飼い猫はご主人を食べる

紫蘇

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箱庭でのせいかつ

ご主人は特別 sideフク

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スミに本当の年齢を聞かされた後、ご主人はまたも茫洋とした顔になった。
どうやらまた理解が追いつかない様子。
まあ、現世うつしよで人間として生きて来られたのだから当然であろう。

しかしスミの700年でこの反応なら、我の1300年はどう話したものか。

「700年前って、何時代…」
「武士ってのが刀と槍を振り回してた」
「地震があって大変だった!」

この中で一番の年長者は我だ。
こやつらでは足りない分を補うのが我の役目でもある。
私はご主人にもう少し分かりやすく言った。

「後醍醐天皇が即位した頃だな」
「後醍醐天皇!じゃあ鎌倉時代の終わり頃か…」

その頃の我はボタンと共に、各地を巡ってネズミの増殖に睨みを利かせて回っていた…と思う。
その後我らの中にスミも加わるのであるが…
そんな事を考えていると、ご主人が我に聞いた。

「スミが700歳なら、ボタンやフクは何歳なの?」

ボタンが応える。

「俺は1000歳!」
「…我は1300年程」
「そんなに!?」

ご主人はまた動きが止まる。
1000年前と1300年前を考えているのであろう。
仕方がないな。

「1000年前は清少納言や紫式部というのがもてはやされていた頃だな。
 1300年前は奈良に都があった頃だ」
「平安時代と奈良時代!!」

ご主人は驚いたように我を持ち上げる。
そして尾を見つめる。

「何故尾を気にする?」
「…二股に分かれてないかなって」
「ああ、猫又殿のようにか?
 我らは妖怪では無いからな。
 そこは普通の猫と同じだ」
「そうなのか…」

こうなれば、先に話だけでもした方が良いだろう。

「我らは猫神様のしもべ
 35年前にご主人の膝を見初められた猫神様が遣わされた、眷属なのだ」
「ふへっ?」
「ご主人、幼少の頃に山の中の神社へ清掃に行かれていたであろう?
 その際、不思議な毛色の猫が膝へ乗った記憶は残っているか」
「あ、ああ、うん…覚えてるよ?」
「それこそが、猫神様の顕現された御姿。
 ご主人の膝がいたくお気に召されて、是非神域へ連れて来たいと仰ったのだ」
「それでね、他の神様と話をまとめてくるから、それまでにご主人の好きな物とか探ってこいって」
「先に我が、後にボタンとスミが現世うつしよへと降ろされたのだ」
「人間の寿命を管理してる神様が、ご主人は45歳で死ぬ予定だからその後なら…って話がついたんだ」

…やはりご主人はまた固まってしまった。
しかし、いつかは話さねばならぬ事。
一度確りと休息を取れば心も落ち着くだろう。

「ご主人、急に環境が変わってお疲れではないか?
 良ければ寝所へ案内しよう」
「あ、ああ、うん…お願いします」

ご主人は一瞬敬語になった。
我は2匹にこう言った。

「ではボタンとスミは食事の用意を。
 我はご主人を寝所で癒して来る」

我はご主人に抱かれたまま、寝所はこっちだと案内をする。
急に指示を受けてぽやっとしている2匹を置いて、我はご主人と寝所となる部屋に移動する。

後ろでわれに返った2匹が何か騒いでいるが、知った事ではない。

我もご主人から元気を貰わねば。

それには共寝が一番なのだ。
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