弟子と師匠と下剋上?

紫蘇

文字の大きさ
上 下
14 / 31
第一章/馴れ初め

回想の終わり、そして職員室

しおりを挟む
次の日、僕は早速子どもたちを連れて家を出た。
畑は1週間ぐらい放っておいても大丈夫…だと思う。

「ししょう、またおでかけだねー」
「そうだねえ…飽きたかい?」
「ううん、馬車たのしい!
 いっぱいししょうもお話ししてくれるし」
「そっかあ」

そうして3日かけて総督府があるかつての王都へ行き、学校を訪ね…

「師匠、お久しぶりです!」
「あれっ…もしかしてフェルディナンド…君?」
「ええ、あなたの可愛い弟子のフェルですとも」
「こんなところで会うなんて奇遇だねえ」
「奇遇ではありませんよ?
 俺はここの校長ですから」
「えっ」

僕は、そこで初めて、この学校の校長が、自分の弟子だった事を知った。

そして、その後は流されるまま、
子どもたちはここの生徒として迎えられ、
僕はここの教師になった…

というわけ。

***

今日の授業が全部終わって、昔の事を思い出しているうちに職員室へ着いた。

「…はあ」

それにしてもエルデ・ケンプファー君の事、どうしようかな。

正直あの「ご褒美」をあげるのはちょっと…
いや、でも、約束だし…。

だけどなあ、なんというか……。
臭くて汚いのを無理やりしゃぶらせて、嗜虐心を満たすような子に育てた覚えは無いんだけど。

「でもエッチな恋愛小説には、『好きな人のは美味しい』みたいなこと書いてあったりするもんな…」

きっとそれを鵜呑みにしてるんだろう。
あんなの空想の産物に決まってるのに…
困ったもんだ。

「だけど、さっきのセリフ…」

当時は結婚とか言ってなかったし、あんなに独占欲丸出しでもなかった気がする。

「まだ昔のほうがだったかも…」

僕はもう45歳だ。
すっかりおじさんだし、ちょっとおでこも広くなった気がするし。
おなかもちょっとたるんできた気がするし…

「そっか、裸を見たら幻滅するって事もあるか」

うん、きっとそうだ。
だってもう僕おじさんだもん!

「うんうん、きっとそうだ、そうなる」


僕は自分に言い聞かせて職員室の扉を開けた。
すると目の前にエルデ・ケンプファー君がいた。

「お帰りなさい、タビト」

彼は僕をきつく抱きしめて言った。

「待ちわびましたタビト、結婚しましょう」
「それは出来ません、ケンプファー筆頭魔導師様」
「だから、エルデと」
「だって僕の声は『優しく甘く慈愛に満ちていながらも劣情を掻き立てる声』ではないからね」

…それに、エルデ、と呼んだ瞬間に、背徳的な関係に落ちる…そんな気がするから、軽々しくは呼べない。
そもそも、彼と添い遂げる事は出来ない…
帝国がそれを許さない。


だけど、エルデ・ケンプファー君はそれを全く考えていないらしく…

「先ほどの私の言葉を覚えてくれたのですか?
 やはりタビトは私を愛してるに違いない」
「…君が魔力を乗せて喋るからじゃないか」
「ええ、あなたに語り掛けるときは、そうするように心がけています。
 魅了の魔法にならないかと思って」
「なりません!
 なんて恐ろしい事をするんだい!?」

全く…。

「良いですか、ケンプファー筆頭魔導師様。
 あなたは優秀な魔導師です、帝国の法に基づき、女性と結婚して子どもをもうける義務があります」
「ああ、そんな事は知っています。
 子どもの事なら心配ありません、男同士で子作りする魔法を知っていますから」


「は?」


「精霊たちに教えて貰ったのです。
 何度か精霊の子を産んでいるタビトになら、この魔法が効くはずだ…と言っていましたよ」

「……えっ?」

ど、どういう…事…?

「ですから結婚しましょう。
 大丈夫、その為の準備は整えています!
 まずはあなたを監禁するところから……」
「監禁!!」

やっぱ悪化してる!!
監禁が最初ってどういう事!?





=========

今日から1日1話ペースになります!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

処理中です...