先祖返りの君と普通の僕

紫蘇

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先祖返りの君と普通の僕

獅子の甘噛み

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「っ、先生、どこいたんだよ!!」

外へ出るなり高原先生は樫原君に捕まった。

「え、えと…その、どっかから入ったのはいいんだけど、その、サッカー部の部長さんを探そうとしたら迷っちゃって…」

ぎゅう…と樫原君に抱きしめられる。
苦しい。

「……心配したんだからな」
「うん、ごめんね」

そんな2人を見て幸田先生は笑う。

「ははは、樫原は心配性だな!」
「……っ」

ギッと幸田先生を睨む樫原君を高原先生が窘める。

「樫原君、僕がシェルターから無事に出られたのは幸田先生がいたからだよ?」
「分かってるけど!俺だって生徒じゃなかったら探しに行きたかったんだからな!」
「うん…ありがとね」

頭に手が届かないので背中をヨシヨシする。
それでも樫原君が高原先生を離す様子は無く…
昼休憩のチャイムが鳴った。

----------

「ほんとに、心配したんだからな」
「うん…ごめんってば」
「高原先生が、死ぬんじゃないかって…」
「…うん」

野球部が持ってきてくれたおにぎりを食べながら、高原先生は頷いた。

「先生が…本当は魔導師で、魔獣と…戦ってるんじゃないかって…、心配、したんだからなっ…」

校庭の端、大きな木の下。
周りに人はいない。

「そんな、僕は普通の…」

樫原君は高原先生の眼鏡を取った。

「あっ…、何するの」
「…その目」
「うん?」
「紅い…目」
「……うん」
「魔導師の、目」
「……えっ?」

樫原君は高原先生にキスをした。
思いがけない攻撃に先生があわあわしている隙に、
舌を先生の口の中へ滑り込ませる。

「ん…っ、か、んん……っ、ん……」

くちゅり、くちゅりと音がする。
高原先生を押し倒し、その口の中を味わい…
唾液をすすり、そして飲ませる。

樫原君の毛艶がみるみる良くなって、
尻尾がフサリ…と、樫原君の背中に回された高原先生の手を撫でる。

「ふ……ふ、ふ……」

水音は終わらず、
コロコロ…と食べかけのおにぎりが転がる。
キスをして、キスをして…ずっとキスして。

「ん…ふ、ふ…んん…」

それでも忌々しいチャイムは鳴る。
ゆっくりと唇を離すと…
お互いの口を銀の糸が繋いだ。



愛する人との初めてのキスは…
おかかの味がした。
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