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第一章/馴れ初め
平常心だ!
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僕を抱きしめて離さないエルデ・ケンプファー君を何とか引きはがそうと、僕は強い口調で言った。
「ともかく、今はまだ授業中です。
お話は授業が全部終わってからにしてください。
ここは学校ですよ」
「嫌です」
嫌!
んもう……意味が分からない。
窓から教室に乗り込んできて、いきなりキスしてきて、とんでもない事を言って!
「とにかく、今は授業中です。
生徒たちの邪魔をしないでください!」
僕は久しぶりに人に怒った。
すると彼は嬉しそうに笑って言った。
「そうですか、愛しい方がそう仰るなら、少しの間だけは我慢しましょう。
その代わり私のものになってください」
「なりません!!
話が支離滅裂です、ケンプファー筆頭魔導師様」
「他人行儀な呼び方はやめてください。
昔のように優しく甘く慈愛に満ちていながらも劣情を掻き立てる声でエルデと呼んでください」
「掻き立てませんし呼びません!
ごめんねみんな、授業のつづきをしよう。
ケンプファー筆頭魔導師様は職員室に行って、校長先生に挨拶をしてきなさい」
「嫌です」
「嫌じゃありません!!」
まったく、調子が狂うったらない。
昔から彼はそうなんだ…
困った子だなあ。
僕は何だか懐かしくなって、背伸びして彼の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「いい子だから、ちゃんとしなきゃ駄目」
「…はい」
ケンプファー筆頭魔導師様はちょっと不貞腐れて出て行った。
子ども扱いされるのが嫌なのも変わらないなあ。
「はあ…手のかかること」
僕は気を取り直して、こどもたちに向き直った。
授業再開だ。
「さて、授業の続きをしよう。
精霊界のことだけど…ケンプファー様は、精霊と会って新しい魔法を授かったんだ。
精霊がこっちの世界に来ることはほとんど無いし、こちらから呼べた人は今までいなかったから、これはとってもすごいことなんだよ」
「どうして精霊を呼べた人がいなかったの?」
「とっても気まぐれだから、と言われているね。
精霊は、その精霊が気に入った人が呼ぶのでないと、応えてくれないんだ。
例えば、みんなだって、誰に誘われても付いて行くわけじゃないでしょ?仲がいい人や、好きな人にしか付いて行かないよね?
精霊も同じなんだ。
おまけに、精霊と人間は住んでいる界がちがう。
だから人間同士よりずっと、「仲良くなりたいな」って思ってもらうのは難しいんだ」
子どもたちはそこまでの話に頷くと、一旦沈黙し…
それからおずおずと質問した。
「ケンプファーさまは精霊と仲がいいの?」
「そうだね、本人にあとで聞くといいよ。
せっかく学校に来てくれたんだしね」
「……はーい」
僕がそう言うと、子どもたちはまた黙り込んだ。
隣の子をつついて、牽制している子もいる。
そうやって暫く黙り込んでいたけど、一人の女の子がついに口を開く。
「せんせい、ケンプファーさまとせんせいはどういうかんけいなの?」
やっぱり、この疑問は避けて通れないか…。
なんて言えばいいか…簡単に言えば…そう。
「ケンプファー筆頭魔導師様はね、僕の弟子…つまり彼が子どもの頃に、僕が勉強を教えてたんだ。
みんなと同じだね。
だからみんなも、頑張れば僕よりずっと魔法が使えるようになれるんだよ。
僕よりもずっと凄い人になれるんだ!
だからしっかりお勉強しましょうね!」
「……はーい!」
…返事までに少し沈黙はあったけど、これでどうにか納得してくれるかな。
まったく、あの子ときたら…
何が楽しくて、僕なんかに執着するんだか。
「ともかく、今はまだ授業中です。
お話は授業が全部終わってからにしてください。
ここは学校ですよ」
「嫌です」
嫌!
んもう……意味が分からない。
窓から教室に乗り込んできて、いきなりキスしてきて、とんでもない事を言って!
「とにかく、今は授業中です。
生徒たちの邪魔をしないでください!」
僕は久しぶりに人に怒った。
すると彼は嬉しそうに笑って言った。
「そうですか、愛しい方がそう仰るなら、少しの間だけは我慢しましょう。
その代わり私のものになってください」
「なりません!!
話が支離滅裂です、ケンプファー筆頭魔導師様」
「他人行儀な呼び方はやめてください。
昔のように優しく甘く慈愛に満ちていながらも劣情を掻き立てる声でエルデと呼んでください」
「掻き立てませんし呼びません!
ごめんねみんな、授業のつづきをしよう。
ケンプファー筆頭魔導師様は職員室に行って、校長先生に挨拶をしてきなさい」
「嫌です」
「嫌じゃありません!!」
まったく、調子が狂うったらない。
昔から彼はそうなんだ…
困った子だなあ。
僕は何だか懐かしくなって、背伸びして彼の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「いい子だから、ちゃんとしなきゃ駄目」
「…はい」
ケンプファー筆頭魔導師様はちょっと不貞腐れて出て行った。
子ども扱いされるのが嫌なのも変わらないなあ。
「はあ…手のかかること」
僕は気を取り直して、こどもたちに向き直った。
授業再開だ。
「さて、授業の続きをしよう。
精霊界のことだけど…ケンプファー様は、精霊と会って新しい魔法を授かったんだ。
精霊がこっちの世界に来ることはほとんど無いし、こちらから呼べた人は今までいなかったから、これはとってもすごいことなんだよ」
「どうして精霊を呼べた人がいなかったの?」
「とっても気まぐれだから、と言われているね。
精霊は、その精霊が気に入った人が呼ぶのでないと、応えてくれないんだ。
例えば、みんなだって、誰に誘われても付いて行くわけじゃないでしょ?仲がいい人や、好きな人にしか付いて行かないよね?
精霊も同じなんだ。
おまけに、精霊と人間は住んでいる界がちがう。
だから人間同士よりずっと、「仲良くなりたいな」って思ってもらうのは難しいんだ」
子どもたちはそこまでの話に頷くと、一旦沈黙し…
それからおずおずと質問した。
「ケンプファーさまは精霊と仲がいいの?」
「そうだね、本人にあとで聞くといいよ。
せっかく学校に来てくれたんだしね」
「……はーい」
僕がそう言うと、子どもたちはまた黙り込んだ。
隣の子をつついて、牽制している子もいる。
そうやって暫く黙り込んでいたけど、一人の女の子がついに口を開く。
「せんせい、ケンプファーさまとせんせいはどういうかんけいなの?」
やっぱり、この疑問は避けて通れないか…。
なんて言えばいいか…簡単に言えば…そう。
「ケンプファー筆頭魔導師様はね、僕の弟子…つまり彼が子どもの頃に、僕が勉強を教えてたんだ。
みんなと同じだね。
だからみんなも、頑張れば僕よりずっと魔法が使えるようになれるんだよ。
僕よりもずっと凄い人になれるんだ!
だからしっかりお勉強しましょうね!」
「……はーい!」
…返事までに少し沈黙はあったけど、これでどうにか納得してくれるかな。
まったく、あの子ときたら…
何が楽しくて、僕なんかに執着するんだか。
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