20 / 31
第二章/深まる仲
やぶ蛇 ※
しおりを挟む
今日もエルデ君の腕の中で目が覚める。
出勤まであと1時間、早く支度して出なきゃ。
僕はエルデ君の腕を叩いて彼を起こす。
抜け出そうとするとますます締まるのでこうなった。
「ほら、エルデ君、朝だよ、起きて」
「ん…タビト、ちゃんと今日も居ますね…良かった」
絶妙に罪悪感をつついてくる言葉にため息が出る。
そのエルデ君も同じ様にため息をついて言う。
「…ああ、朝になってしまいました」
「そうだね」
時を戻せる精霊はいないし、戻してくれる神もいない。
時間は不可逆というのが、人間界・精霊界・神界・魔界の共通点だ。
「早く朝ごはん食べて、出勤しなきゃ」
「憂鬱です、仕事など無ければ良いのに。
タビトの夫が無職なのは許せないから仕方なく行くのですよ」
「そうだね、仕事は大事だよ」
初めて彼に抱かれてから1ヶ月が経った。
初日は朝まで抱かれて気を失って、気が付いたら学校の就業時間が終わっていた。
その次の日、申し訳なくてコソコソと出勤すると、フェルディナンド君に見つかった。
彼は付いてきたエルデ君の脳天に拳骨を落とし、「二度とするなクソ童貞」と言った。
僕は驚愕した。
あんなに僕を翻弄した夜のアレコレが、全部初めての経験だったのだ。
何というか、ぞっとした。
おそるおそる彼を見たら、
「夢の中でいっぱい練習しましたから」と言って頬を染めた。
そして、事細かに淫夢の内容を語ろうとして、フェルディナンド君にもう一度拳骨を喰らった。
僕は怒られなかった。
その代わり「原因は分かっていますから」とフェルディナンド君に言われ、いたたまれない気持ちになった。
それ以降、反省したらしいエルデ君との平日夜のセックスは短くなった。
休日前日は朝までコースだけど。
正直歳も歳だから、セックスは週1~2回でお願いしたいのだけど、9年間我慢した分を取り戻させろと言われると弱い。
ちなみに結婚はしていないし、
男でも身ごもれる魔法の話も聞けていないし、
どうやって妊娠してどうやって産むのかとか、
精霊の子どもを「何度か」産んでるとか、
そういうのも聞けていない。
僕が把握してるのは一回だけなんだけどな…。
いつの間に産みつけられたんだろう。
もしかしたら、エルデ君の話は嘘なんじゃないか…
と、僕は疑い始めていた。
***
「タビト、お疲れ様です。
明日は休みですね、早く帰って朝までしましょう」
「…あんまり激しくしないでね」
今日も転移魔法でエルデ君の屋敷へ帰る。
毎日迎えに来るのも大変だと思うのに、彼は嬉々として迎えに来て僕を抱き上げる。
「《時空の精霊よ、この部屋と私の屋敷の間の距離を取り去りたまえ》」
僕にも転移魔法が使えたら良いんだけど、今のところ成功したことはない。
時空の精霊には名前がないらしく、それがどうも僕には馴染まないみたいだ。
「さて、着きましたよ。
今日は湯浴みしながらしましょうそうしましょう」
「僕の返事を聞く気はないんだね…」
「だって返事はいつも『駄目』じゃないですか。
タビトが我儘を言う相手は私だけと分かっていても、悲しいのですよ?」
キスをしながら巧みに服を脱がされる。
これも1か月前は初めてだったというのだから恐ろしい。
僕は言った。
「今日は駄目って言わないよ」
「おや、どうしたのです?
