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向かえ!大団円
【護衛三人衆】森の中の異常
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★【森の中で、ヨーク】
グリフォンを打ち落としてとどめを刺し、俺と騎士3人は別の隊と合流する為に森の中を走った。
途中何匹か魔物を見たが、こちらに襲い掛かる様子も無かったので放置…
というか、間引き討伐というのは基本襲ってくる魔物以外は狩らない、という規則がある。
だから森の中をいくつかの隊に分かれて探索し、襲い掛かられるのを待つ、というのが通常の任務なのだ。
「ヨーク殿、先程の卵泥棒、どう見ます」
「取引禁止の卵を盗みに来るという事は、転売組織か、それに唆されたか、どっちかだろ」
南東の農場が黒幕とやらに乗っ取られた、と聞いた。
そいつが囚人にグリフォンの卵を盗って来いと唆したのなら、まだ何人かああいうのがいても不思議じゃない。
「その転売組織とやらは、密猟者まで手懐けているのですか?」
「ああ、なんせ何でも売る連中だからな。
他の魔物にまで手を出してなきゃ良いが…」
間引き討伐には他にもいくつか規則がある。
その中の重要事項の一つが「卵・幼獣・幼体を狩らない事」だ。
理由は簡単。
親の魔物が怒って手が付けられなくなるからだ。
それから、巣の破壊もご法度。
やっぱり魔物が怒るからだ。
魔物を怒らせると怖い。
どう攻撃してくるか読めなくなる。
そして何より、強い魔物の怒りは弱い魔物に伝播する…
「…ヨーク殿!あれを!」
「何、あっ…!」
一人の騎士が指差した先…
そこには頭と手足の無い火竜の幼体があった。
「…っ、グリフォンだけじゃ無かったのか」
「この分じゃ、火竜も…」
「この討伐でも何体か狩ったんだろ、そいつの子ども…って事は…」
「いえ、討伐したのは、もっと西の方で…」
「西?南の方じゃなくてか」
「そうです」
って事は、西の方から入って東の方へ抜ける予定だったって事、つまり…
「南の森の東、つまり南東の農場の近くから、奴らは森に入った…」
「ってことは黒幕というのの仕業ですか?」
「だとすれば、奴らは森の西側へ向かってる…」
「ですが、ここまで誰の気配もありませんでしたよ?」
索敵の能力があるという騎士が言う。
彼が言うに、範囲はそれほど広くないそうだが、騎士団員とそれ以外の人間と魔物の3つを判別することができるのだそうだ。
「なら西じゃなくて、結界の方へ向かったとしたら…」
結界の事を良く知らない奴なら、魔物に追われたらまず結界の中へ逃げ込もうとするはず…
散々言い聞かされている結界境界線近辺の村の人間ならいざ知らず、大多数の民間人は「結界は完璧に魔物を防ぐもの」だと思っているからな。
まあ、いつもは完璧に防いでいるから、そう思うのは仕方が無いっていうね。
普段なら小型・中型の魔物は寄り付きもしないし、大型の魔物だってわざわざ寄って来ない。
そもそも魔物っていうのは、そういうもんなんだ。
人間を食べなきゃ生きていけないとか、人間を襲いたくて仕方ない魔物なんかいないんだよな…
異様に増えたり、怒らせたりしない限りは。
「…急いで境界線側へ行くぞ」
「分かりました」
嫌な予感がする。
結界を越えて、人の住む領域へ魔物が入り込んだら…!
