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合間の話
シン執事、決定
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俺とダリル様が結婚した翌月、とある人事が発表された。
なんとダリル様の新しい執事に、うちの執事だったエバンスが引き抜かれたのだ。
今日は初(?)出勤だという事で、俺の所へ挨拶に来てくれた。
まあ、ダリル様の執事は俺の執事でもある…
ただ俺は大体朝から魔術塔へ出勤で、ダリル様とは別行動だ。
だからあまり俺の側にいる事は無いんだけどね。
「久々に古巣へ戻った感想は?エバンス」
「坊ちゃま…ご存じだったんですか?」
「うん、一応ね」
元々エバンスはリブリー陛下が王子様だった時にお仕えしてた執事だったんだ、ってメルバ父さんから聞いた。
親父をキャンディッシュ邸で匿うために、陛下が貸してくれたんだって。
ちなみにセジュールの側役だったフランネルも、同じ様に陛下お抱えの側用人…
うん、まあ執事ったってただの執事じゃないし、側用人ったってただの側用人じゃなくて、いわゆる暗部ってとこに属してる人たちだったらしい。
そんな2人が守ってる家だから、うちはある意味王宮より安全な場所だったって事。
「エバンスは執事としても優秀だからね、って、父さんが」
「そんな事はありません、私は…何度もロンバード坊ちゃまを、危険に晒しました」
エバンスはそう言って俺に頭を下げる。
だけど俺だって、あの頃は何とかエバンスの目を掻い潜ろうと頑張ってたしな…。
「そりゃ学園の中までは付いてこられないしさ。
俺も家出したりとか、やんちゃだったし。
むしろエバンスたちがいたから、あの程度で済んでたんでしょ?
…ありがとう、エバンス」
「坊ちゃま…」
バレンは奴らには殺せないだろうと踏んで俺を殺したい人たちをけしかけてたんじゃないかってグヴェン様が言ってた。
つまり、バレンの計算にはエバンスとフランネルの存在も入っていたんじゃないかと思う。
彼らに止められた殺し屋も悪い連中も、きっと沢山いるんだろうなって、今なら分かる。
それに、エバンスとフランネルは俺を裏切らないでいてくれた。
それだけで充分俺は救われてたんだ。
「今後ともよろしくね、エバンス」
「はい、坊ちゃま…
今度こそ、この命に代えましても」
「うん、ダリル様の事、よろしく」
「…はい」
そうして挨拶が終わるとエバンスは俺の私室を出て行き、入れ替わるようにセジュールがやってきた。
「お兄様、本日のご予定ですが」
「うん、今日も昼食会があるんだよね?」
朝は魔術塔へ出勤する事が多い俺だが、昼食には大体予定が入っている。
「はい、商業ギルド設立にあたり、マッシュ商会とアーロ商会から代表を招いて…」
「そっか、じゃあお土産になるようなものを魔術塔で見繕っておくよ」
「お願い致します」
ちなみにフランネルは現在うちの執事に昇格し、家を切り盛りしてくれている。
最初は2人とも王宮に戻って来るのかなって思ってたんだけど、フランネルはセジュールを守るほうを優先させたみたい。
リリアンナもいるしな。
「フランネル、元気かなぁ」
「元気でしたよ?」
「あっそうか、セジュールは毎日会うんだもんね」
「ええ、お兄様がお戻りになる日を心待ちにしていますよ」
「ははは、そんなわけないない」
むしろ俺がいない分、気楽で良いんじゃない?
バックパッカーになるんだって言い張って、迷惑ばっかかけてたから…。
「っていうか、俺フランネルに嫌われてるからなぁ」
「えっ!?」
「いや、嫌われてるって言うか…
フランネルってセジュール至上主義じゃん。
セジュールが俺に構うたびに怒ってるでしょ」
「……それは、」
フランネルはセジュールが1歳になった時からずっとセジュール専属だから、息子みたいな感覚なんだと思う。
よくある「あんな子と遊んじゃいけません!」の「あんな子」の部分に俺の名前が入ってるんだ。
多分。
「まあ、俺ちょっとやらかしすぎて使用人みんなから嫌われてるからな…」
「そんな、そんな事ないです!」
「はは、そんな事あるある。
ぶっちゃけ家に帰らなくても、こうしてセジュールには会えるし親父にも父さんにも会うし、リリアンナだって何故か時々王宮に来るし、実家に帰らなくても別にどうって事無いから…」
「そんな、たまには家へ帰って来るって…」
「まあ、そりゃたまにはね」
だけどこんな風に家族と毎日のように会えるんだったら、正直実家に帰らなくてもいいというか…
手間を増やすだけだからな。
「だけどさ、セジュール。
使用人の負担を増やすのは、当主のすることじゃないだろ?」
「兄様…」
「じゃあ、魔術塔行ってくる!
