飼い猫はご主人を食べる

紫蘇

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箱庭でのせいかつ

神様の評価

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すっかり日も暮れた頃、猫神様は帰って行った。
お迎え同様、フクが神様を送りに行った。

僕とボタンとスミは、フクが帰って来るまでに晩御飯の準備だ。

「しかし、この煮干しがあの神社から来ているなんて…」
「ご主人様が入って倒れた山があるだろ、あそこに現世の神社とこっちを結ぶ場所があるんだ」
「そこを通ってやって来るの?」
「うん、いつの間にか玄関先に届いてるんだよ」
「へえ…」

なんだか笠地蔵みたい。
それかごんぎつね……。

「そう言えば、僕ってあの山に入れるようになったのかな?」
「……入ってどうするつもりなんだ?」
「……入っても何もないよ?」

2人はちょっと怖い顔で僕を問い詰めようとしてくる。
やっぱり山に入るのはまだ駄目みたいだ。

僕は山に入りたい理由を誤魔化すことにした。

「ううん、何でもないよ。
 ただ、山歩きしたかっただけ……」
「勝手に行っちゃだめだからな!」
現世うつしよに戻ったら死んじゃうんだから!!」
「う、うん…分かった」

本当は夏のうちに、アケビの蔓や山菜が採れそうな場所に目をつけておきたかったけど…
まだ早いんじゃ、仕方ない。

「僕が山に入れるようになったら、みんなで遊びに行こうね」
「じゃあ、早く入れるようになるためにもいっぱいエッチしようね♡」
「う…そ、そっか…」

はあ…
いつになったら完全に生まれ変わるんだろう。

ここに来たときより、見た目はだいぶましになった。
フクの言う通り髪の毛も普通になってきたし、顎も出て来たし、お腹は引っ込んだ。
キモイおっさんからキモくないおっさんにはなれたけど…

悩む僕に、ボタンが言った。

「今日はどうだった?神様のお相手」
「うん……不思議な感じだった」
「続けられそう?」
「こういうのって、神様のほうが続けさせるかどうかを選ぶもんなんじゃないの?」
「それは、まあ…そう、だな…
 おっ、米が炊けたっぽい」
「じゃあしばらく蒸らしだね」

蒸らしている間に魚を焼く準備をする。
今日獲れた魚は鮎。
けっこういいサイズだ。

「神域のため池はお魚も豪華だね」
「うん、マスもいるよ!」
「マスの養殖は聞いたことあるなあ」

そうだ、川釣りもしてみたいな…
なんて想像を膨らませていると、フクが帰ってきた。

「ご主人、本日はお勤めご苦労だった。
 我らが主も大変にご満足されていた、礼を言う」
「本当?良かった」

フクが言うには、胡坐の具合と撫で具合と匂いが良いのだそうだ。
猫神様一派は、どうも匂いというのに重きを置いているらしい。

「ただ、太ももの肉がもう少しあったほうが好みだそうだ」
「えっ、太らなきゃいけないの?」
「ご主人が痩せたいようだったから、つい許しすぎてしまった…すまない」
「ゆ、ゆるす…?」
「白飯の量を減らすことをだ」
「えっ、今でも結構食べてる…」
「今日から少し多めに食べて頂く」
「ええ……」

せっかく痩せたのに……。

何で?
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