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第一章/馴れ初め
【回想】好転・暗転
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そうして、僕の入学当時のクラスメイトは、ついに誰もいなくなった。
だけど今のクラスの人たちは、僕の「級友」が消えた事を何とも思っていないようだった。
それどころか、
「あんな馬鹿を野放しにしなければならないほどこの国は腐ってきているのだ」と憤り、
「何度も会長に進言していたのだが、ようやくか」と言って、僕を受け入れてくれた。
そして「君が搾取されているのを快く思っていた者はいない」と弁明され、先生までが「彼らに注意する度に君が虐げられるのを見て、何も言えなくなってしまったんだ」と謝罪してくれた。
元々このクラスは成績上位者だけで構成されていることも、その時初めて知った。
そうして、本当の学校生活を手にしたけれど…
その頃には、僕は何かを攻撃しようとすると体がこわばるようになっていた。
僕が学校に通わせてもらうための条件は「将来魔導師となって魔物や敵国の兵士と戦う事」だったから、これは致命的な欠陥だった。
だけど、生徒会の人たちは僕を擁護してくれた。
「…やつら、帝国に対して大きな損失を出してくれたものだ」
「まとめて瘴気の森へぶち込んどけばぁ?」
「確かに、これはそういった類の損失だからな」
「タビト程の魔法の才を潰したのだ、妥当だろう」
そういって怒ってくれた。
僕はせめて後方で役に立てればと、神の言葉を学び、治癒の勉強を始めた。
魔物を殺すのではなく魔界へ返せないかと、魔界の言葉も勉強した。
その他にもこの学校で学べるものは何でも学んだ。
どれかで何かの役に立てるのじゃないかと思って。
1年目にやられた虐めのおかげで、頭に知識を詰め込むのは得意になっていたし、課題を押し付けてきた「級友」のおかげで、要点を素早くまとめるのも得意になってた。
とはいえ、全く未知の分野は何から学べば良いかも分からなくて途方に暮れたけど。
こんな僕に、生徒会のみなさんは本当に良くしてくださった。
勉強を教えてくれて、息抜きにと観劇や美術館巡りに連れて行ってくれて、教養を高めさせてくれた。
帝都を散策して、都会というものを教えてくれた。
お茶会や晩餐会に何度も呼んでもらって、本当の礼儀作法も教えてくれた。
本当にたくさんの事を学ばせて頂いたんだ。
だからどうにかして彼らの役に立ちたいと思った。
……でも、それは結局実らなかった。
彼らの将来は「中央で国家運営に携わる」事に決まっていて、そこへ僕みたいな「属国の平民」が入り込む余地はなかったのだ。
「僕の秘書として中央へ来ないか」と会長が誘ってくれたけど、彼が就いたのは宰相補佐官で、仕えるためには最低でも子爵位が必要だった。
「だったら僕の補佐官になるかい」とラビエ様やバイツ様が誘ってくれたけど、お二人は貴族院議員になられており、彼らの元で働こうにも、中央に戸籍が無い人間は下働きすら許されない。
そしてシュバイス様はエリートが集まる黒獅子騎士団に入団され、ついていくのは土台無理だった。
中央で働けないなら、学費は返さなければならない。
途方にくれた僕は、鉱山へ行こうと思った。
稼げる場所が、それしか思いつかなかったんだ。
だけどその時、会長が僕に言ってくれた。
「タビトは、本当に色んな事を学んだよね。
今度はそれを子どもたちに教えるのはどう?
