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第一章/馴れ初め
授業の続き
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僕は授業を続けた。
「ところで、精霊界から力を借りるときには、何が必要だと思いますか?」
「まりょく!」
「そうだね、魔力だ。
だけど魔力ともう一つ、必要なものがあるよ。
みんなが人に何かしてもらいたい時、どうする?」
「おねがいする…?」
「そう、その人に分かる言葉で、どんなことをして欲しいかを言うよね。
魔法も同じ。
精霊に分かる言葉で、どんな事をして欲しいかをお願いするんだ。
でも、お互い住んでいる界が違うから、その境を越えるために魔力が必要になるんだね」
「ふーん」
「だから魔法の授業では、言葉に魔力を乗せる方法と精霊語を勉強するんだ。
どんな精霊に、どんなふうにお願いするか。
どんな精霊がいて、どういう事を頼めるか。
それが魔法の一番大事なところです」
「はーい!」
…昔はあの子も、このくらい素直で可愛かったのに。
いつの間にか背が伸びて、筋肉がついて…
はっ、いけない。
今は目の前の子どもたちに集中しないと!
「せんせい、精霊界ってどんなところなの?」
「僕たちが精霊を見られないように、精霊も僕たちを見られないの?」
子どもたちは僕に矢継ぎ早に質問する。
僕はそれに1つ1つ答える。
「うん、精霊界に行って帰ってきた人がいないので、どんなところか正確には分からないんだ。
ただ精霊の話によると、空気の色が淡い瑠璃色をしているそうだよ。
木や草花や水はもっとキラキラしてるんだって。
それから、精霊に僕たちを見ることができるかどうかっていう質問だけど、殆どの精霊は僕たちを見ることができるんだって」
「へえー」
まずは精霊の事、精霊界の事に興味を持ってもらうこと。
それがないと、言葉を覚えようという気にはならないからね。
さて、授業時間も残り少ないし…
気合い入れていくかな。
***
精霊界には、多くの精霊がいる。
有名なのは、
水の精霊…ウズ、
土の精霊…クーリエ、
風の精霊…フーシェ、
火の精霊…エンラ、
雷の精霊…バリパ、
氷の精霊…カクー、
木の精霊…モビ、
草の精霊…シュイ、
影の精霊…エピ、
光の精霊…サー。
……彼ら、と言っても性別の概念は無いんだけど、彼らは大精霊と呼ばれている。
みんなそれぞれに性格が違うのだけど、気まぐれでいたずら好きなのは共通している。
話を戻そう。
今いる精霊は殆どが彼らの子どもと言われている。
だから、精霊に呼びかける時は「〇〇の子よ」…と、このようにと呼びかけるのが一般的だ。
「〇〇の子よ」で生活魔法レベル。
「〇〇の子らよ」で弱い魔物を退治できるレベル。
「〇〇と〇〇の子よ」で少し強い魔物を退治でき、
「〇〇と〇〇の子らよ」で強い魔物を退治できる。
最上級……
「〇〇よ」は、相当強い魔導師でも使うことが難しい強力な魔法で使う。
唱えることは誰でもできるけど、応えてくれなきゃどうにもならない。
応えてもらうには大精霊の力が通るくらいの道を人間界と精霊界の間に開けなきゃならないんだ。
それには相応の魔力だけでなく、精霊に好かれている事が大事で…
それには魔導師本人の人間性が大事になる。
高潔であれば良い、というわけではない。
逆に高潔でありたいと強く思い続けているのなら、高潔な人物になりきれていなくてもいいんだ。
純粋な思いを抱えている事。
その思いが「善」か「悪」かは関係ない。
善悪は人間の規範で、精霊には通用しないから。
だから「強い魔導師になりたい」と強く思い続ければ、やがて精霊は応えてくれる。
動機は何でもいい。
ただ「強くなりたい」と思う事、思い続ける事…
そうすればいつかは、精霊に応えてもらえる。
僕が子どもたちに与えるのは、知識だけじゃない。
「こう有りたい」と常に思い続けられるような動機を与えることだ。
それは神の力を借りる時にも役立つだろう。
神は誰かを「救いたい」または「守りたい」という思いに応えて力を貸してくれる存在だ。
怪我を治したり、病気を治したりする「治癒」は、救いたいという気持ちが大事。
攻撃を防ぐ「結界」は守りたいという気持ちが大事。
魔物を寄せ付けなくする「聖域」は、人間だけでなく魔物も守りたい気持ちが大事……無用な戦いで、命を落とすのは人だけじゃないからね。
だから、「聖域」を使いたいなら、魔界の言葉も覚えたほうが有利になる。
魔物と意思疎通ができれば、魔物も守りたい気持ちが強くなるはずだから……
さて、次に授業をするクラスは…
治癒師になりたい子が集まってる組だ。
「神語はいかに想いを込められるかが大事…」
今日は授業が4つあるから、
職員室へは夕方まで近づかなくて済む。
待ちくたびれて帰ってくれたらいいんだけどな…。
「ところで、精霊界から力を借りるときには、何が必要だと思いますか?」
「まりょく!」
「そうだね、魔力だ。
だけど魔力ともう一つ、必要なものがあるよ。
みんなが人に何かしてもらいたい時、どうする?」
「おねがいする…?」
「そう、その人に分かる言葉で、どんなことをして欲しいかを言うよね。
魔法も同じ。
精霊に分かる言葉で、どんな事をして欲しいかをお願いするんだ。
でも、お互い住んでいる界が違うから、その境を越えるために魔力が必要になるんだね」
「ふーん」
「だから魔法の授業では、言葉に魔力を乗せる方法と精霊語を勉強するんだ。
どんな精霊に、どんなふうにお願いするか。
どんな精霊がいて、どういう事を頼めるか。
それが魔法の一番大事なところです」
「はーい!」
…昔はあの子も、このくらい素直で可愛かったのに。
いつの間にか背が伸びて、筋肉がついて…
はっ、いけない。
今は目の前の子どもたちに集中しないと!
