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向かえ!大団円

応急処置

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今日の南の森は静かだった。

「…魔物、倒しすぎてるかも知れないな」
「倒し過ぎたらどうなるんですか?」
「…分からん、倒しすぎた事が無いからな」

どうしよう、もし倒し過ぎで何か起きたら…
もう倒した魔物の種類も数も数えてないし。

「…何も無ければ、良いんですけどね」
「ま、取り尽くしたわけじゃなさそうだから…
 元々増える時期でもあるしな」
「とはいえ、祈るしかありませんな」

うう、スミスさんの言うとおりだ。
調子に乗ってやりすぎたかも…
仕方ない、何かあったら俺が何とかしよう。

「ロンバード様、今は石碑の事に集中しましょう」
「そうだな、まずはそれからだ」
「はい」

荷馬車から資材を降ろし、杭に使う丸太の太さを見ながらどこへどの杭を立てるかを考える。

「よし…こんな感じかな。じゃあ丸太を…この配置を崩さないようにで」
「かしこまりました」
「りょ~かいした」

スミスさんが器用に斧を使って丸太を削り、先を尖らせていく。
一方ヨークさんは魔法で丸太を削る。
俺とブレックさんは回路版に被らない様に石に布を巻いていく。
それが終わったら、杭を立てる場所に軽く下穴をあける。

「削り終わったのから立てていって良いか?」
「はい、お願いします」

そうして一本一本、杭を打ち込んでいく。
杭を打って終わったら、その隙間に藁を詰めつつロープで締めていく…

「……よし」
「後はちゃんと機能するかどうかだな」
「ええ、確認しますね」

俺は魔力集積回路版に触れて、ほんの少しだけ魔力を流し…

「…!?」
「どうした、ロンバード」
「……東で、何か起きてるかもしれない」
「東ですと!?」

左側の結界が、微妙に甘くなってる気がする。
確かあっちは蔦で固定してきた…

処置が、甘かったのかもしれない。

「俺、見に行ってきます!」
「ああ、俺も後で追いかける!
 スミス、ブレック、27の皆に伝言頼む!
 出来れば魔術師ギルドへもな!」
「分かりました!!」

そうだ、何で忘れてたんだろ。
昨日グリフォンが1羽、東の空へ飛んだのを…!!

***

結界の境界線上に沿って東へと飛ぶ。
途中騎士を見つけては声をかけ、地上に異常が無いか聞いて回る。

「今のところ、異常は無し…」

東の石碑に異常があったとしたら、被害は北にも及ぶ可能性がある。
昨日みたいに沢山の鳥の魔物が集まって襲ってきたら、国境沿いだけで済む話じゃなくなる。

「東の石碑に何かあったら、連絡が来るはず…」

最悪のパターンを想像する。

東端の村がバレン一味に乗っ取られ、石碑が倒され、東の竜が魔物の群れを引き連れてやってきて…
東の端から、魔物の侵攻が始まるパターン。

東の森は、竜のおかげで大型魔物が少ない。
だから第9騎士団がやってきた。
彼らが竜に襲われたら…

いや、その前に、彼らがバレンに操られていたとしたら。

「第9騎士団は…優しい人が多いからな」

急いで、でも異常は見落とさない様に。
東へ、東へ…

「おーい!ロンバード!!」
「ヨークさん!」
「疲れただろ、箒、乗ってけ!」
「ありがとうございます!」

西からやってきたヨークさんの後ろへ回り、しがみつくようにして無理矢理二人乗りする。
ヨークさんが

「これ、借りてきた!持っとけ!」
「え…これって!?」
「お前の髪の毛紐!
 自分の魔力の方が扱いやすいだろうって、グヴェン様が!」
「グヴェン様が!?」
「あと、ダリル殿下から、手紙!」
「ダリル様から!?」

どうやらヨークさんはあの短時間で転移魔法陣をセットして、魔術塔に連絡を入れたらしい。

確かに、物の転移はもう回路さえあればどこへでも出来るって言ってたな。

ただ、設置する場所が問題だ。
誰かに悪用されても困るし、誰かが乗ってしまっても困る。
送る時に魔力が必要だとしてもだ。

「どこへ設置したんですか!?」
「ああ、一番安全そうなところへな!」

安全そうな所…
まあ、ヨークさんに任せておけば大丈夫か。

「急ぎましょう、東へ!」
「ああ!」

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