飼い猫はご主人を食べる

プロローグ

お迎えの準備

「……にゃあ」
「にゃ！」
「にゃー」


ご主人は働きすぎだから、働かなくていい場所を。
邪魔が入らぬ森や林に囲まれた静かな土地を。
畑作に憧れていたようだから、少し広めの菜園を。
釣りの番組をよく見ていたから、大きな池を。

家は日当たりのいい平屋の日本家屋！
庭に桜の木とモミジを植えて、お風呂も作ろ！
露天風呂いいな～って言ってた！
大っきいお風呂、みんな一緒に入れるやつ！

あと、ふかふかの布団はマストっしょ。
俺らとご主人と一緒に寝られるくらいデカい奴！
キッチンはアイランド型な！
食洗機もコンロもビルトインで！


「にゃ？」
「にゃにゃ！」
「にゃー」

日本家屋にアイランド型システムキッチンとな？
それよりも竈が良いのではないか？

いろりー！
いろりもいるの！

メシは俺が作るんだから俺が決めるのー。
ご主人は料理なんてしなかっただろ？
あ、囲炉裏は採用で！


「にゃっ」
「にゃー」
「にゃーん」

大事な事を忘れているぞ、炬燵だ。

こたつ！こたつ！

じゃあ囲炉裏の部屋と炬燵の部屋とー、寝室とキッチンと風呂とー、土間も一応つけとくか。


「にゃん？」
「にゃん！」
「にゃん」

では、これでよいな？
うん、いいとおもう！
いいんじゃね？

これならきっとご主人は気に入るはず。
これならずっとここにいてくれるはず。
これなら出ていこうなんて思わないはず。


ではご主人をお招きするとしよう…

「にゃにゃーん」