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向かえ!大団円

発見、異常事態

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俺とヨークさんは東へ向かって飛び続けた。

もうそろそろ東の石碑と南の石碑の中間地点、というところで数人の騎士が固まっているのを発見。
目を凝らして見ると、どうやら怪我人が多数…第9騎士団だ!

「…ヨークさん!あそこ!」
「おう!降りるぞ!」

慌てて彼らの元へ行く。

「何があったんですか!?」
「ぅ…」
「すぐ治癒します!」

肩から腕を引きちぎられた人、
脚がもがれた人、
腹が裂けて腸が出ている人、
ぴくりとも動かない人…
でも、まだ息はある!

俺はポケットから飴玉を出し、意識のある人の口に含ませる。
意識の無い人には片っ端から治癒…!

「戻れ、戻れ、再生せよ…!」
「死ぬな、生きろ、戻って来い…!」

ヨークさんも一緒になって必死で治癒をする。
死なないで、どうか…!

「ろ…ん、ばー…」
「無理しないで、自分の身体が元に戻るように、祈って!」
「は…い…」

死ぬな、死なないで…!

「傷、塞がれ、外も、内も…!」
「ロンバード、飴はまだあるか!?」
「はい!」

何があったのか、今はそれどころじゃない。

「他に怪我してる奴は!?」
「う…」
「森の中にいるんだな!?ロンバード!」
「はい、すぐ行きます!」

今、息をしてるのなら、絶対に死なせない…!


***


森の中で倒れていた人も含め、何とか全員の怪我を塞ぎ、命に別状のない所まで治癒し、隠れられそうな場所へ騎士を集める。

「…、これで、15…おい、15で合ってるか」
「はい、15、です」

何とか喋れそうな人を見つけて、事情を聞く。

「…で、何があったんだ」
「大量の、魔物が、いきなり…」
「小型、中型と…、後から、狼の、群れ…」
「戦っているうちに、いつの間にか、ここへ…」

第9騎士団は基本3人で1つの班を作って行動している。
15人いるって事は、5つの班がここへ集められたって事だ。
賢い魔物がいるのか、それとも…
この地点の結界が、薄くなっているのか。

「結界の中へ、逃げ込もうと…そうすれば少しは、楽かと、徐々に後退し、それで、何とか…ここまで」
「魔物は、結界の中へは入っていないのか」
「そ、れが…」
「入ったのか!?」
「大きな、影が…、でも、もう、動く事も、出来ず…」
「そうか、分かった」

ヨークさんはそう言うと、箒バイクに積んでいた鞄から魔法のお手紙を取り出し、さらさらと書いて、空に放った。

「じきに親父んとこの領軍が迎えに来る。
 それまで何とかここで耐えてくれ」

そう言って、15人にまとめて目隠しの魔法をかけ…

「行くぞ、ロンバード!」
「はい!」

俺はヨークさんと一緒に、影が行ったという方向へ飛んだ。

「グリフォンですかね!?」
「わからん!もっとヤバい奴かもしれん!」
「まさか…竜ですか!?」
「分からん、だが最悪を想定して動くのは魔物討伐の常道だからな!」

空を飛びながらの会話だから、声は自然と大きくなる。

「ヨークさん、あとどのくらい、魔法いけそうですか!?」
「ああ、それな!俺も髪の毛紐、持ってるから!」
「そうですか、良かった!」

俺はさっき貰った自分の髪の毛紐を見てみた。
ちらほらと白くなってるけど、まだ行けそう…

「一昨日!親父と、グラノールおじさんにな!
 会ってきたんだ!そんで、念の為に、領軍!
 あと、王都からの応援!
 いつでも動けるようにしてるから!大丈夫!」
「すごい!いつの間に!!」

って、そっか!俺が病院に訪問してる間にしてた用事ってそれだったのか!

「ヨークさん、王都から応援、って!?」
「グリフォン倒した事ある奴と、東の竜を倒した事ある人!」
「それなら安心ですね!」

竜を倒せる人ならグリフォンだって倒せるし、グリフォンを倒せる人なら他の魔物だって倒せる!

「だからって安心すんなよ!飛ばすぞ!」
「はい!!」

俺はヨークさんの腰にぎゅっと捕まる。
ヨークさんは小さい声で何事かを言って…

思いっきり速度を、上げた。

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