俺と騎士たちは走った。
結界の境界線に行き着く間に、全く魔物に出会わない事に不安を抱きながら…。
★【石碑にて、スミス】
「また置いていかれてしまいましたな」
「仕方がありません、我々では大型魔物が出てきても足を引っ張るだけです」
森の中での戦闘経験が少ない我々は、ここで待機…
いや、ただの待機ではない。
ヨーク殿によると、南東の農場で大きな動きがあったとの事。
実は、あの南東の農場があるのはルーシャ領とグラノール領の境目。
元第27騎士団所属の、英雄と呼ばれた人たちが治める領に挟まれているのだ。
であるから、英雄たちに育てられたヨーク殿が頼めばどちらからでもすぐに連絡が届くようになっている。
「ヨーク殿にまでここにいろと言われては、仕方がありませんな」
「我々魔物とは戦い慣れていませんしね」
どうやら、諜報機関に知り合いの多いブレック殿にも独自の情報網で何か入ってきている模様。
「スミス殿がいれば私も肩身が狭く無くて済みますし」
「いざとなったら石碑が割れない様に押さえる係でもするとしましょう」
「そうですね」
その2人が「ここに居る」事を頼むからには、私はここに居た方が良いという事だ。
私の索敵は少々特殊で、犯罪歴のある人間には特に敏感に働く。
第3騎士団にいたおかげだろう…
それを知って私をここに置いたのであれば、答えは一つ。
この石碑を狙う人間がここへ来るかもしれない、という事だ。
「火竜が出て来ねば良いのですがなぁ」
「厳密には竜でないと言われても、我々からしてみれば竜と同じですしね」
北で遭遇した地竜というのは恐ろしかった。
とにもかくにも大きいとい、…
「…賊が、来ますぞ」
「あとどのくらいで」
「この速度ですと、あと10秒程でそこの茂みから出てきますな」
「10秒であれば、結界外で動いても問題ないですね」
「そうですな」
そう言いながら私とブレック殿は結界の外側で警戒している騎士たちの横をすり抜け、3人程の賊を制圧し…
「!!」
あれは…!
「ブレック殿、急ぎ下がりましょう!
魔物が来ます、早く!!」
「はい!!」
我々は彼らを連行する事叶わず、賊共の断末魔を聞きながら慌てて石碑の元へ戻り、回路版の裏へと回り込む事になった。
森の奥から出てきたのは大量の魔物…
「我々は石碑を保持します!
申し訳ないが、討伐頼みます!」
「「了解!」」
我々と共に石碑の守をしていた数人の騎士はすでに剣を抜き、臨戦態勢に。
私はブレック殿と共に、これ以上ひびが入らぬ様にと石碑にしがみつく。
「頼む、結界、村を守ってくれ…!」
「こんな大変な事になるとは…!」
北の森で出した辞表が受理されていれば、こんな目に合う事も無かっただろうに…
くそっ!!
=========
2024/09/21
尻切れトンボな部分など修正しました。
グリフォンを打ち落としてとどめを刺し、俺と騎士3人は別の隊と合流する為に森の中を走った。
途中何匹か魔物を見たが、こちらに襲い掛かる様子も無かったので放置…
というか、間引き討伐というのは基本襲ってくる魔物以外は狩らない、という規則がある。
だから森の中をいくつかの隊に分かれて探索し、襲い掛かられるのを待つ、というのが通常の任務なのだ。
「ヨーク殿、先程の卵泥棒、どう見ます」
「取引禁止の卵を盗みに来るという事は、転売組織か、それに唆されたか、どっちかだろ」
南東の農場が黒幕とやらに乗っ取られた、と聞いた。
そいつが囚人にグリフォンの卵を盗って来いと唆したのなら、まだ何人かああいうのがいても不思議じゃない。
「その転売組織とやらは、密猟者まで手懐けているのですか?」
「ああ、なんせ何でも売る連中だからな。
他の魔物にまで手を出してなきゃ良いが…」
間引き討伐には他にもいくつか規則がある。
その中の重要事項の一つが「卵・幼獣・幼体を狩らない事」だ。
理由は簡単。
親の魔物が怒って手が付けられなくなるからだ。
それから、巣の破壊もご法度。
やっぱり魔物が怒るからだ。
魔物を怒らせると怖い。
どう攻撃してくるか読めなくなる。
そして何より、強い魔物の怒りは弱い魔物に伝播する…
「…ヨーク殿!あれを!」
「何、あっ…!」
一人の騎士が指差した先…
そこには頭と手足の無い火竜の幼体があった。
「…っ、グリフォンだけじゃ無かったのか」
「この分じゃ、火竜も…」
「この討伐でも何体か狩ったんだろ、そいつの子ども…って事は…」
「いえ、討伐したのは、もっと西の方で…」
