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向かえ!大団円

集積回路を読む

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石碑をもっと詳しく調査する為、俺は親父に通信した。

「親父、お早う。
 ちょっと時間欲しいんだけど…」
【ん~何だ?あ、護国バリアの話か】

…「護国バリア」は広域結界用魔力集積回路の略語だ。
俺と親父の間でしか通じない略語。

「そうそう…これってさ、純粋に石碑周辺の土地の魔力を活用してるんだよね?」
【ああ、正確に言うと、石碑周辺半径10mの範囲の土地の魔力を利用してる。
 だからちょっとだけ森の中に入ったとこにあるんだ】

親父の話によると、この魔力集積回路は半径10m以内の土地が持っている魔力を回復量を上回らないレベルで吸い上げて平均化し、安定的に同じ品質の魔力を使えるようにしているらしい。

「これだけの回路を動かすのに、よく半径10mで足りたね」
【うん、それ以上広いと平均化に負荷がかかりすぎるからってのもあってな】
「……平均化に負荷がかかる?」
【うん、そう。魔力の質…土地の魔力って場所場所で変化するじゃん】

うん、それはお手紙作った時の住所特定術の一つとして回路にも組み込んだから分かる…ん?
待てよ、って事は…
 
「なあ親父、その土地に異質な魔力がいきなり現れたら…どうなるん?」
【そりゃ、平均化に負荷がかかるから、回路に使える魔力が減る】
「余計に吸い上げたりはしないん?」
【そんな仕様にしたら、土地の魔力が枯渇するだろ】
「あー、そっか…」

平均化に必要な魔力をガンガン吸い上げる。
すると異質な魔力もガンガン吸っちゃう。
そしたら更に平均化に必要な魔力を…
って、そうやって土地の魔力を極限まで吸いかねない事態になる。

それすなわち、致命的バグ。
ちょっとした異常でいきなり結界が落ちるなんて脆弱なシステム、親父が組むわけない。

【だから、石碑と石碑の中間地点あたり…正確に言えば、中間地点からちょっとだけその「異常がある石碑」側の方で結界が薄くなる部分が出るな】
「そこを魔物に突かれたら?」
【そりゃ簡単に突破される…って、この前のダケット村のやつか!?】
「うん、そう…結構大変だった」
【お前、巻き込まれたのか!?】
「巻き込まれたっていうか、巻き込まれに行ったっていうか…」

すると、通信ブレスレットの向こう側がガタゴトと騒がしくなり、メルバ父さんの声が聞こえ、赤ん坊の泣き声と…

ーエバンス、抱っこ紐持ってこい、あと箒!
ーかしこまりました旦那様
ーかしこまるな、そして早まるなギゼル殿
ーギゼル様落ち着いて
ーそうだよ父さん、僕だって行きたいのに
ーでしたら私がセジュール様を乗せて飛びます!
ーミリエッタ殿!?

……その他色んな人の騒ぐ声が聞こえ、

【今から行く!】
「ちょ、親父、」

しまった、今ちょうど向こうは朝飯…!

【ねえロンバード、そっちでなんとか】
「するよ、するする、だから親父を」
【竜の仕業だったらどうすんだ!】
【えっと、でしたらシドさんに連絡】
【それだけじゃ足りない、ビゼーとドニとベイクと…エバンス!魔法の手紙、有るだけ持って…】

ドタバタとした中で、落ち着いた声が聞こえる。

ー…旦那様、抱っこ紐はこちらに。
ー箒とお手紙の方は玄関へ用意しております

【サンキュー、エバンス!よしよしリリアンナ、パパと一緒にお出掛けしような~】
「親父、落ち着けって!竜の姿はまだ見てもいないんだから」
【出てきてからじゃ遅いんだよ!!】
【ふえええ!】
「ほら、大きい声出すから」
【大丈夫、空飛んでるうちに機嫌は直る!】

わあわあ言ってる声が小さくなる。
と同時にセジュールの声がはっきりしてくる。

【お兄様!絶対に無茶しないでください、僕が何の役に立つか分かりませんけど、とりあえず行きますから!】

…いや、セジュールが来ても…いや、来てくれたら、心強い。
だって問題は石碑の事だけじゃないから…


と、その時、懐かしい声が小さく聞こえた。

ー…ああ…!麗しすぎる兄弟愛ですわ…

「そうだった、ミリエッタさんも来るんだ…!」

ど、どうしよう…
何か大騒ぎの予感…!!


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