14 / 88
先祖返りの君と普通の僕
念願のグラウンド練習
しおりを挟む
「よーし、じゃあショート、いくよ~」
「エーイ」
「とりゃっ」
ショートにポテポテとゴロが飛ぶ。
バットコントロールだけはいいらしい高原先生は、今日もスーツと革靴のまま野球部の練習だ。
「やっぱグラウンド練習は楽しいね~」
「そうっすね!野球してる感じしますね!」
サッカー部の顧問が、週3回、河川敷のグラウンドを押さえてくれたのだ。
こういうところにも顔が効くらしく、それを言われたときは感極まってハグしてしまった。
「そっ、そういうところが、ですなっ」
と、ちょっと顧問は怒っていたが…。
ノックもそこそこに、今度はピッチャーがマウンドに立ち、高原先生はキャッチャーをやる。
ピッチャーが投げる球を皆で順繰りに打って、それぞれ守備に走り回る。
「わあっ」
「ほら、球をよく見て!」
「うん!ばっちこーい!」
ばっちこい、は、バッターが言う言葉ではないのだが、野球っぽいのが楽しいので誰も突っ込まない。
「どこに打ってんだよー!」
「ごめーん!」
皆でわあわあやっていると、次にグラウンドを使うチームがやってきた。
高原先生は皆に声をかける。
「あ!おーい、みんな、片付けー!」
そう言うと、子どもたちは「えー!」と不満の声を漏らしつつも片付けをしようとする…が、それを、次のチームのキャプテンらしき人が手で制す。
「はは、野球、楽しいか?坊主ども!」
「はい!」
「じゃあ、今からおっさん達と試合するか!」
「ええ!いいんですか!?」
「おー、いいぞ!でもその前に、ちょっと野球教えてやるからこっちこい!」
「はーい!」
そこの町内会の草野球チーム「柏木」だ、よろしくな、坊主ども!とキャプテンらしき人は名乗り、おじさんたちが子どもらにそれぞれ声をかける。
「おじさんの球はえー!」
「そうか?まあ今でも鍛えてるからなー」
「ゴロはこうやって取るんだ」
「へー!」
「フライの処理は、こう!取ったらすぐ、内野見て、先頭がアウトに出来そうなら迷わず投げる!」
「おー、かっけぇ!」
「バットは短めったって、そこまで短く持ったら打てないぞ、この辺だ、で、こう」
「はい!」
おじさんと高校生が和気あいあいと野球を始める。
「よーし、ばっちこーい!」
セカンドのおじさんが言い、
正しいばっちこーいの使い方まで教わる。
野球部員たちは、おじさん達と夕方まで楽しく野球をして過ごした。
……………
「ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
皆でグラウンド整備…整備の仕方まで教わる。
おじさん達の一人が箱アイスを買ってきてくれて、皆で食べる。
「おじさん達、野球上手いんだね!」
「まあ、長くやってるからなー」
「教えて頂けて良かったです、ありがとうございます…アイスまで頂いて、本当にすみません」
「いいってことよ!そんかし、スーパーじゃなくて商店街で買い物してくれよな!