「せんせい、精霊界ってどんなところなの?」
「僕たちが精霊を見られないように、精霊も僕たちを見られないの?」
子どもたちは僕に矢継ぎ早に質問する。
僕はそれに1つ1つ答える。
「うん、精霊界に行って帰ってきた人がいないので、どんなところか正確には分からないんだ。
ただ精霊の話によると、空気の色が淡い瑠璃色をしているそうだよ。
木や草花や水はもっとキラキラしてるんだって。
それから、精霊に僕たちを見ることができるかどうかっていう質問だけど、殆どの精霊は僕たちを見ることができるんだって」
「へえー」
まずは精霊の事、精霊界の事に興味を持ってもらうこと。
それがないと、言葉を覚えようという気にはならないからね。
さて、授業時間も残り少ないし…
気合い入れていくかな。
***
精霊界には、多くの精霊がいる。
有名なのは、
水の精霊…ウズ、
土の精霊…クーリエ、
風の精霊…フーシェ、
火の精霊…エンラ、
雷の精霊…バリパ、
氷の精霊…カクー、
木の精霊…モビ、
草の精霊…シュイ、
影の精霊…エピ、
光の精霊…サー。
……彼ら、と言っても性別の概念は無いんだけど、彼らは大精霊と呼ばれている。
みんなそれぞれに性格が違うのだけど、気まぐれでいたずら好きなのは共通している。
話を戻そう。
今いる精霊は殆どが彼らの子どもと言われている。
だから、精霊に呼びかける時は「〇〇の子よ」…と、このようにと呼びかけるのが一般的だ。
「〇〇の子よ」で生活魔法レベル。
「〇〇の子らよ」で弱い魔物を退治できるレベル。
「〇〇と〇〇の子よ」で少し強い魔物を退治でき、
「〇〇と〇〇の子らよ」で強い魔物を退治できる。
最上級……
「〇〇よ」は、相当強い魔導師でも使うことが難しい強力な魔法で使う。
唱えることは誰でもできるけど、応えてくれなきゃどうにもならない。
応えてもらうには大精霊の力が通るくらいの道を人間界と精霊界の間に開けなきゃならないんだ。
それには相応の魔力だけでなく、精霊に好かれている事が大事で…
それには魔導師本人の人間性が大事になる。
高潔であれば良い、というわけではない。
逆に高潔でありたいと強く思い続けているのなら、高潔な人物になりきれていなくてもいいんだ。
純粋な思いを抱えている事。
その思いが「善」か「悪」かは関係ない。
善悪は人間の規範で、精霊には通用しないから。
だから「強い魔導師になりたい」と強く思い続ければ、やがて精霊は応えてくれる。
動機は何でもいい。
ただ「強くなりたい」と思う事、思い続ける事…
そうすればいつかは、精霊に応えてもらえる。
僕が子どもたちに与えるのは、知識だけじゃない。
「こう有りたい」と常に思い続けられるような動機を与えることだ。
それは神の力を借りる時にも役立つだろう。
神は誰かを「救いたい」または「守りたい」という思いに応えて力を貸してくれる存在だ。
怪我を治したり、病気を治したりする「治癒」は、救いたいという気持ちが大事。
攻撃を防ぐ「結界」は守りたいという気持ちが大事。
魔物を寄せ付けなくする「聖域」は、人間だけでなく魔物も守りたい気持ちが大事……無用な戦いで、命を落とすのは人だけじゃないからね。
だから、「聖域」を使いたいなら、魔界の言葉も覚えたほうが有利になる。
魔物と意思疎通ができれば、魔物も守りたい気持ちが強くなるはずだから……
さて、次に授業をするクラスは…
治癒師になりたい子が集まってる組だ。
「神語はいかに想いを込められるかが大事…」
今日は授業が4つあるから、
職員室へは夕方まで近づかなくて済む。
待ちくたびれて帰ってくれたらいいんだけどな…。
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