僕もラビエもバイツもシュバイスも、君に援助は惜しまないと約束するよ。
タビトは大事な……学友、だからね」
僕はいつの間にか、彼らの学友と認められていたらしい。
嬉しくてつい「ありがとうございます」と言ったら、これまたいつの間にか、帝都の端のあまり目立たないような場所に大きな家が用意されていて……。
そうして僕は、そこで私塾を始めた。
優秀な子を育てて彼らに報いたいと思ったからだ。
その塾生ですら、最初は学友の方々に紹介してもらう始末で、どんどん恩が溜まっていくのだけど。
それでも自分が何かの役に立てていたらいいなと思いながら、僕は子どもたちを教え続けた。
だけど今のクラスの人たちは、僕の「級友」が消えた事を何とも思っていないようだった。
それどころか、
「あんな馬鹿を野放しにしなければならないほどこの国は腐ってきているのだ」と憤り、
「何度も会長に進言していたのだが、ようやくか」と言って、僕を受け入れてくれた。
そして「君が搾取されているのを快く思っていた者はいない」と弁明され、先生までが「彼らに注意する度に君が虐げられるのを見て、何も言えなくなってしまったんだ」と謝罪してくれた。
元々このクラスは成績上位者だけで構成されていることも、その時初めて知った。
そうして、本当の学校生活を手にしたけれど…
その頃には、僕は何かを攻撃しようとすると体がこわばるようになっていた。
僕が学校に通わせてもらうための条件は「将来魔導師となって魔物や敵国の兵士と戦う事」だったから、これは致命的な欠陥だった。
だけど、生徒会の人たちは僕を擁護してくれた。
「…やつら、帝国に対して大きな損失を出してくれたものだ」
「まとめて瘴気の森へぶち込んどけばぁ?」
「確かに、これはそういった類の損失だからな」
「タビト程の魔法の才を潰したのだ、妥当だろう」
そういって怒ってくれた。
僕はせめて後方で役に立てればと、神の言葉を学び、治癒の勉強を始めた。
魔物を殺すのではなく魔界へ返せないかと、魔界の言葉も勉強した。
その他にもこの学校で学べるものは何でも学んだ。
どれかで何かの役に立てるのじゃないかと思って。
1年目にやられた虐めのおかげで、頭に知識を詰め込むのは得意になっていたし、課題を押し付けてきた「級友」のおかげで、要点を素早くまとめるのも得意になってた。
とはいえ、全く未知の分野は何から学べば良いかも分からなくて途方に暮れたけど。
こんな僕に、生徒会のみなさんは本当に良くしてくださった。
勉強を教えてくれて、息抜きにと観劇や美術館巡りに連れて行ってくれて、教養を高めさせてくれた。
帝都を散策して、都会というものを教えてくれた。
お茶会や晩餐会に何度も呼んでもらって、本当の礼儀作法も教えてくれた。
本当にたくさんの事を学ばせて頂いたんだ。
だからどうにかして彼らの役に立ちたいと思った。
……でも、それは結局実らなかった。
彼らの将来は「中央で国家運営に携わる」事に決まっていて、そこへ僕みたいな「属国の平民」が入り込む余地はなかったのだ。
「僕の秘書として中央へ来ないか」と会長が誘ってくれたけど、彼が就いたのは宰相補佐官で、仕えるためには最低でも子爵位が必要だった。
「だったら僕の補佐官になるかい」とラビエ様やバイツ様が誘ってくれたけど、お二人は貴族院議員になられており、彼らの元で働こうにも、中央に戸籍が無い人間は下働きすら許されない。
そしてシュバイス様はエリートが集まる黒獅子騎士団に入団され、ついていくのは土台無理だった。
中央で働けないなら、学費は返さなければならない。
途方にくれた僕は、鉱山へ行こうと思った。
稼げる場所が、それしか思いつかなかったんだ。
だけどその時、会長が僕に言ってくれた。
「タビトは、本当に色んな事を学んだよね。
今度はそれを子どもたちに教えるのはどう?
僕もラビエもバイツもシュバイスも、君に援助は惜しまないと約束するよ。
タビトは大事な……学友、だからね」
僕はいつの間にか、彼らの学友と認められていたらしい。
嬉しくてつい「ありがとうございます」と言ったら、これまたいつの間にか、帝都の端のあまり目立たないような場所に大きな家が用意されていて……。
そうして僕は、そこで私塾を始めた。
優秀な子を育てて彼らに報いたいと思ったからだ。
その塾生ですら、最初は学友の方々に紹介してもらう始末で、どんどん恩が溜まっていくのだけど。
それでも自分が何かの役に立てていたらいいなと思いながら、僕は子どもたちを教え続けた。
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