あいつは八百屋、あいつは魚屋、あいつは肉屋で、あいつは本屋、んで、俺はスポーツ用品店だ。
先生、うちで野球のユニフォーム買えよ、Yシャツにスラックスに革靴って、そりゃないぜ」
「ああ、確かにな!」
「ジャージはあるんですが、野球のユニフォームはどこへ行けば買えるのか知らなくて…。
今度買いに行きます」
「おう、待ってるぜ」
「練習がえりに、たまにはうちで飯食ってけよ」
「えっ、何屋さんですか?」
「うちはラーメン屋」
「先生、ラーメン!ラーメンだって!」
「ちょ…っ、次まで待って、お金ない」
思わぬところで地域と繋がりができた。
「いい出会いだったな~」
「ね、良かったね!」
商店街か…何でもスーパーで買ってたな。
商店街も楽しそうだ、今度、練習の無い日に部員たちと行ってみよう。
高原先生はそんなふうに考えて、おじさん草野球チームと別れたのだった。
しかし、これが波乱の幕開けになるとは…
夏の盆踊りまで、あと2ヶ月。
柏木商店街は、「若い人手」を手に入れた…。
「エーイ」
「とりゃっ」
ショートにポテポテとゴロが飛ぶ。
バットコントロールだけはいいらしい高原先生は、今日もスーツと革靴のまま野球部の練習だ。
「やっぱグラウンド練習は楽しいね~」
「そうっすね!野球してる感じしますね!」
サッカー部の顧問が、週3回、河川敷のグラウンドを押さえてくれたのだ。
こういうところにも顔が効くらしく、それを言われたときは感極まってハグしてしまった。
「そっ、そういうところが、ですなっ」
と、ちょっと顧問は怒っていたが…。
ノックもそこそこに、今度はピッチャーがマウンドに立ち、高原先生はキャッチャーをやる。
ピッチャーが投げる球を皆で順繰りに打って、それぞれ守備に走り回る。
「わあっ」
「ほら、球をよく見て!」
「うん!ばっちこーい!」
ばっちこい、は、バッターが言う言葉ではないのだが、野球っぽいのが楽しいので誰も突っ込まない。
「どこに打ってんだよー!」
「ごめーん!」
皆でわあわあやっていると、次にグラウンドを使うチームがやってきた。
高原先生は皆に声をかける。
「あ!おーい、みんな、片付けー!」
そう言うと、子どもたちは「えー!」と不満の声を漏らしつつも片付けをしようとする…が、それを、次のチームのキャプテンらしき人が手で制す。
「はは、野球、楽しいか?坊主ども!」
「はい!」
「じゃあ、今からおっさん達と試合するか!」
「ええ!いいんですか!?」
「おー、いいぞ!でもその前に、ちょっと野球教えてやるからこっちこい!」
「はーい!」
そこの町内会の草野球チーム「柏木」だ、よろしくな、坊主ども!とキャプテンらしき人は名乗り、おじさんたちが子どもらにそれぞれ声をかける。
「おじさんの球はえー!」
「そうか?まあ今でも鍛えてるからなー」
「ゴロはこうやって取るんだ」
「へー!」
「フライの処理は、こう!取ったらすぐ、内野見て、先頭がアウトに出来そうなら迷わず投げる!」
「おー、かっけぇ!」
「バットは短めったって、そこまで短く持ったら打てないぞ、この辺だ、で、こう」
「はい!」
おじさんと高校生が和気あいあいと野球を始める。
「よーし、ばっちこーい!」
セカンドのおじさんが言い、
正しいばっちこーいの使い方まで教わる。
野球部員たちは、おじさん達と夕方まで楽しく野球をして過ごした。
……………
「ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
皆でグラウンド整備…整備の仕方まで教わる。
おじさん達の一人が箱アイスを買ってきてくれて、皆で食べる。
「おじさん達、野球上手いんだね!」
「まあ、長くやってるからなー」
「教えて頂けて良かったです、ありがとうございます…アイスまで頂いて、本当にすみません」
「いいってことよ!そんかし、スーパーじゃなくて商店街で買い物してくれよな!
あいつは八百屋、あいつは魚屋、あいつは肉屋で、あいつは本屋、んで、俺はスポーツ用品店だ。
先生、うちで野球のユニフォーム買えよ、Yシャツにスラックスに革靴って、そりゃないぜ」
「ああ、確かにな!」
「ジャージはあるんですが、野球のユニフォームはどこへ行けば買えるのか知らなくて…。
今度買いに行きます」
「おう、待ってるぜ」
「練習がえりに、たまにはうちで飯食ってけよ」
「えっ、何屋さんですか?」
「うちはラーメン屋」
「先生、ラーメン!ラーメンだって!」
「ちょ…っ、次まで待って、お金ない」
思わぬところで地域と繋がりができた。
「いい出会いだったな~」
「ね、良かったね!」
商店街か…何でもスーパーで買ってたな。
商店街も楽しそうだ、今度、練習の無い日に部員たちと行ってみよう。
高原先生はそんなふうに考えて、おじさん草野球チームと別れたのだった。
しかし、これが波乱の幕開けになるとは…
夏の盆踊りまで、あと2ヶ月。
柏木商店街は、「若い人手」を手に入れた…。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
98
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる