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向かえ!大団円
東の石碑、再び
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魔物を見送った場所から馬車を飛ばして2日目の夕方。
俺たちは無事に東端の村に着いた。
「まさか、着くとは…」
「馬に感謝だな」
「それと、風を送ってくれたロンバードにもな」
「あっ、バレてましたか」
出来る限り早く着きたくて、馬本来のトップスピードに近づける為に少し追い風を吹かせたんだ。
この程度なら、それほど魔力を使わなくていいしね。
「…早速東の石碑に…と言いたいところだけど、夕方に森へ近づくのは危険だからな」
「石碑は明日の早朝だ。良いな、ロンバード君」
「うん」
それでも、聞き込みできそうな場所には行きたい。
宿屋には第9騎士団の人がいるかもしれないし…という事で、俺たちは宿屋へ直行することにした。
「じゃあ明日は石碑に行って、病院に行って、村長さんのところへ行って…」
「明日も早く起きねばな、ヨーク君」
「分かってますよ、レドモンドさん」
第9の人がいれば良いな。
それで、あの15人の無事を確認して…。
後は風呂!もう全身ジャリジャリするし!
「早く宿へ行きましょう!」
「ああ、そうしよう」
……ところが宿に着くと、何故か異様な緊張感が漂っていた。
「…何があったんですかね」
「さあ、分からん…悪いことで無ければ良いが」
どきどきしながら、受付で今晩泊まれるか聞く。
勿論でございます!と緊張しきりの支配人さんから鍵を2本受け取る。
「こちらがロンバード様、こちらが残りお二人のお部屋です!」
「あ、有難うございます…?」
「ごゆっくりおくつろいででございます!」
「あ、はい…」
何だろう、変だな…。
部屋割は勝手に決まってるし、何かあったのかな?
「ともかく、部屋へ行きましょうか」
「待て、罠かもしれん。ここは一緒に行動すべきだ、3人でまずはロンバード君の部屋へ行こう」
「そうだな、それがいい」
疑いすぎるのも良くないけど、残党がいる可能性はゼロじゃない。
バレンの組織じゃない転売組織とかが出てきたかもしれないし…
そんな事を考えながら階段を上がり、真ん中の部屋へ。
「ここがロンバードの部屋か…」
「…扉に異常は無さそうです」
「よし、では…突入」
俺はレドモンド君の後ろに隠れる。
レドモンド君がさっと腕を上げ……降ろす。
それを合図にヨークさんが扉を一気に全開する。
そしてレドモンド君が部屋の中をさっ、と……
?
「…ロンバード君、先に」
「へ?」
「いいから、先に行け」
「あ、うん」
…何だろ、急に。
いきなり怖くなったなんて事、レドモンド君に限ってあるわけないし…
まあいいや、先にって言うんなら先に……
!
「おお、意外と早かったな、ロンバード」
「だ、だりる、さ、ま…?」
「そうだ、中央で出来る仕事も一段落したから、東の石碑を視察にな」
「ダリルさまっ!」
俺は思わず駆け出し、ダリル様に飛び付いた。
ダリル様は俺をしっかりと受け止めて抱きしめ、言った。
「本当は会いたかった、一刻も早く」
***
積もる話は東の石碑の事が片付いてから…という事で、レドモンド君とヨークさんは自分たちの部屋へ行った。
俺はダリル様に促されて風呂へ行き、砂埃を落とす。
まずは頭から……うーん。
「永遠に砂出て来るなぁ…」
俺たちが乗ってきた馬車には、速度を出す為に余計なものを付けていない。
屋根も扉も無いのだ。
空気抵抗を無くすための風除けが一枚ついているだけ。
「…もう、諦めよう」
さっさと湯舟に浸かって、身体を温めよう。
夏に出発した旅もすっかり晩秋を迎え、最近すっかり寒くなってきた。
北はもう雪が降ってるかもしれない。
だから一番に北へ向かったわけだしな。
「…この旅も、もうすぐ終わりか」
色んなことがあったなぁ。
地竜との戦い。
火竜との戦い。
その他にも、色んな魔物を倒して…。
ゼルさんが裏切ったり、カンテさんとクレーさんが心を操られたり、実家の備蓄が荒らされたり。
知らなかった話もいっぱいあった。
どこの国の王家にもそれぞれ異能が引き継がれてるとか、バレンとドラーク帝国が繋がってるとか。
「…でも、誰かが待っててくれる旅は、楽しかったな」
最初は、誰も俺の事を知らない場所へ行こうと思った。
時々魔法を披露して、出会った人のお困り事を解決して…そうやって流れ者のヒーローみたいになろうと思った。
だけど、そういう孤独に耐えられるのは…
どこかで誰かが、俺の帰りを待っていてくれるからだと分かった。
「…ダリル様にも、悪い事しちゃったな」
あんなに愛してくれてるのに、結婚しないなんて言っちゃって。
愛を試すような事ばっかしたりして。
それでも見捨てないでいてくれて…
こんな場所まで、会いに来てくれた。
「…けっこん…か」
まだ18歳、という思いと、もう18歳、という思い。
前世で18歳だった時には結婚なんて一つも考えてなかった。
でも、この世界では18歳で結婚するのが普通…
「…早いような、そうでもないような」
はぁ…結婚かぁ…
って、いかんいかん。
全ては東の石碑に異常が無い事が確認できてからだ。
異常があったら正常に戻して、それが先!!