ついに私に堕ちて下さったのですか?」
「ううん…その代わりに聞きたい事がある」
どうしても気になる事。
一番先に確かめたい事を聞くことにした。
「…何をです?」
「妊娠と出産について」
「タビト……!ついに私の子を産んでくれる覚悟が出来たのですね!もうしばらく2人きりの時間を楽しみたかった気もしますが、早速用意を致しましょう」
「ふえ?」
やぶ蛇、という言葉が頭をよぎる。
彼は呪文の詠唱を始める。
「《愛欲の精霊よ、彼の腹に胎を、胎に卵を》」
「ちょ!!?…っ、ああんっ、ひっ……!」
いきなりお腹の奥が、熱くなる。
「やっ、」
どこかが押し広げられる感覚、初めて後ろをこじ開けられた時と似ているような、
「《子が健やかに産まれる為の紋を下腹へ》」
「ふ、っく、あ、ん、んんっ…!」
ぞわ、と陰毛の生えぎわから上へ、快楽の塊がせりあがってくるような、
「あっ、」
なのにそこをエルデ君がなで、さらに快楽が、
「あ、あっ、あっあっ」
そして、最後の一文を、ゆっくりと詠唱される。
「《胎へ至る精の途を彼のナカに、創り給え》」
「っあああぁっ!?」
強烈な刺激、
痛みともつかない衝撃、
そういうなにかがつきぬけて、
ぼくはまっしろになった。
出勤まであと1時間、早く支度して出なきゃ。
僕はエルデ君の腕を叩いて彼を起こす。
抜け出そうとするとますます締まるのでこうなった。
「ほら、エルデ君、朝だよ、起きて」
「ん…タビト、ちゃんと今日も居ますね…良かった」
絶妙に罪悪感をつついてくる言葉にため息が出る。
そのエルデ君も同じ様にため息をついて言う。
「…ああ、朝になってしまいました」
「そうだね」
時を戻せる精霊はいないし、戻してくれる神もいない。
時間は不可逆というのが、人間界・精霊界・神界・魔界の共通点だ。
「早く朝ごはん食べて、出勤しなきゃ」
「憂鬱です、仕事など無ければ良いのに。
タビトの夫が無職なのは許せないから仕方なく行くのですよ」
「そうだね、仕事は大事だよ」
初めて彼に抱かれてから1ヶ月が経った。
初日は朝まで抱かれて気を失って、気が付いたら学校の就業時間が終わっていた。
その次の日、申し訳なくてコソコソと出勤すると、フェルディナンド君に見つかった。
彼は付いてきたエルデ君の脳天に拳骨を落とし、「二度とするなクソ童貞」と言った。
僕は驚愕した。
あんなに僕を翻弄した夜のアレコレが、全部初めての経験だったのだ。
何というか、ぞっとした。
おそるおそる彼を見たら、
「夢の中でいっぱい練習しましたから」と言って頬を染めた。
そして、事細かに淫夢の内容を語ろうとして、フェルディナンド君にもう一度拳骨を喰らった。
僕は怒られなかった。
その代わり「原因は分かっていますから」とフェルディナンド君に言われ、いたたまれない気持ちになった。
それ以降、反省したらしいエルデ君との平日夜のセックスは短くなった。
休日前日は朝までコースだけど。
正直歳も歳だから、セックスは週1~2回でお願いしたいのだけど、9年間我慢した分を取り戻させろと言われると弱い。
ちなみに結婚はしていないし、
男でも身ごもれる魔法の話も聞けていないし、
どうやって妊娠してどうやって産むのかとか、
精霊の子どもを「何度か」産んでるとか、
そういうのも聞けていない。
僕が把握してるのは一回だけなんだけどな…。
いつの間に産みつけられたんだろう。
もしかしたら、エルデ君の話は嘘なんじゃないか…
と、僕は疑い始めていた。
***
「タビト、お疲れ様です。
明日は休みですね、早く帰って朝までしましょう」
「…あんまり激しくしないでね」
今日も転移魔法でエルデ君の屋敷へ帰る。
毎日迎えに来るのも大変だと思うのに、彼は嬉々として迎えに来て僕を抱き上げる。
「《時空の精霊よ、この部屋と私の屋敷の間の距離を取り去りたまえ》」
僕にも転移魔法が使えたら良いんだけど、今のところ成功したことはない。
時空の精霊には名前がないらしく、それがどうも僕には馴染まないみたいだ。
「さて、着きましたよ。
今日は湯浴みしながらしましょうそうしましょう」
「僕の返事を聞く気はないんだね…」
「だって返事はいつも『駄目』じゃないですか。
タビトが我儘を言う相手は私だけと分かっていても、悲しいのですよ?」
キスをしながら巧みに服を脱がされる。
これも1か月前は初めてだったというのだから恐ろしい。
僕は言った。
「今日は駄目って言わないよ」
「おや、どうしたのです?
