8 / 34
箱庭でのせいかつ
ご主人は特別 sideフク
しおりを挟む
スミに本当の年齢を聞かされた後、ご主人はまたも茫洋とした顔になった。
どうやらまた理解が追いつかない様子。
まあ、現世で人間として生きて来られたのだから当然であろう。
しかしスミの700年でこの反応なら、我の1300年はどう話したものか。
「700年前って、何時代…」
「武士ってのが刀と槍を振り回してた」
「地震があって大変だった!」
この中で一番の年長者は我だ。
こやつらでは足りない分を補うのが我の役目でもある。
私はご主人にもう少し分かりやすく言った。
「後醍醐天皇が即位した頃だな」
「後醍醐天皇!じゃあ鎌倉時代の終わり頃か…」
その頃の我はボタンと共に、各地を巡ってネズミの増殖に睨みを利かせて回っていた…と思う。
その後我らの中にスミも加わるのであるが…
そんな事を考えていると、ご主人が我に聞いた。
「スミが700歳なら、ボタンやフクは何歳なの?」
ボタンが応える。
「俺は1000歳!」
「…我は1300年程」
「そんなに!?」
ご主人はまた動きが止まる。
1000年前と1300年前を考えているのであろう。
仕方がないな。
「1000年前は清少納言や紫式部というのがもてはやされていた頃だな。
1300年前は奈良に都があった頃だ」
「平安時代と奈良時代!!」
ご主人は驚いたように我を持ち上げる。
そして尾を見つめる。
「何故尾を気にする?」
「…二股に分かれてないかなって」
「ああ、猫又殿のようにか?
我らは妖怪では無いからな。
そこは普通の猫と同じだ」
「そうなのか…」
こうなれば、先に話だけでもした方が良いだろう。
「我らは猫神様の僕。
35年前にご主人の膝を見初められた猫神様が遣わされた、眷属なのだ」
「ふへっ?」
「ご主人、幼少の頃に山の中の神社へ清掃に行かれていたであろう?
その際、不思議な毛色の猫が膝へ乗った記憶は残っているか」
「あ、ああ、うん…覚えてるよ?」
「それこそが、猫神様の顕現された御姿。
ご主人の膝がいたくお気に召されて、是非神域へ連れて来たいと仰ったのだ」
「それでね、他の神様と話をまとめてくるから、それまでにご主人の好きな物とか探ってこいって」
「先に我が、後にボタンとスミが現世へと降ろされたのだ」
「人間の寿命を管理してる神様が、ご主人は45歳で死ぬ予定だからその後なら…って話がついたんだ」
…やはりご主人はまた固まってしまった。
しかし、いつかは話さねばならぬ事。
一度確りと休息を取れば心も落ち着くだろう。
「ご主人、急に環境が変わってお疲れではないか?
良ければ寝所へ案内しよう」
「あ、ああ、うん…お願いします」
ご主人は一瞬敬語になった。
我は2匹にこう言った。
「ではボタンとスミは食事の用意を。
我はご主人を寝所で癒して来る」
我はご主人に抱かれたまま、寝所はこっちだと案内をする。
急に指示を受けてぽやっとしている2匹を置いて、我はご主人と寝所となる部屋に移動する。
後ろでわれに返った2匹が何か騒いでいるが、知った事ではない。
我もご主人から元気を貰わねば。
それには共寝が一番なのだ。
どうやらまた理解が追いつかない様子。
まあ、現世で人間として生きて来られたのだから当然であろう。
しかしスミの700年でこの反応なら、我の1300年はどう話したものか。
「700年前って、何時代…」
「武士ってのが刀と槍を振り回してた」
「地震があって大変だった!」
この中で一番の年長者は我だ。
こやつらでは足りない分を補うのが我の役目でもある。
私はご主人にもう少し分かりやすく言った。
「後醍醐天皇が即位した頃だな」
「後醍醐天皇!じゃあ鎌倉時代の終わり頃か…」
その頃の我はボタンと共に、各地を巡ってネズミの増殖に睨みを利かせて回っていた…と思う。
その後我らの中にスミも加わるのであるが…
そんな事を考えていると、ご主人が我に聞いた。
「スミが700歳なら、ボタンやフクは何歳なの?」
ボタンが応える。
「俺は1000歳!」
「…我は1300年程」
「そんなに!?」
ご主人はまた動きが止まる。
1000年前と1300年前を考えているのであろう。
仕方がないな。
「1000年前は清少納言や紫式部というのがもてはやされていた頃だな。
1300年前は奈良に都があった頃だ」
「平安時代と奈良時代!!」
ご主人は驚いたように我を持ち上げる。
そして尾を見つめる。
「何故尾を気にする?」
「…二股に分かれてないかなって」
「ああ、猫又殿のようにか?
我らは妖怪では無いからな。
そこは普通の猫と同じだ」
「そうなのか…」
こうなれば、先に話だけでもした方が良いだろう。
「我らは猫神様の僕。
35年前にご主人の膝を見初められた猫神様が遣わされた、眷属なのだ」
「ふへっ?」
「ご主人、幼少の頃に山の中の神社へ清掃に行かれていたであろう?
その際、不思議な毛色の猫が膝へ乗った記憶は残っているか」
「あ、ああ、うん…覚えてるよ?」
「それこそが、猫神様の顕現された御姿。
ご主人の膝がいたくお気に召されて、是非神域へ連れて来たいと仰ったのだ」
「それでね、他の神様と話をまとめてくるから、それまでにご主人の好きな物とか探ってこいって」
「先に我が、後にボタンとスミが現世へと降ろされたのだ」
「人間の寿命を管理してる神様が、ご主人は45歳で死ぬ予定だからその後なら…って話がついたんだ」
…やはりご主人はまた固まってしまった。
しかし、いつかは話さねばならぬ事。
一度確りと休息を取れば心も落ち着くだろう。
「ご主人、急に環境が変わってお疲れではないか?
良ければ寝所へ案内しよう」
「あ、ああ、うん…お願いします」
ご主人は一瞬敬語になった。
我は2匹にこう言った。
「ではボタンとスミは食事の用意を。
我はご主人を寝所で癒して来る」
我はご主人に抱かれたまま、寝所はこっちだと案内をする。
急に指示を受けてぽやっとしている2匹を置いて、我はご主人と寝所となる部屋に移動する。
後ろでわれに返った2匹が何か騒いでいるが、知った事ではない。
我もご主人から元気を貰わねば。
それには共寝が一番なのだ。
1
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる