飼い猫はご主人を食べる

紫蘇

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箱庭でのせいかつ

ご主人はモテモテ sideスミ

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ボタンばっかりずるい!
ぼくはご主人の背中を駆け上がって肩にしがみついて、そこにあるお耳をペロペロと舐めた。

「やん、もう、スミ!くすぐったいよう」

ご主人はまゆげを八の字にしてけらけら笑う。
ぼくはお耳にかみつく。
がぶっと、じゃなくてかぷっと。

「ひゃっ、こらっ、スミぃ」

かぷかぷしたり、ぺろぺろしたり、ご主人のお耳であそぶのは何だか楽しい。

「こら、あん、やめなさいスミ」
「やだ!まだするの」
「めっ!」

ご主人がぼくのほうを見て怒る。
ちっともこわくない方の怒り方だったので、ぼくは安心してキスをする。

「あー!」

ボタンが何か言ってるけど知らないもーん。
ご主人はふふふ、と笑って、

「何だかモテ期が来たみたい」

って笑う。

ご主人はずっとモテてたのに気づいてないみたい。

毎日よその猫の毛をつけて帰って来てさ、
まあただの猫だから許してあげなくはないんだけど、でもやっぱりむかつく!
だから毎日ぼくはご主人のこと怒ってたんだぞ。
なのに、

「スミはやんちゃだな~」

ってだっこしてキスして、かわいいかわいいってほっぺすりすりしてくるから…
だから、つい許しちゃうだけなんだぞ。


そうやってぼくがご主人とイチャイチャしていると、フクがぼくの知らないご主人の話を始めた。

「何を言う、ご主人は学生の折、良く様々な女子おなごを部屋に連れ込んでいたではないか」

えっ!?そんなバカなっ!!

「違う、あれはみんなフク目当ての子だよ!
 美猫ちゃんね~って、みんなメロメロだったんだから…」
「ふん、そんなものは猫をダシにご主人に近づこうという浅ましき者の悪知恵よ」
「フクが思う1000分の1も僕モテないからね?」

そして、ご主人はとおくのほうを見た。
ぼくは不安になって顔をスリスリした。
ご主人ははっとしたようにぼくを見て、それから悲しい笑い顔をして言った。

「…それに、女の子にモテたって仕方ないよ。
 僕、女の子とはそういう関係になれないから…」

そういう関係…って、カラダの関係ってこと?
何でご主人は女の子とセックスできないんだろ?

「ふむ、そうであった。
 ご主人は女子おなご相手に性的な興奮を覚えぬ性質であったな」
「せっ、性的っ…………!!」

フク、だめ!スミがいる前で!ってご主人が怒る。
さっきぼくを怒ったやつより怒ってる怒り方だ。

「なぜスミがいる前では駄目なのだ?」
「だってスミはまだ小さいんだから!」

な、なんだって!
ご主人はぼくのこと子どもだと思ってたの!?
なんでだよ!!

「小さ…プッ、スミ、お前小さいんだってよ」
「にゃっ、にゃにおう!!」

ぼくはご主人に向かって言った。

「ぼく、もう700年生きてるんだぞ!
 こどもじゃないっ!!」
「は、え、ななひゃく!?」

ぼくはご主人の肩からしゅたっ!っとかっこよく降りて、むねをはって宣言した。

「ご主人よりおにいちゃんなんだからね!これからはスミお兄ちゃんって呼んでもいいからね!!」
「そ、そうか…スミは僕より年上なのか…」

ふふん、そうだぞ!
ぼくたちは人間よりずっと長生きなんだ!
すごいだろ!!
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