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第一章/馴れ初め
【回想】塾の最期
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そうやって、何とか彼を卒業させてからも、色々あった。
まず最初に、授業の妨害があった。
突然お役人らしき人たちがやってきて、帝国生まれでない者が私塾を開くのは違法だ、と言い、授業を辞めろと騒いだ。
丁度授業中だったので、子どもたちみんなに僕の出自が知られてしまった。
僕を見限って出て行く子も出るだろうな…と思ったら、そんな子は1人もいなかった。
だから負けずに授業をした。
お役人らしき人たちは、毎日毎日やってきて授業の邪魔をした。
だけど毎日来るせいで、ある日視察に来られたバイツ様と鉢合わせ、全員捕えられた。
それから、誘拐未遂だ。
白昼堂々、塾に柄の悪い男たちがやってきて、私塾の借金のカタに女を貰うといって、女の子たちを引きずっていこうとする事件が起きた。
僕がお金を借りたのは学友の方々からだけだ。
彼らが急にそんな風になるとは思えなくて、言いがかりに違いないと思った。
そう言い返したら彼らは「不敬だ」といって暴れたので、僕は、震えながら男たちを魔法で牽制しつつ、子どもたちを窓の無い部屋へ逃がし、入口を塞いで耐えた。
そうしていると、シュバイス様率いる黒獅子騎士団が駆けつけてくれて、男たちは全員連行されていった。
ザイン様によると、お役人による妨害があった後、在学中シュバイス様に付けさせていた道具を、防犯の為に塾の玄関に置いてくれていたらしい。
またも借りを作っていたことに、僕はとても恐縮した。
それから、魔物の出現だ。
こちらは得意の結界で何とかしのげた。
それから魔物が他へ行っても困るので、何とか宥めて全員魔界へ戻した。
だけど畑はめちゃくちゃに荒らされて、一生懸命育ててた野菜は全滅した。
これには僕も子どもたちも一緒になって泣いた。
でも、一番困ったのは塾の建物を燃やされた事だ。
前回、急に魔物が出て来た事もあって、子どもたちの部屋や牛小屋・馬小屋・鶏小屋には強力な結界を張っていたから、みんなの命は助かったけど、授業で使う本や教材は全部燃えてしまった。
元々、小さな嫌がらせはいっぱいあった。
パン屋さんがパンを売ってくれないとか、
お肉屋さんでお肉が買えないとか、
悪い噂を流されたりとか、
強姦されかけたりとか、
急に殴られたりとか、
脅迫状が頻繁に届いたりとかした。
いちいち学友の方々に相談するのも憚られたので放置していたら、パン屋さんと肉屋さんは普通に戻った。
通っている子どもたちに何かあると困るので、馬車で送り迎えをしていたら、馬の操縦がうまくなった。
どれも何という事は無かった。
学校で死ぬほど虐められたので、その程度なら何というほどの事もなかったんだ。
建物が燃えてしまっても、魔法があればまた屋敷を建てられる。
灰が残っていれば、本も教材も復元できる。
その程度の魔法は学校で覚えた。
燃やされたノートを復元するために。
だけど、火事を最後に、僕は塾を畳む事にした。
だって、火事はうちだけの問題じゃない。
火が他に燃え移ったら、街のみんなに迷惑がかかる…。
魔法にも限界がある。
死んだものは元に戻せない。
焼け死ぬ人が出たら、僕には償い様がない。
僕が居なければこんな火事なんて起きない。
だから、僕が出て行くしかない…
無関係の人たちを危険に晒してまで、ここにいるわけにはいかない。
出て行くなら、クラスメイトや「級友」が僕を追い出したぞと快哉できる場所が良い。
そうすれば彼らも僕の事を忘れるだろう。
ということは、やはり母国に戻るべきか…。
辿り着いた先で仕事はあるだろうか。
学友の方々が居ない場所で、僕はやっていけるだろうか。
考えても仕方が無い。
僕は黙って出て行くだけだ…でも。
「ししょう…私たち、おうちに返されちゃうの?」
「師匠、僕たちも一緒に連れて行ってください」
「…家なんかより、行く当てのない旅のほうが何万倍もましです」
「たべるものなくても、がまんできる。…おうちでもそうだったから」
塾で生活していた子は、連れて行くことにした。
誘拐だと言われないように、ご実家に宛てて手紙を書き、勝手に破り捨てられないよう、比較的お会いしやすいシュバイス様に託した。
「…落ち着いたら必ず、連絡しろよ」
「はい、皆様にもよろしくお伝えください」
