弟子と師匠と下剋上?

紫蘇

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第一章/馴れ初め

回想の終わり、そして職員室

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次の日、僕は早速子どもたちを連れて家を出た。
畑は1週間ぐらい放っておいても大丈夫…だと思う。

「ししょう、またおでかけだねー」
「そうだねえ…飽きたかい?」
「ううん、馬車たのしい!
 いっぱいししょうもお話ししてくれるし」
「そっかあ」

そうして3日かけて総督府があるかつての王都へ行き、学校を訪ね…

「師匠、お久しぶりです!」
「あれっ…もしかしてフェルディナンド…君?」
「ええ、あなたの可愛い弟子のフェルですとも」
「こんなところで会うなんて奇遇だねえ」
「奇遇ではありませんよ?
 俺はここの校長ですから」
「えっ」

僕は、そこで初めて、この学校の校長が、自分の弟子だった事を知った。

そして、その後は流されるまま、
子どもたちはここの生徒として迎えられ、
僕はここの教師になった…

というわけ。

***

今日の授業が全部終わって、昔の事を思い出しているうちに職員室へ着いた。

「…はあ」

それにしてもエルデ・ケンプファー君の事、どうしようかな。

正直あの「ご褒美」をあげるのはちょっと…
いや、でも、約束だし…。

だけどなあ、なんというか……。
臭くて汚いのを無理やりしゃぶらせて、嗜虐心を満たすような子に育てた覚えは無いんだけど。

「でもエッチな恋愛小説には、『好きな人のは美味しい』みたいなこと書いてあったりするもんな…」

きっとそれを鵜呑みにしてるんだろう。
あんなの空想の産物に決まってるのに…
困ったもんだ。

「だけど、さっきのセリフ…」

当時は結婚とか言ってなかったし、あんなに独占欲丸出しでもなかった気がする。

「まだ昔のほうがだったかも…」

僕はもう45歳だ。
すっかりおじさんだし、ちょっとおでこも広くなった気がするし。
おなかもちょっとたるんできた気がするし…

「そっか、裸を見たら幻滅するって事もあるか」

うん、きっとそうだ。
だってもう僕おじさんだもん!

「うんうん、きっとそうだ、そうなる」


僕は自分に言い聞かせて職員室の扉を開けた。
すると目の前にエルデ・ケンプファー君がいた。

「お帰りなさい、タビト」

彼は僕をきつく抱きしめて言った。

「待ちわびましたタビト、結婚しましょう」
「それは出来ません、ケンプファー筆頭魔導師様」
「だから、エルデと」
「だって僕の声は『優しく甘く慈愛に満ちていながらも劣情を掻き立てる声』ではないからね」

…それに、エルデ、と呼んだ瞬間に、背徳的な関係に落ちる…そんな気がするから、軽々しくは呼べない。
そもそも、彼と添い遂げる事は出来ない…
帝国がそれを許さない。


だけど、エルデ・ケンプファー君はそれを全く考えていないらしく…

「先ほどの私の言葉を覚えてくれたのですか?
 やはりタビトは私を愛してるに違いない」
「…君が魔力を乗せて喋るからじゃないか」
「ええ、あなたに語り掛けるときは、そうするように心がけています。
 魅了の魔法にならないかと思って」
「なりません!
 なんて恐ろしい事をするんだい!?」

全く…。

「良いですか、ケンプファー筆頭魔導師様。
 あなたは優秀な魔導師です、帝国の法に基づき、女性と結婚して子どもをもうける義務があります」
「ああ、そんな事は知っています。
 子どもの事なら心配ありません、男同士で子作りする魔法を知っていますから」


「は?」


「精霊たちに教えて貰ったのです。
 何度か精霊の子を産んでいるタビトになら、この魔法が効くはずだ…と言っていましたよ」

「……えっ?」

ど、どういう…事…?

「ですから結婚しましょう。
 大丈夫、その為の準備は整えています!
 まずはあなたを監禁するところから……」
「監禁!!」

やっぱ悪化してる!!
監禁が最初ってどういう事!?





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