俺たちは無事に東端の村に着いた。
「まさか、着くとは…」
「馬に感謝だな」
「それと、風を送ってくれたロンバードにもな」
「あっ、バレてましたか」
出来る限り早く着きたくて、馬本来のトップスピードに近づける為に少し追い風を吹かせたんだ。
この程度なら、それほど魔力を使わなくていいしね。
「…早速東の石碑に…と言いたいところだけど、夕方に森へ近づくのは危険だからな」
「石碑は明日の早朝だ。良いな、ロンバード君」
「うん」
それでも、聞き込みできそうな場所には行きたい。
宿屋には第9騎士団の人がいるかもしれないし…という事で、俺たちは宿屋へ直行することにした。
「じゃあ明日は石碑に行って、病院に行って、村長さんのところへ行って…」
「明日も早く起きねばな、ヨーク君」
「分かってますよ、レドモンドさん」
第9の人がいれば良いな。
それで、あの15人の無事を確認して…。
後は風呂!もう全身ジャリジャリするし!
「早く宿へ行きましょう!」
「ああ、そうしよう」
……ところが宿に着くと、何故か異様な緊張感が漂っていた。
「…何があったんですかね」
「さあ、分からん…悪いことで無ければ良いが」
どきどきしながら、受付で今晩泊まれるか聞く。
勿論でございます!と緊張しきりの支配人さんから鍵を2本受け取る。
「こちらがロンバード様、こちらが残りお二人のお部屋です!」
「あ、有難うございます…?」
「ごゆっくりおくつろいででございます!」
「あ、はい…」
何だろう、変だな…。
部屋割は勝手に決まってるし、何かあったのかな?
「ともかく、部屋へ行きましょうか」
「待て、罠かもしれん。ここは一緒に行動すべきだ、3人でまずはロンバード君の部屋へ行こう」
「そうだな、それがいい」
疑いすぎるのも良くないけど、残党がいる可能性はゼロじゃない。
バレンの組織じゃない転売組織とかが出てきたかもしれないし…
そんな事を考えながら階段を上がり、真ん中の部屋へ。
「ここがロンバードの部屋か…」
「…扉に異常は無さそうです」
「よし、では…突入」
俺はレドモンド君の後ろに隠れる。
レドモンド君がさっと腕を上げ……降ろす。
それを合図にヨークさんが扉を一気に全開する。
そしてレドモンド君が部屋の中をさっ、と……
?
「…ロンバード君、先に」
「へ?」
「いいから、先に行け」
「あ、うん」
…何だろ、急に。
いきなり怖くなったなんて事、レドモンド君に限ってあるわけないし…
まあいいや、先にって言うんなら先に……
!
「おお、意外と早かったな、ロンバード」
「だ、だりる、さ、ま…?」
「そうだ、中央で出来る仕事も一段落したから、東の石碑を視察にな」
「ダリルさまっ!」
俺は思わず駆け出し、ダリル様に飛び付いた。
ダリル様は俺をしっかりと受け止めて抱きしめ、言った。
「本当は会いたかった、一刻も早く」
***
積もる話は東の石碑の事が片付いてから…という事で、レドモンド君とヨークさんは自分たちの部屋へ行った。
俺はダリル様に促されて風呂へ行き、砂埃を落とす。
まずは頭から……うーん。
「永遠に砂出て来るなぁ…」
俺たちが乗ってきた馬車には、速度を出す為に余計なものを付けていない。
屋根も扉も無いのだ。
空気抵抗を無くすための風除けが一枚ついているだけ。
「…もう、諦めよう」
さっさと湯舟に浸かって、身体を温めよう。
夏に出発した旅もすっかり晩秋を迎え、最近すっかり寒くなってきた。
北はもう雪が降ってるかもしれない。
だから一番に北へ向かったわけだしな。
「…この旅も、もうすぐ終わりか」
色んなことがあったなぁ。
地竜との戦い。
火竜との戦い。
その他にも、色んな魔物を倒して…。
ゼルさんが裏切ったり、カンテさんとクレーさんが心を操られたり、実家の備蓄が荒らされたり。
知らなかった話もいっぱいあった。
どこの国の王家にもそれぞれ異能が引き継がれてるとか、バレンとドラーク帝国が繋がってるとか。
「…でも、誰かが待っててくれる旅は、楽しかったな」
最初は、誰も俺の事を知らない場所へ行こうと思った。
時々魔法を披露して、出会った人のお困り事を解決して…そうやって流れ者のヒーローみたいになろうと思った。
だけど、そういう孤独に耐えられるのは…
どこかで誰かが、俺の帰りを待っていてくれるからだと分かった。
「…ダリル様にも、悪い事しちゃったな」
あんなに愛してくれてるのに、結婚しないなんて言っちゃって。
愛を試すような事ばっかしたりして。
それでも見捨てないでいてくれて…
こんな場所まで、会いに来てくれた。
「…けっこん…か」
まだ18歳、という思いと、もう18歳、という思い。
前世で18歳だった時には結婚なんて一つも考えてなかった。
でも、この世界では18歳で結婚するのが普通…
「…早いような、そうでもないような」
はぁ…結婚かぁ…
って、いかんいかん。
全ては東の石碑に異常が無い事が確認できてからだ。
異常があったら正常に戻して、それが先!!
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