どうしても俺じゃなきゃ駄目な書類は午後イチで目を通すから、よろしく!!」
ちょっと悲しいけど仕方ない。
これも悪役令息になろうとしたツケだ。
甘んじて受け入れよう。
なんとダリル様の新しい執事に、うちの執事だったエバンスが引き抜かれたのだ。
今日は初(?)出勤だという事で、俺の所へ挨拶に来てくれた。
まあ、ダリル様の執事は俺の執事でもある…
ただ俺は大体朝から魔術塔へ出勤で、ダリル様とは別行動だ。
だからあまり俺の側にいる事は無いんだけどね。
「久々に古巣へ戻った感想は?エバンス」
「坊ちゃま…ご存じだったんですか?」
「うん、一応ね」
元々エバンスはリブリー陛下が王子様だった時にお仕えしてた執事だったんだ、ってメルバ父さんから聞いた。
親父をキャンディッシュ邸で匿うために、陛下が貸してくれたんだって。
ちなみにセジュールの側役だったフランネルも、同じ様に陛下お抱えの側用人…
うん、まあ執事ったってただの執事じゃないし、側用人ったってただの側用人じゃなくて、いわゆる暗部ってとこに属してる人たちだったらしい。
そんな2人が守ってる家だから、うちはある意味王宮より安全な場所だったって事。
「エバンスは執事としても優秀だからね、って、父さんが」
「そんな事はありません、私は…何度もロンバード坊ちゃまを、危険に晒しました」
エバンスはそう言って俺に頭を下げる。
だけど俺だって、あの頃は何とかエバンスの目を掻い潜ろうと頑張ってたしな…。
「そりゃ学園の中までは付いてこられないしさ。
俺も家出したりとか、やんちゃだったし。
むしろエバンスたちがいたから、あの程度で済んでたんでしょ?
…ありがとう、エバンス」
「坊ちゃま…」
バレンは奴らには殺せないだろうと踏んで俺を殺したい人たちをけしかけてたんじゃないかってグヴェン様が言ってた。
つまり、バレンの計算にはエバンスとフランネルの存在も入っていたんじゃないかと思う。
彼らに止められた殺し屋も悪い連中も、きっと沢山いるんだろうなって、今なら分かる。
それに、エバンスとフランネルは俺を裏切らないでいてくれた。
それだけで充分俺は救われてたんだ。
「今後ともよろしくね、エバンス」
「はい、坊ちゃま…
今度こそ、この命に代えましても」
「うん、ダリル様の事、よろしく」
「…はい」
そうして挨拶が終わるとエバンスは俺の私室を出て行き、入れ替わるようにセジュールがやってきた。
「お兄様、本日のご予定ですが」
「うん、今日も昼食会があるんだよね?」
朝は魔術塔へ出勤する事が多い俺だが、昼食には大体予定が入っている。
「はい、商業ギルド設立にあたり、マッシュ商会とアーロ商会から代表を招いて…」
「そっか、じゃあお土産になるようなものを魔術塔で見繕っておくよ」
「お願い致します」
ちなみにフランネルは現在うちの執事に昇格し、家を切り盛りしてくれている。
最初は2人とも王宮に戻って来るのかなって思ってたんだけど、フランネルはセジュールを守るほうを優先させたみたい。
リリアンナもいるしな。
「フランネル、元気かなぁ」
「元気でしたよ?」
「あっそうか、セジュールは毎日会うんだもんね」
「ええ、お兄様がお戻りになる日を心待ちにしていますよ」
「ははは、そんなわけないない」
むしろ俺がいない分、気楽で良いんじゃない?
バックパッカーになるんだって言い張って、迷惑ばっかかけてたから…。
「っていうか、俺フランネルに嫌われてるからなぁ」
「えっ!?」
「いや、嫌われてるって言うか…
フランネルってセジュール至上主義じゃん。
セジュールが俺に構うたびに怒ってるでしょ」
「……それは、」
フランネルはセジュールが1歳になった時からずっとセジュール専属だから、息子みたいな感覚なんだと思う。
よくある「あんな子と遊んじゃいけません!」の「あんな子」の部分に俺の名前が入ってるんだ。
多分。
「まあ、俺ちょっとやらかしすぎて使用人みんなから嫌われてるからな…」
「そんな、そんな事ないです!」
「はは、そんな事あるある。
ぶっちゃけ家に帰らなくても、こうしてセジュールには会えるし親父にも父さんにも会うし、リリアンナだって何故か時々王宮に来るし、実家に帰らなくても別にどうって事無いから…」
「そんな、たまには家へ帰って来るって…」
「まあ、そりゃたまにはね」
だけどこんな風に家族と毎日のように会えるんだったら、正直実家に帰らなくてもいいというか…
手間を増やすだけだからな。
「だけどさ、セジュール。
使用人の負担を増やすのは、当主のすることじゃないだろ?」
「兄様…」
「じゃあ、魔術塔行ってくる!
どうしても俺じゃなきゃ駄目な書類は午後イチで目を通すから、よろしく!!」
ちょっと悲しいけど仕方ない。
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