと「ミーティング」をすることになっている高原先生は、校庭の端で練習を眺めていた。
すると、急に後ろから声をかけられた。

「…シュク」
「?」
多禍原朱紅たかはらしゅく
「…?」

誰だろう、それ。
後ろを見ると、女性が1人、立っていた。

「お前を呼んでいるんだが…ああ、今は一郎、か」

今は?

「…どなた…ですか?」
「ふむ、なかなか面倒なものだな。何のきっかけで切り替わるのか分からんとは」

青い目の…ああ、外国の人かな?
学校に迷い込んだんだろうか…

「私の名はあおいだ。多禍原碧…
 「一郎」とは初めてだな」
「あ、はい…そうですね、初めまして」

あおい?じゃあこの国の人か。
同じ「タカハラ」ってことは…新しい親戚!?

「シュク、という名前に聞き覚えは?」
「…いえ、聞いたことは…」
「では、黄陽こうようは?」
「僕の兄です、もしかしてあなたは、兄の…」
「ただの同僚だ、お前が普段どうやって生活しているのかと思って、見に来た」

聞けば、死んだ兄の同僚であった彼女は、どうやら魔導師の仕事の傍ら、何らかの仕事に就いて市井で生活するようにと言われたらしく、暫くこの学校で職場見学をするらしい。

「なぜ、教師を?」
「人に教えるのが、好きで…」
「ああ、そうだった…優秀な指導係だったな」

ん?誰の事…ああ、兄かなあ。

「お前の指導は頭に残る。そしてお前の指導を受けた新人達は、皆初陣から生きて帰ってきた」
「?」
「お前が居なくなってからというもの、魔獣にやられる魔導師が増えてな。困ったことだ」
「……?」
「見学は明日からだが、先に挨拶だけしておく。
 よろしく頼む」
「は、はあ…」

そういうと彼女は消えた。
転移の魔力の残滓が、高原先生の肌に触れて…

「懐かしいな、碧」

全く意図しない言葉が口から零れた。

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