ついに私に堕ちて下さったのですか?」
「ううん…その代わりに聞きたい事がある」
どうしても気になる事。
一番先に確かめたい事を聞くことにした。
「…何をです?」
「妊娠と出産について」
「タビト……!ついに私の子を産んでくれる覚悟が出来たのですね!もうしばらく2人きりの時間を楽しみたかった気もしますが、早速用意を致しましょう」
「ふえ?」
やぶ蛇、という言葉が頭をよぎる。
彼は呪文の詠唱を始める。
「《愛欲の精霊よ、彼の腹に胎を、胎に卵を》」
「ちょ!!?…っ、ああんっ、ひっ……!」
いきなりお腹の奥が、熱くなる。
「やっ、」
どこかが押し広げられる感覚、初めて後ろをこじ開けられた時と似ているような、
「《子が健やかに産まれる為の紋を下腹へ》」
「ふ、っく、あ、ん、んんっ…!」
ぞわ、と陰毛の生えぎわから上へ、快楽の塊がせりあがってくるような、
「あっ、」
なのにそこをエルデ君がなで、さらに快楽が、
「あ、あっ、あっあっ」
そして、最後の一文を、ゆっくりと詠唱される。
「《胎へ至る精の途を彼のナカに、創り給え》」
「っあああぁっ!?」
強烈な刺激、
痛みともつかない衝撃、
そういうなにかがつきぬけて、
ぼくはまっしろになった。
1
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
母の再婚で魔王が義父になりまして~淫魔なお兄ちゃんに執着溺愛されてます~
トモモト ヨシユキ
BL
母が魔王と再婚したルルシアは、義兄であるアーキライトが大の苦手。しかもどうやら義兄には、嫌われている。
しかし、ある事件をきっかけに義兄から溺愛されるようになり…エブリスタとフジョッシーにも掲載しています。
元妻の血縁ナシDK息子と2週間発情同居性活
掌
BL
欲求不満メスおじさんの「あきら」(受)が、別れた元妻の「ほのか」と現夫との息子を家で預かることになり、その息子で童貞高校生の「カズくん」(攻)に発情し発情され、悶々ムラムラなすれ違い性活をした末、ドスケベラブハメ性活を送る話。
おにショタ、ショタおにの逆転ありをゆるく反復横跳びする内容(挿入はカズくん×あきらのみ)で、攻めが山ほど喘ぎ、数行程度ですが受けの攻めに対するアナル舐め描写が含まれます。表紙画像はネタバレのため読後にご覧ください(タイトルなしverはTwitterに有)
【祝】ついに人物へ名前がつきました
シリーズタグ→カズあき
pixiv/ムーンライトノベルズにも同作品を投稿しています。
なにかありましたら(web拍手)
http://bit.ly/38kXFb0
Twitter垢・拍手返信はこちらから行っています
https://twitter.com/show1write
会社を辞めて騎士団長を拾う
あかべこ
BL
社会生活に疲れて早期リタイアした元社畜は、亡き祖父から譲り受けた一軒家に引っ越した。
その新生活一日目、自宅の前に現れたのは足の引きちぎれた自称・帝国の騎士団長だった……!え、この人俺が面倒見るんですか?
女装趣味のギリギリFIREおじさん×ガチムチ元騎士団長、になるはず。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる