弟子と師匠と下剋上?

紫蘇

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第二章/深まる仲

甘やかされ期間

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僕の下腹に謎の紋が入ってからしばらく。

「…ここに、こどもが…」
「ええ、そうですよタビト。
 私とあなたの、愛の結晶です」
「……なんか、実感ないや」

紋はすっかり黒に染まった。
最近お腹も膨らんできて、食べる量が増えた。

「タビト、はい、あーん」
「はむ」

夜9時には必ず迎えに来るエルデ君。

逃げようと思えばいつでも逃げられるのに、夜9時までに自然と自分の部屋に戻ってしまう僕は、この生活を意外と気に入っているのかもしれない。

「たくさん食べて、元気な子を産んでくださいね」
「うん」
「はい、あーん」
「はむ」

妊娠してから、エルデ君の性欲は一旦落ち着いた。
僕が自分のものだという実感があるからだろうか…
今はくっつきたがるだけで、可愛らしいものだ。

「ところで、これ何ていう果物なの?」
「さあ?見た所葡萄でしょう…オレンジ色ですが」
「味も葡萄というより…………桃?林檎?」
「精霊界の果物は謎ですねえ」

僕が何回も精霊を産んでるのは本当のことだったみたいで、僕が妊娠してから僕から生まれたっていう精霊たちが時々お腹の子に良い食べ物をくれる。
精霊たちの殆どが気まぐれなのに、随分律儀だ。

「はい、あーん」
「……エルデ君、僕、自分で食べられるよ」
「駄目です、授乳しながら食べる練習です」
「そんな、今から…気が早いよ」
「早くはありません!
 人に甘えることを覚えなければ、子育ては乗り切れませんよ?授業にだって行くのでしょう?1人で全てやろうとしたら破綻します!シュバイス様の姉上からもそう言われたでしょう?」

妊娠してから、あまりにも不安だった僕は、学友の奥様に宛てて手紙を書いた。
そうしたら、皆様からのお祝いのベビー用品に混じって、なぜかシュバイス様のお姉様から手紙が返ってきたのだ…
曰く、「子どもの父親を使い倒せ」と。

僕は悔しくなって言った。

「それは…その時になったら、できるもん」
「いーえ、駄目です。
 切羽詰まってからでは遅いんです!
 はい、あーん」
「……はむ」

もぐもぐ…

いつの間にか口喧嘩でも弟子に勝てなくなっていたことを認めたくなくて、僕は黙って差し出される謎の果物を食べるのだった。

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