【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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向かえ!大団円

南の石碑

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病院の次は広域結界魔力集積回路…つまり石碑のチェックだ。

村長さんによると、南の石碑は定期討伐に来ていた第27騎士団がそのまま警備にあたっているらしい。

「行けば会えますかね?」
「ええ、時々差し入れに行くのですが、石碑の所にはいつも何人かおられますよ」
「だったら安心ですね!」

護衛3人衆のうちヨークさんは魔物専門だけどブレックさんは完全に対人だし、スミスさんもその昔第9にいたとき小~中型魔物討伐の経験があるだけで、後は対人と書類…
うん、あの怨みつらみは凄かった。

「ヨーク殿もいるとはいえ、やはり3人では少なすぎますしね」
「南にも竜らしきものが出ると聞きますしな」
「ああ、火竜な!あれは面倒な魔物だぜ…」

ということで、今回も4人で石碑の元へ。
俺はちょっと気になっている事をヨークさんに聞いてみた。

「そう言えば、火竜って正確には竜じゃないんですよね?何でですか?」
「ああ、あれはな…倒し損の竜って言ってな」

ヨークさんによると、火竜からは竜玉が取れないから正式には竜と認められないのだそうだ。

「見た目は竜みたいだし、火も吐くし、習性も竜と似てるんだがな…。
 東の竜と比べても小ぶりで空も飛ばないし、だから竜のなり損ないとか言われたりするんだよ」

実際、火竜というのは通称で、本当は炎赤蜥蜴ホムラアカトカゲという名前らしい。

「あれを倒して竜殺しを名乗ってるやつが結構いるもんで、今更竜じゃないって言えないんだろうな」
「それもまた面倒な事ですね」
「だろ?もう一つ面倒なのは、割と数がいるらしくてよく出てくるってことだな」

うーん、色々な意味で面倒な生き物なんだな…。

「そういえばこの前行った時は見なかったですけど、東の竜は大きいんですか?」
「ああ、ロンバードが倒した地竜より少しな。
 大増殖の時以来討伐された話を聞かないから、元々数が少ないんじゃないかって」
「へえ…」

なるほど、それで会わなかったのか。
希少種じゃ見つけるのも大変だろうしな。

「他に南端の森に住んでるので有名なのは、グリフォン、オーガ、デビルグリーズ…まあ色々だな。
 竜がいないから単独行動する大型魔物の種類が多いんじゃないかって、まあギゼル兄ちゃんの受け売りだけど」
「親父どこにでも出てくるなぁ」

やっぱ偉大なんだよな親父…
前世でも勤めてた会社が大きくなったりしてたし。
あっちでもこっちでもチートなんだよな。

「俺は、親父の顔に泥を塗らないので精一杯だ」

越えようなんてどだい無理な話だ。
地竜一匹殺すのにも、あんなに…つらいのに。

***

石碑の所へ行ってみると、そこには数人の騎士さんが俺たちを待っていた。

「ロンバード様、ルーシャ軍曹殿!お待ちしておりました!」
「すみませんお待たせして!石碑はどうですか」
「はっ、かなりの損傷が見られます!」
「えっ!?」

俺は石碑に駆け寄った。
見ると、明らかに亀裂が…しかも、縦に。

「ですが、結界の方は問題なく機能しておるようです」
「…一体いつから、こんな亀裂が…」
「定期討伐中に石碑の確認を命じられまして、我々が到達した時にはすでにこの状態でありました」
「到着したのはいつです」
「2ヶ月程前です」

俺が北端に着いたのがおよそ2か月前。
石碑の異常に気付いて、親父に連絡して、西の石碑にも異常があった事に気付いたのも2ヶ月前。
同時に王都へ連絡が行って、偶然東端にいた第27騎士団に命令が出て、そこからここまでそれほど移動に日数は掛かっていないはずだから…

「…という事は、一斉にやられたのか…?」
「でもそうなると「学生さん」は何であそこに…?」

4つが同時にやられたとすれば、何であのタイミングで東の石碑のところに「学生さん」が居たのか…。
あの学生さんが石碑を壊したとすれば、俺が北から東まで移動するまでの間あそこにいる理由が無い。

「…もしかして、竜を探してたんじゃないか?」
「ああ…そうかもしれませんな」
「やはり希少性が高いという事ですね」
「それで、竜を見つける前に他の魔物にやられた…って事か…」

石碑はいつでも倒れるようにできた。
だけど、石碑を倒したのが人間だと分かるとまずい。
あの石碑にとどめを刺す役に選ばれたのは、竜…

「なんてことするんだ…」

俺は地竜の事を思い出し、やり場のない怒りを覚えた。
南でその役を押し付けられた魔物が何であれ、その魔物の分まで奴らに思い知らせてやりたい…

俺はきっともう第27騎士団に倒されているだろうその魔物の事を知りたくて、騎士の一人に聞いた。

「…どんな魔物が出ましたか?」
「そうですね、オーガに火竜、デビルグリーズ…
 他にも『魔法のお手紙』にて報告を」
「えっ、お手紙を送ってるんですか?」
「は、週に一度は、必ず」

そんな馬鹿な。
だったら王宮から俺たちの誰かに連絡が来るはずだ。
少なくとも親父とは通信用ブレスレットで連絡が付く。
それにあの時はグヴェン様もいた…

「おかしい…」

俺に連絡できなくても、グヴェン様には連絡できたはずだ。
俺よりずっと強い、グヴェン様には…。

「報告が、届いていない?」

途中雨に濡れて落ちたとか?
いや、何度もそんな事が起きるとは思えない。
という事は、お手紙の送り先で連絡が止められてる…?

「スミスさん、転売組織は王宮にも協力者を作ってるって…」
「ええ、そやつらの所為かもしれませんな」
「そういやゼルの件、魔術塔でも魔術師が入れ替わったのに気が付かなかったよな…」
「って事は、魔術塔にも協力者がいる?」

…なんてことだ。
奴らの魔の手がそんなところまで…っ!

「まさか、ダリル様…!」

俺は不安に駆られて、通信ブレスレットの珠に触れた…

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