弟子と師匠と下剋上?

紫蘇

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第二章/深まる仲

びっくりするほど、駄目

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あの日から、僕とエルデ君は「新居」について話し合った。
エルデ君は結婚してその先どうするかを全く考えていなかったらしく、久々に僕は彼にお説教をした。

「あのねえ、結婚はゴールじゃないんだよ?」
「はい」

「結婚して、それから先の事をちゃんと考えたの?
 子どもが産まれるんだよ?
 お金と地位があれば良いわけじゃない。
 両親がちゃんと仲良く出来て、最低限、子どもを虐待しない精神状態を保てるようでなきゃ」
「はい…」

んもう、分かってるのかな。
3歳の子でも預かるの大変なのに、出産して一から育てるなんてどれくらい大変か。

「結婚前に、価値観をすり合わせるとか、直して欲しいところとか、そういうのをちゃんと言い合わないと。
 好きだけじゃ結婚生活は続かないよ?」

「い、一生好きでいる自信はあります!!」

「それを、産まれて来る子どもに対してもちゃんと実行できる?」

「タビトの子どもなら、可愛がれると…」

「…僕が新生児を育てるのに必死で、君にかまってる暇が無くなっても、そう言える?」

「う…でも、それは、乳母を雇う…」

「ほら、そういう所!
 そういう事をちゃんと話し合わないで、勝手に決めて実行されると困るの。
 恋愛なら今だけ見てれば良いけど、結婚は先の先まで考えないと!」

「えっ、じゃあ、タビトは私と結婚してくれるつもりなので…?」

「今はとてもそんな気持ちにはならないけどね」

「うう…」

セックスの事ばかり具体的で、生活の事はもやっとしているエルデ君。
学校に行かずに私塾うちにいた弊害だろうか…
「家族になる=死ぬまで一緒」
の図式だけが頭にあるようで、死ぬまで一緒に過ごす為に何が必要かは考えてもみなかったらしい。
多分、僕をこの家に居させ続けるだけで良いと思っていたんだろうな……。

「エルデ君、この家を建てる時、僕を入れておくことしか頭に無かったでしょ」
「はい…」
「これじゃ生活できないよ?」
「はい…」

僕を閉じ込めておく部屋から、家族が過ごせる家に変えないと。
子どもが産まれる前に、どうにか体裁を整えなきゃ…。

「まず、生活に必要な部屋は何かを考えてみようか」
「はい」
「まずは台所と食事をする場所」
「はい」
「トイレ、お風呂、洗濯場…水回りっていうやつね」
「はい」
「それから、寝室」
「一緒が良いです」
「…分かってるよ」

はあ…なんだかな。

「収納も必要だよね、せめて小麦粉と塩、じゃがいもと玉ねぎと豆くらいは買い置きしておかないと」
「ですが、朝しか食べませんし…」
「休みの日は?
 それに、子どもが出来たら就業時間だって変わって来るよ?
 晩御飯は家族そろって食べたい方だから、僕」
「じゃ、じゃあ…必要ですね」
「あと、仕事の関連の部屋ね。
 お互い、魔法を使うんだから、魔法書を置いておく書庫。
 僕は教師として、君は筆頭魔導師として書き物をする事もあるだろうし、書斎または執務室もあると良いよね」
「執務室も一緒が良いです」
「…産まれて来る子どもが大きくなったら、子ども部屋もいるかもね」
「先に何部屋か作っておきましょう」

…そんなに産めないと思うけどな…
僕の年齢も考えて欲しいんだけど。

「……あと、精霊たちの為の庭も、あると良いよね」
「土地は余っていますから大丈夫です」

うん?余ってるとは?

「そういえば、ここはどういう場所なの?
 周りの音が聞こえないから、誰もいない土地なのは分かるけど」
「元々瘴気の森だったところを、貰いました」
「貰っ…領地って事…?」
「はい、そうです」

それって領地経営が要るやつなのでは…

「…税金とかは?」
「えっ」
「領地あるんだから、国に納めるものが必要でしょ?」
「でも、私達以外に誰もいません」
「誰も居なくても、領地持ってる以上何らかの義務はあるでしょ!?
 それちゃんと確認した?
 何か書状とか契約書があるでしょ」
「ええっと…」

エルデ君は目を泳がせる。
どうやら書類をどこかへやってしまったらしい…


何てこと!!


「朝イチで確認してきて」
「え、でも、どこで」
「領地の事は国土管理局!!」
「は、はい」
「それと、僕、エルデ君が管理局に行ってる間に、この周辺で家に使える物無いか見てくるから、外へ出して」
「え、で、でも」
「逃げないから!!さっさとここから出して!?」
「は、は、はい!!」

んもう!
なんでそこが適当なの!?
信じられない!!

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