「西?南の方じゃなくてか」
「そうです」
って事は、西の方から入って東の方へ抜ける予定だったって事、つまり…
「南の森の東、つまり南東の農場の近くから、奴らは森に入った…」
「ってことは黒幕というのの仕業ですか?」
「だとすれば、奴らは森の西側へ向かってる…」
「ですが、ここまで誰の気配もありませんでしたよ?」
索敵の能力があるという騎士が言う。
彼が言うに、範囲はそれほど広くないそうだが、騎士団員とそれ以外の人間と魔物の3つを判別することができるのだそうだ。
「なら西じゃなくて、結界の方へ向かったとしたら…」
結界の事を良く知らない奴なら、魔物に追われたらまず結界の中へ逃げ込もうとするはず…
散々言い聞かされている結界境界線近辺の村の人間ならいざ知らず、大多数の民間人は「結界は完璧に魔物を防ぐもの」だと思っているからな。
まあ、いつもは完璧に防いでいるから、そう思うのは仕方が無いっていうね。
普段なら小型・中型の魔物は寄り付きもしないし、大型の魔物だってわざわざ寄って来ない。
そもそも魔物っていうのは、そういうもんなんだ。
人間を食べなきゃ生きていけないとか、人間を襲いたくて仕方ない魔物なんかいないんだよな…
異様に増えたり、怒らせたりしない限りは。
「…急いで境界線側へ行くぞ」
「分かりました」
嫌な予感がする。
結界を越えて、人の住む領域へ魔物が入り込んだら…!
俺と騎士たちは走った。
結界の境界線に行き着く間に、全く魔物に出会わない事に不安を抱きながら…。
★【石碑にて、スミス】
「また置いていかれてしまいましたな」
「仕方がありません、我々では大型魔物が出てきても足を引っ張るだけです」
森の中での戦闘経験が少ない我々は、ここで待機…
いや、ただの待機ではない。
ヨーク殿によると、南東の農場で大きな動きがあったとの事。
実は、あの南東の農場があるのはルーシャ領とグラノール領の境目。
元第27騎士団所属の、英雄と呼ばれた人たちが治める領に挟まれているのだ。
であるから、英雄たちに育てられたヨーク殿が頼めばどちらからでもすぐに連絡が届くようになっている。
「ヨーク殿にまでここにいろと言われては、仕方がありませんな」
「我々魔物とは戦い慣れていませんしね」
どうやら、諜報機関に知り合いの多いブレック殿にも独自の情報網で何か入ってきている模様。
「スミス殿がいれば私も肩身が狭く無くて済みますし」
「いざとなったら石碑が割れない様に押さえる係でもするとしましょう」
「そうですね」
その2人が「ここに居る」事を頼むからには、私はここに居た方が良いという事だ。
私の索敵は少々特殊で、犯罪歴のある人間には特に敏感に働く。
第3騎士団にいたおかげだろう…
それを知って私をここに置いたのであれば、答えは一つ。
この石碑を狙う人間がここへ来るかもしれない、という事だ。
「火竜が出て来ねば良いのですがなぁ」
「厳密には竜でないと言われても、我々からしてみれば竜と同じですしね」
北で遭遇した地竜というのは恐ろしかった。
とにもかくにも大きいとい、…
「…賊が、来ますぞ」
「あとどのくらいで」
「この速度ですと、あと10秒程でそこの茂みから出てきますな」
「10秒であれば、結界外で動いても問題ないですね」
「そうですな」
そう言いながら私とブレック殿は結界の外側で警戒している騎士たちの横をすり抜け、3人程の賊を制圧し…
「!!」
あれは…!
「ブレック殿、急ぎ下がりましょう!
魔物が来ます、早く!!」
「はい!!」
我々は彼らを連行する事叶わず、賊共の断末魔を聞きながら慌てて石碑の元へ戻り、回路版の裏へと回り込む事になった。
森の奥から出てきたのは大量の魔物…
「我々は石碑を保持します!
申し訳ないが、討伐頼みます!」
「「了解!」」
我々と共に石碑の守をしていた数人の騎士はすでに剣を抜き、臨戦態勢に。
私はブレック殿と共に、これ以上ひびが入らぬ様にと石碑にしがみつく。
「頼む、結界、村を守ってくれ…!」
「こんな大変な事になるとは…!」
北の森で出した辞表が受理されていれば、こんな目に合う事も無かっただろうに…
くそっ!!
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2024/09/21
尻切れトンボな部分など修正しました。
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