本と食料を馬車に積めるだけ積んで、僕は子どもたちと一緒に帝国を後にした。
牛と鶏をご近所に託して…。
まず最初に、授業の妨害があった。
突然お役人らしき人たちがやってきて、帝国生まれでない者が私塾を開くのは違法だ、と言い、授業を辞めろと騒いだ。
丁度授業中だったので、子どもたちみんなに僕の出自が知られてしまった。
僕を見限って出て行く子も出るだろうな…と思ったら、そんな子は1人もいなかった。
だから負けずに授業をした。
お役人らしき人たちは、毎日毎日やってきて授業の邪魔をした。
だけど毎日来るせいで、ある日視察に来られたバイツ様と鉢合わせ、全員捕えられた。
それから、誘拐未遂だ。
白昼堂々、塾に柄の悪い男たちがやってきて、私塾の借金のカタに女を貰うといって、女の子たちを引きずっていこうとする事件が起きた。
僕がお金を借りたのは学友の方々からだけだ。
彼らが急にそんな風になるとは思えなくて、言いがかりに違いないと思った。
そう言い返したら彼らは「不敬だ」といって暴れたので、僕は、震えながら男たちを魔法で牽制しつつ、子どもたちを窓の無い部屋へ逃がし、入口を塞いで耐えた。
そうしていると、シュバイス様率いる黒獅子騎士団が駆けつけてくれて、男たちは全員連行されていった。
ザイン様によると、お役人による妨害があった後、在学中シュバイス様に付けさせていた道具を、防犯の為に塾の玄関に置いてくれていたらしい。
またも借りを作っていたことに、僕はとても恐縮した。
それから、魔物の出現だ。
こちらは得意の結界で何とかしのげた。
それから魔物が他へ行っても困るので、何とか宥めて全員魔界へ戻した。
だけど畑はめちゃくちゃに荒らされて、一生懸命育ててた野菜は全滅した。
これには僕も子どもたちも一緒になって泣いた。
でも、一番困ったのは塾の建物を燃やされた事だ。
前回、急に魔物が出て来た事もあって、子どもたちの部屋や牛小屋・馬小屋・鶏小屋には強力な結界を張っていたから、みんなの命は助かったけど、授業で使う本や教材は全部燃えてしまった。
元々、小さな嫌がらせはいっぱいあった。
パン屋さんがパンを売ってくれないとか、
お肉屋さんでお肉が買えないとか、
悪い噂を流されたりとか、
強姦されかけたりとか、
急に殴られたりとか、
脅迫状が頻繁に届いたりとかした。
いちいち学友の方々に相談するのも憚られたので放置していたら、パン屋さんと肉屋さんは普通に戻った。
通っている子どもたちに何かあると困るので、馬車で送り迎えをしていたら、馬の操縦がうまくなった。
どれも何という事は無かった。
学校で死ぬほど虐められたので、その程度なら何というほどの事もなかったんだ。
建物が燃えてしまっても、魔法があればまた屋敷を建てられる。
灰が残っていれば、本も教材も復元できる。
その程度の魔法は学校で覚えた。
燃やされたノートを復元するために。
だけど、火事を最後に、僕は塾を畳む事にした。
だって、火事はうちだけの問題じゃない。
火が他に燃え移ったら、街のみんなに迷惑がかかる…。
魔法にも限界がある。
死んだものは元に戻せない。
焼け死ぬ人が出たら、僕には償い様がない。
僕が居なければこんな火事なんて起きない。
だから、僕が出て行くしかない…
無関係の人たちを危険に晒してまで、ここにいるわけにはいかない。
出て行くなら、クラスメイトや「級友」が僕を追い出したぞと快哉できる場所が良い。
そうすれば彼らも僕の事を忘れるだろう。
ということは、やはり母国に戻るべきか…。
辿り着いた先で仕事はあるだろうか。
学友の方々が居ない場所で、僕はやっていけるだろうか。
考えても仕方が無い。
僕は黙って出て行くだけだ…でも。
「ししょう…私たち、おうちに返されちゃうの?」
「師匠、僕たちも一緒に連れて行ってください」
「…家なんかより、行く当てのない旅のほうが何万倍もましです」
「たべるものなくても、がまんできる。…おうちでもそうだったから」
塾で生活していた子は、連れて行くことにした。
誘拐だと言われないように、ご実家に宛てて手紙を書き、勝手に破り捨てられないよう、比較的お会いしやすいシュバイス様に託した。
「…落ち着いたら必ず、連絡しろよ」
「はい、皆様にもよろしくお伝えください」
本と食料を馬車に積めるだけ積んで、僕は子どもたちと一緒に帝国を後にした。
牛と鶏をご近所に託して…。
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